2017
05.16

【再々掲載】 デニーズ

5月14日は「母の日」だった。
今日は、そんな「母の日」を思いながら書いたストーリーの再掲載。
デニーズのオムライスと、それを食べながら思いついたストーリー。
台湾見聞録の途中だけど、ちょっとコーヒーブレイク……。


*****************************************


ファミリーレストランレボリューション

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「デニーズのオムライスって、すっごく美味しいから」
洋食好きの方に教えてもらった。

デニーズ?

Out of 眼中だっただけに、一瞬戸惑ったものの、串カツで人を信用することを叩き込まれた頭と体は、躊躇することなく素直に従う。

行きましたよ、デニーズ。オムライス目的で。

「いらっしゃいませ!デニーズへようこそ」
聞きなれた明るい挨拶が出迎えてくれた。
いや~、さわやかだよね。

禁煙席に通され、メニューを拝見。

おー、あったあった、オムライス。
その名も、とろ~り卵とチーズのオムライス。価格は880円。
写真の卵とチーズの塩梅がとても美味しそう……。

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以前、ラケルに行ったときに、もしチェーン店のオムライスが洋食屋や喫茶店の上を行っていたらどうしようという一抹の不安を抱いたけれど、この日も同じ、いや、それ以上の不安を抱いた。

もし、ファミリーレストランのオムライスが一番美味しかったら……。

「おまたせいたしました」
まあ、それならそれで、なんてことを思っているうちに笑顔と一緒にオムライスが到着!

わー、美味しそう!!

名前の通り、見た目も、とろ~りがあふれている!

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ほんと、きれいにできあがっている。
さてさて、味はどうだろう……。

えーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!

美味しいんですけどーーーーーーーーー!!!!!!!

チーズがいい感じで入っていてモチモチ。
チキンライスには、食べ応えのある鶏がしっかりと入っている。
ご飯の味付けもよいよい。

ソースも、ほら、ちょっと「さらっ」というより「どろん」とした感じ。
わかりますか?

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で、なんというか、デミに照り焼きソースの甘さみたいなものが混ざっている。
これが美味しい。


卵は、乗っている部分はわりとしっかり焼いている感があり、下の方はたまごかけご飯のような味わい。

いいじゃん。。

どうすんの、これ……。

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いやあ、ファミレスおそるべし。

企業が競争を勝ち抜くべ、食材選定から配送から味つけ、接客まで一連をとことん追求する。
その結果、ちょっと前までの常識が変わりつつあるのでは???

ファミレスや冷凍食品なんかはその典型だと思う。

何が本物の味だとか偽物の味だとか、そういうのは変化していくのかもしれない。

「デニーズのオムライスって、すっごく美味しいから」
その一言をいただいて食したのだけれど、うん、確かに洋食好きの心をつかむのはわかるような気がする。

チキンライスが好きです。
照り焼きソースが好きです。
卵かけご飯が好きです。

そんな味覚の人気のポイントを、しっかりとおさえてオムライスに反映させていると思う。


今回はデニーズなので、お店情報はありません。
みなさんの身近にありますから。

デニーズ、侮りがたし。恐るべし。

機会がありましたら、ぜひ一度デニーズのオムライスを食べてみてください。

※よっちママさんに頂いたコメントで、北海道にはデニーズがないことを初めて知りました。そうなんですね……。残念!



一輪の真心

「いらっしゃいませ!デニーズへようこそ」
 ドアを開けた武井健一を、弾ける笑顔が出迎えた。
 自然と笑みがこぼれる。健一は指を2本立て、"ふたり"と合図を送った。

 会社からたっぷり2時間半はかかる地方都市にある和菓子店との商談。
 早めに現地に行って15時からの商談に備えよう。そんな考えで、昼食がてら和菓子店がある商店街のデニーズに飛び込んだ。

 笑顔の案内に従い、入社2年目の神山真吾とともに窓際の席につく。
 昼のピーク時間を過ぎたせいか、比較的すいている店内にはゆったりとした空気が漂っている。

「すみませんが、先にちょっとトイレに行ってきます」
 真吾の言葉に、遠慮するなと頷きパソコンを取り出す。

 デニーズへようこそ、か……。
 さて、どうやってお店の特徴を出そう……。
 和菓子のネット販売。他との差別化を図るために何か訴えるものがほしい。
 送料無料? 翌日配送?
 いや、どれもありきたりだ。画龍点睛を欠く。どうしたものか……。

「すみません、おまたせしました」
 ぺこりとお辞儀をすると、トイレから戻った真吾は静かに椅子を引いて健一の向かいに腰かけた。

「早く食べたいだろ」
「はい、もう、お腹がすいちゃって……」
「ここはおごるから、好きなものを頼め」
 そう言いながらメニューをめくる健一。その目に、”オムライス”の5文字が微笑みかける。
「どうしたんですか?」
 思わず「あっ」と漏れた声に、真吾が反応した。
「いやあ、あるんだな、デニーズにも。オムライスが」
「あ、知ってますよ。武井さんがオムライスに目がないって。今度美味しい店に連れてってくださいよ」
 真吾もメニューのオムライスのページを開き、それに見入った。
「美味しそうだなあ……。ボクもオムライスにしようかなあ……」
「別に合わせなくてもいいぞ」
「いや、そういうわけではなくてですねえ……」
 真吾の目を見やる。どことなく遠い目が、5月の午後に揺れている。

「もう何年も食べてないんですけどね……」
「じゃあ、呼ぶよ」
「あ、はい、お願いします」
 健一はテーブルの呼び鈴を押した。

「子供の頃、母親がよく作ってくれたんです。オムライス」
 頬杖をつきながら、真吾はぼんやりと天井に目を向けた。
「それがすごく美味しくて。大好きで。大体は休みの日の昼飯だったんですけどね」

「そう言えば君のおかあさんは……」

「はい。女手ひとつでボクを育ててくれまして。大学まで出してくれて。きっと、神様が休めって言ってくれていたんだと、今はそう思うようにしています」

 それからしばらく、沈黙の時間が続いた。

 注文を終え、やがて出来たてのふわふわオムライスがふたつ、ふたりのもとに運ばれてきた。

「いやー、本当に美味しそうですね!武井さんがオムライスにはまるのもわかる気がします!」
「そうか」
「うん、美味しい!チーズとタマゴがいい感じですね!」
「おー、うまいうまい。意外だな、デニーズのオムライスは盲点だったな。眼中になかった。ところで、君のお母さんはどんなオムライスを作ってくれたんだい?」
「はい、典型的な家庭のオムライスです。こどもに生のタマゴはよくないって、しっかり焼いた玉子焼きに包まれていて、その上にケチャップでいろいろな言葉が書かれていまして。あるときは『おかあさんスペシャル』とか、またあるときは『HAPPY!』とか」

“ こどもの頃から母親似って言われるんです ”
 健一は、幸せそうにオムライスを口にする姿を見て、真吾のそんな言葉を思い出していた。
 どことなく中性的な顔立ちの真吾の瞳の中で、思い出が駆け巡っている。
 こいつの優しさときめ細かさ、それと人懐っこさは母親譲りだな……。
 苦労にもめげず、うらみもせず。
 こういうやつは、本当に報われてほしい……。
 年の離れた弟を見るような、そんな眼差しが真吾を見守る。

 おかあさんのオムライスか……。
 オレもよく作ってもらったっけ。
 デパートのレストランにも連れて行ってもらって、国旗の立ったお子様ランチのオムライスを食べたよなあ……。

「今日は母の日ですね……」
 真吾につられて思い出にふける健一の耳に、何気ないつぶやきがこだました。

 母の日。

 そう言えば、小学校の時に学校からカーネーションを持って帰って以来、この日を意識したことなんてなかった。

 孝行のしたい時分に親はなし。
 よく言ったものだ。

 母親の笑顔が脳裡に浮かぶ。

 と、そのとき、

 健一の中で、母親の顔と、和菓子店の女将の顔がオーバーラップした。

「そうだ神山!」
 健一の目が輝く。

「それで行こう!和菓子のネット販売。カーネーションの絵をあしらった便箋に、女将さんに手紙を書いてもらって入れよう。一言でいい。君のおかあさんがオムライスにケチャップで書いてくれたように。店売りの方も女将さんの人柄が人気でリピーターが増えている。あの人の人柄や真心は、きっとネットを通じてでも伝わるはずだ」
「それ、いいですねえ!」
 真吾が身を乗り出す。
「15:00までにはまだ時間がある。よし、企画を詰めるぞ、神山!」
「はい!」

 ブラインド越しに降り注ぐ夏への準備を進める午後の穏やかな陽光が、テーブルに満ちあふれる。

「武井さん、女将さんにカーネーションを買って行きましょうよ」
「おー、ナイスアイデア」
「何の疑いもなく、あなた方に全部任せるからって、女将さんはボクたちにとってはおかあさんみたいなもんですもんね」
「さすが神山。その通り」

 健一はパソコンの企画書ファイルを開くと、一文字一文字、力強くキーを叩いた。

“ カーネーションプロジェクト   ~ 一輪の真心を和菓子に添えて ~ “

 まるで、ほっぺたにご飯粒をつけながらおかあさんのオムライスを頬張る子供のように、パソコンの画面に食い入るふたり。

 生命を吹き込まれた文字が言霊となり、パソコンから飛び出す。

 一輪のカーネーションが宙を舞い、リインカーネーションと溶け合う。

 健一の母も、真吾の母も、真心の文字の中で楽しげに踊っている。

 輪廻に宿る永遠の真実。

 真心が、時空を超えて、伝播する――。

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2017
04.28

【再掲載】 陽だまり食堂

いよいよゴールデンウィークだあ!!
今日は、もう一度行きたいなあと思ってる、2014年に行った仙台の「陽だまり食堂」の再掲載……。


**********************************

さあ、せっかくなので仙台のオムライスを食べるぞ~!!
どこへ行こうか???

オムライス選手権で取り上げた「たまご舎」や「アメリカングリル」もいいけれど、名前にひかれた店がある。

それは、陽だまり食堂 ( ← ホームページにリンク)

仙台駅の西口に降り、広瀬通の一本南側(仙台駅を背にして左側)の道を広瀬通駅方面に進み、2つ目の交差点の左側にある(豊栄堂ビルの地下1階)。

店に降りる階段の前には「ハヤシライスとオムライスのおいしい洋食店」の看板が!

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うわああ! いろいろなオムライスがある!!
そそられる~!!
やっぱ、ここはオーソドックスにケチャップがけの「陽だまり風オムライス」に決まりだな……。
そんなことを思いながら、階段を降り店の前へ。

と、そこに新たな看板が登場!
今度は、行く手を阻むドラクエのラスボスのように鎮座ましました看板が!
(火は吹かないけど)

じゃ~ん!

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なんですとーーーーーーー!!!!!!!!!!!!
スペシャルランチセットだとーーーーー!!!!!!!!!

一日限定20食のタンシチュー風オムライス。

「これを食べると決めないとここは通さんぞー」
ラスボスの目が、キラリと光る。

うわああああ、これはまずいことになった。。。

よし、見なかったことにしよう。
看板の横をよそよそしい目で通り過ぎ、店内に。
中に入ってしまえばこっちのものだ。

ホッと一息。

「いらっしゃいませ」
入口のすぐそばにあるレジからお姉さんの明るい声が……。

どうやら先にレジで注文と会計をする仕組みらしい。

「えーと、タンシチュー風オムライスを」

ん?

あれ?

おい。

おーい!

そこのお前。

おいオレ! 何やってんだよーーーーーー!!!!!!
初めて行った店はオーソドックスな定番メニューを頼むんじゃなかったけ???

どうしたんだろう? おかしいなあ???

いやあ、何というか、まーそのー、ギュウタンとオムライスのコラボは、いわゆるひとつのオムライス愛をギュウっと抱きしめてタンタンたぬきのきん……♪おっと危ない!タンタンはパンダだけど、いいじゃんかよー、だって食べたいんだよー!

そんな、わけのわからぬ心の動揺を隠しつつ、ポーカーフェースで案内されたカウンター席につく。

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時間は11:10。先客は2組ほど。
地下なので店内はちょっと暗めだけど、その分明るめの調度で清楚な雰囲気を醸し出している。

レジカウンターを境に、4人掛けのテーブル席が2つと、2人掛けのテーブル席が4つ(片側はロングソファー)。カウンターは6席。

「いろいろな種類のオムライスを安く提供」というのが売りで、嬉しいことにランチタイムは17:00までやっている!

カウンター席の目の前の厨房では、職人っぽいけど優しそうな雰囲気のシェフが黙々と料理を作っている。

ケチャップはハインツかあ……。

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そんなことをボーっと思っているうちにオムライスが登場!

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「スゲー!」
見た目に圧倒され思わず声が出てしまい、店員さんに笑われてしまったあ。。

いやあ、これはかなりのボリューム。
ハヤシソースがたっぷりで、見た目もきれい。

では早速、いただきます!

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なるほど!

ハヤシソースが多いせいか、あるいはチキンライスが淡白なせいか、玉子とライスがソースに負けている気もするけれど、じっくり煮込んだ濃厚(でもしつこくない)ソースのほんのりとした酸味とケチャップライスのバターの甘さがほどよくマッチしてる。

うん、口の中での広がりは、まさに「陽だまり」のほっこり感!
それと、オニオンとベーコンのスープとの相性もいい。

タンはどうかなあ????

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おー! やわらかい! 
でも、しっかりと食べ応えがあって、お腹に「ズシン」とくる。
これは、身も心も大満足!

そうこうしているうちに、まだ12:00前だけど、結構お客さんが入って来た。
そうだろうな。コスパもいいし、人気店っていうのも頷ける。
ひとりでも複数人でもどちらでも気軽に入れる雰囲気だし。

陽だまり食堂のホームページには、次のようなプロフィールが書かれている。

------------------------------------------

現在の仙台パルコの建設が決まり、ひとつの食堂が閉店しました。
その食堂の名前は「駅前食堂」。小さな食堂でしたが行列ができるほどの賑わいでした。そして、3年の時を経て、その伝説の食堂が、仙台クリスロード近くに、「陽だまり食堂」と名に変わり、リニューアルオープン!!
人気のハヤシソースは、当時の味をそのままに再現!
女性に人気のオムライスは、
①ご飯と卵の混まぜリゾット風♪
②ふわふわ卵のあとのせタンポポ風♪
③卵でご飯を包んだ昔ながら風♪ 
①~③それぞれ6種類ずつラインナップ♪
オムライスのルーツと言われる3つの焼き方すべてをお楽しみいただけます。

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へえ、なるほど、素敵な店の復活なんですね!

ところで、みなさま覚えていますか?
①は東京銀座「煉瓦亭」のライスオムレツが起源ですね!
②は東京日本橋「たいめいけん」のタンポポオムライス!
③は大阪心斎橋「北極星(旧パンヤの食堂)」のオムライス!

どれを選ぶかはみなさまのお好みで!!


陽だまり食堂 食べログ情報

陽だまり食堂洋食 / 広瀬通駅あおば通駅仙台駅



5月の小景

風薫る杜の都。
午後の柔かい陽ざしに誘われ、その店のドアをあける。

陽だまり食堂。

通りすがりに訪れたオムライスの店。
レジカウンターで注文を済ませると、陽介は、カウンター席に腰を落ちつけた。

目の前に並ぶアメリカンソースの缶とハインツのケチャップ。
厨房では、マスターが、手際よく、黙々と、ケチャップライスを炒めている。

バターの甘い香りが鼻をつく。

なんだか懐かしいなあ、この感じ。
初めて来た店なのに……。

不思議な感覚が陽介を包み込む。

外の陽ざしにも負けない天井からの柔かい灯りの中、店内を見回す。

白い壁と、明るい色合いのブラウンの調度。

何だろう。前にも来たことがあるような……。

「おまたせしました」
やがて、店員さんの笑顔と一緒に「陽だまり風オムライス」が陽介のもとに運ばれて来た。

オムレツとご飯がひとつになったリゾット風のオムライス。それにケチャップがかけられている。

どうして?
それを目にした瞬間、陽介の時計の針が、とまった。

真ん中にスプーンを入れ、そっとひと口、口に運び込む。
ミックスベジタブル……。

とまった時間が、逆流しはじめる。

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 ◆


「なんでオムライスにミックスベジタブル入れんだよー」
真子が作ったオムライスを口にした陽介が叫ぶ。
「ミックスベジタブルは栄養のバランスがいいんだからね」
ちょっとだけ泣きそうな顔の真子が応戦する。
「オレがミックスベジタブル嫌いなの知ってるだろ。それに、ご飯と玉子が混ざっちゃてるんじゃん。これじゃあオムライスじゃないでしょ」
「だって、だって……」
「わかったよ、ごめん、泣くなよ。うん、味はいい! おいしい、おいしい」


 ◆


ミックスベジタブルが入ったオムライス。

子供の頃から嫌いだったミックスベジタブル。
いつしか好きになり、緑と、黄色と、オレンジは、幸せなトリコロールへと変わった。

「はい、おまたせ、陽介の大好きなオムライス! じゃあ、ケチャップをかけるよ」
「おー、バターがいい香り。でも、不思議だよなあ。あんなに嫌いだったミックスベジタブルなのにさあ、今じゃあ入ってないと物足りないもんなあ」
「でしょ! 私の粘り勝ちね! 野菜食べなきゃダメなんだから」
「それに、ごはんと玉子が混ざっちゃてるのも。ん? 何書いてんの? I ♡ よう?」
「あはは、youをようって読むひといないよ~。あはは」
「あ、そ、そうだよな。はは、いいじゃん、オレ、ようすけだから。ようって読んでも」
「うん、ホントはひっかけて書いたんだけどね」
「そうだろ」

そしてまた、いつしか口にすることがなくなった、ミックスベジタブル。


 ◆


「ごちそうさま」
陽だまり風オムライスを食べ終えると、陽介はゆっくりと席を立った。

" 陽介って名前、陽だまりみたいに暖かい陽介にピッタリで大好き! "
" 真子って名前も純真な真子にお似合いだよ "

陽だまり食堂かあ……。
広くはないし、決して飛び抜けてオシャレな店ではないけれど、どことなく素朴で清楚な心落ち着く場所。
決して飛び抜けて美人ではなけど、どことなく素朴で清楚な心落ち着く、かけがえのない……。

店を出た陽介の頬を南からの風が撫でる。
堰をきった思い出の滴が、その頬を伝う。

また来たいな……。

5月の青空は、どこまでも続いている。

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● ひだまりの詩 Le Couple




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2017
03.20

コトブキ

イセザキの外れでノスタルジーに浸る

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3月19日、日曜日の午後1時。
関内駅で降り、マリナード地下街を伊勢佐木町方面へと向かう。

やがて突き当りに到達。
看板の指示に従って階段を上がると、伊勢佐木町商店街、通称「イセザキモール」の入口が視界に飛び込んできた。

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晴れ渡った空。
柔かい陽ざし。
そして、さわやかな風が舞う。

銀座を散策するのが「銀ブラ」ならば、伊勢佐木町を散策するのは「イセブラ」。
かつて日本の最先端よろしく我が世の春を謳歌したそんな商店街だが、今では春爛漫の商店街を行き交う人々は、さほど多くない。
いや、多くないどころか、みなとみらい地区が栄える一方で、まるでさびれた地方都市の商店街のような様相を呈している。

立ち並ぶ建物も時代とともに移り行く。
「松屋」は「JRA場外馬券売場のエクセル伊勢佐木」へと変わり、「横浜松坂屋」は「カトレヤプラザ伊勢佐木」へと変貌した。
「目的の店」まではイセザキモールの入口から10分程度。
住人が変わったかつての我が家を見るかのように、ちょっとした寂しさとよそよそしさが歩く速度を早めさせる。

そんな中、変わらぬ建物にこころがほっとする。
神奈川県民にとって本屋と言えば、明治から続く老舗の「有隣堂」。
こちらはその本店だ。

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1丁目、2丁目を過ぎ、3丁目の交差点をさらに直進。

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4丁目では「伊勢佐木町ブルース」の歌碑がお目見えする。

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青江三奈さんが100万枚のヒット曲「伊勢佐木町ブルース」を歌ったのは1968年のこと。
高度経済成長期、まさに昭和が隆盛を極めた時代である。
歌碑は青江三奈さんを讃えて商店街の組合が作ったもので、歌碑にあるボタンを押すと「伊勢佐木町ブルース」が流れる仕組みになっている。

さらに歩を進め5丁目に。
ここまで来ると、「商店街の外れ」の色が濃く、それと反比例するかのごとくイセザキの色と人影がうすらいで行く。

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そんな5丁目に、この周辺の食文化を支えて来た老舗洋食屋が、ひっそりと佇んでいる。


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コトブキ

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コトブキは1954年(昭和29年)の創業。
以前は大岡川方面の若葉町に店を構えていたのだが、2002年に道を一本へだてた伊勢佐木町に移転した。
旧店舗のそばには、コトブキと共に同時代を歩み、2005年に閉館した横浜日劇があった。

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出典:wikipedia

ヨコハマの光も闇も知り尽くした、生き字引のようなコトブキ。今は24時までの営業だが、最近までは創業以来ずっと年中無休の24時間営業を続け、土地柄、買い物客やらカップルやら水商売の方やら、幅広い客層を収容してきた。
まだ移転してきてからそんなに月日は経っていないが、それでも歴史の重みを感じさせる老舗大衆食堂の雰囲気を、しっかりとかもしだしている。

ドアを開け店内に。

入口から見て左側にテーブルが5つ。
うち、真ん中は3人掛けで、残り4つは4人掛け。
右側は二人掛けが8つ並んでいる(壁側はソファーになっている)。

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先客はふた組。
女将さんに「先生」と呼ばれている初老の男性客がひとりと、母子連れの3人組。

間髪を入れずにオムライスを注文。
価格は730円(税別)と、お値ごろ。

辺りを見回す。
2002年の移転なので、店内はそれなりに新しいのだが、随所に昭和が見え隠れする。
極めつけはBGM。
古めかしい洋楽が、これまたトランジスタラジオから流れるような古めかしい音で流れている。

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ここはどこ?
いつの時代?
一瞬、心身が時代錯誤に陥る。

と、目の前をオムライスが通過する。
どうやら先客の子供が注文したものらしい。
母子3人組のこどもふたりはともに小学校高学年(4~5年くらい?)の様相。
なんだかうれしい。

" たくさんお食べ "

子供たちが美味しそうにオムライスをほおばっている姿を見ると、思わず笑みがこぼれてしまう。

やがてボクが注文したオムライスも出来上がった!

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おー!
美味しそう!!
これぞ典型的な昔ながらのオムライス。
中のライスもチキンライスだし、玉子の黄色、ケチャップの赤、千切りキャベツの黄緑の配色もまるでお手本のよう。
それにしじみの味噌汁がついている。
これも美味しそう。。

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ボリュームもたっぷり。
食べ応えがありそう。

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では、いっただきま~す!!

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うん、美味しい!
それに、濃い!
めっちゃ濃い味。
しかも、塩気のつよい味付け。
クリームを入れたマイルドな味とは真逆。

キャベツにはドレッシングもマヨネーズもかかっていないけど、何もつけずにオムライスと一緒に食べてちょうどいいい。

いいなあ、これ。
懐かしい味。
しばし、ノスタルジーに浸る。

よく見ると、壁にキャベツの食べ方が貼られている。
なるほど、納得。

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しばらくして、先客の母子連れが食事を終えレジに向かう。

「どっちが上かな?」
女将さんが男女の子供に尋ねる。
「一緒!」

二卵性双生児のようだ。

「どっちが強いのかな?」
再び女将さんの質問が飛ぶ。
「お姉ちゃん」
男の子が応える。
「男の子は強くならないとね」
笑顔のおかみさん。
はにかむ男の子。

男は強くかあ……。

横浜、いや、ヨコハマに来ると、しかも野毛や伊勢佐木町、いやイセザキに来ると、ハードボイルドの世界が脳裏をよぎる。

タフでなければ生きて行けない。優しくなれなければ生きている資格がない。
If I wasn't hard, I wouldn't be alive. If I couldn't ever be gentle, I wouldn't deserve to be alive.

レジに佇む母子連れと女将さんに目をやりながら、心の中でつぶやく。
女将さん、その男の子はきっとお姉ちゃんより強いんだよ。
でも、やさしいから、お姉ちゃんをたててんだよ。
だって、ふたり仲良く、この店の最高に美味しいオムライスを笑顔で食べてたんだから。

母子連れが去ったあとのテーブルには、ご飯粒ひとつも残っていないきれいな食器。
創業以来、いったいどれくらいの人がこの店の味で育っていったのだろう。

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ヨコハマ。
イゼザキ。

中学高校時代にお世話になった街。

" 帰りにエアライフルやろうぜ! "
友達の声が蘇る。

ある意味、ボクの故郷。
上辺だけのやさしさや飼いならされたマイルドなんていらない。
いつまでも、変わらずに、ここにあってほしい。

■ コトブキ
・TEL 045-251-6316
・住所 神奈川県横浜市中区伊勢佐木町5-129-9
・営業時間 9:30~24:00
・定休日 年中無休


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2017
03.12

洋食TAKA

アットホームな洋食屋でいただく武蔵野の風情

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アートスペース88を後にして、国立駅のすぐそばにある、洋食TAKA ( ← リンク ) へと向かう。
南口から線路沿いの道を東京方面へと歩き、2~3分ほどで左手に素敵な佇まいがお目見えする。

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真冬の午後6時。
寒風が頬をかすめる。
肩をすくめる目に、店内から発せられた至福の灯りが飛び込む。

"さあ、あたたまっていきなよ"
木板に書かれた「TAKA」の文字が、やさしくほほえみかける。

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ドアを開け、店内へと入る。
「いらっしゃいませ」
奥さんの案内に従い、奥のテーブル席へと進む。
入口の窓越しには手前にあるカウンター席しか目に入らないため店の広さはわからなかったが、奥には4人掛けのテーブル席が6つあり、決して大きな店ではないがゆったりと座ることができる。

腰を落ち着け、メニューを拝見。
オムライスは固焼き卵と半熟卵の2種類が用意されている。
しかも、各々、トマトソース、デミソース、トマト&デミソースの3種類から選べる。

うーむ。
どれにしようかなあ???

半熟卵のもいいけど、ここはやっぱり職人技で包んだオムライスを食べたい!
店のホームページにも以下のように書いてあるし。

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お子様の好きなメニューと言えば『オムライス』

でも『オムライス』と一言で言ってもその味・形は沢山ありますよね?
定番なのは誰でも知っているチキンライスを薄焼き卵でラグビーボール型に包んだもの。
しかし、卵が厚すぎれば食感が悪くなり、薄すぎれば歯ごたえが無くなります。
そんなバランスの取れた絶妙な厚さのオムライスを作れるのは経験に裏打ちされた技術を持つ者だけです。

勿論、『洋食TAKA』のオムライスも例には漏れません。
じっくり煮込んだデミグラスソースをかけたその愛らしい姿はお子様だけでなくいろんな方に食べて頂きたい一品です。

**************************************


ソースはふたつの味を楽しめるトマト&デミにしよう!

注文をすませ、ゆったりと流れる時間を楽しむ。
間接照明のやわらかい光。
スピーカーから流れるカントリー調の曲。
落ち着いた雰囲気の色調と調度。
そして、厨房から聞こえる卵を溶く音。

そのどれもが、やすらぎのひとときを演出する役割を果たし、北風に固まった心身を弛緩させてくれる。

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しばらくしてオムライスが運ばれてきた。
おー!
美しい!!!!!

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ホントきれいに巻かれているし、左右に広がるトマトソースとデミソースの海が見事に調和している。

店の雰囲気にもピッタリ。
この店にして、このオムライスあり!

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では、いっただきます!

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うん、美味しい!
トマトソースは酸味がきいており、デミソースはコクがあって苦味がきいている。
中のチキンライスの味は薄めで、ソースや卵と絡まり合って店の味を形成している。
上品な大人の味だね。

ひとくち、そしてまたひとくち、ゆっくりとオムライスを口に運ぶ。
そう、このオムライスは「ガツガツ」と食べてはいけない。
確かな技術、作り手の思い、店の雰囲気、そして、武蔵野の風情を堪能しながらオムライスを食する。

個人的に、学生時代から中央線沿線が好きだ。
「これ」といった、ハッキリと語れる明確な理由があるわけではない。
感覚的に、本能的に惹かれるものがある。
沿線が培ってきたサブカルチャー的な要素も多分にあるのだろう。
そしてまた、「大都会東京」の中の「地方」の要素もあるのだと思う。

かつて国木田独歩は、その著「武蔵野」において、武蔵野の魅力(この地に惹かれる理由)を次のように描写している。

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必ずしも道玄坂といわず、また白金といわず、つまり東京市街の一端、あるいは甲州街道となり、あるいは青梅道となり、あるいは中原道となり、あるいは世田ヶ谷街道となりて、郊外の林地田圃に突入する処の、市街ともつかず宿駅ともつかず、一種の生活と一種の自然とを配合して一種の光景を呈しおる場処を描写することが、すこぶる自分の詩興を喚よび起こすも妙ではないか。
なぜかような場処が我らの感を惹ひくだらうか。
自分は一言にして答えることができる。
すなわちこのような町外れの光景は何となく人をして社会というものの縮図でも見るような思いをなさしむるからであろう。
言葉を換えていえば、田舎の人にも都会の人にも感興を起こさしむるような物語、小さな物語、しかも哀れの深い物語、あるいは抱腹するような物語が二つ三つそこらの軒先に隠れていそうに思われるからであろう。
さらにその特点をいえば、大都会の生活の名残と田舎の生活の余波とがここで落ちあって、緩やかにうずを巻いているようにも思われる。

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時代は違えど、分かる気がする。
自然との共生が問われる現代。
産業革命から進んできた生産性向上と資本主義の世の中。
高度経済成長期には多くの森林が伐採され、武蔵野の地も様相を変えた。
しかし、宮崎駿作品に象徴されるような、こころの奥底に訴えかけてくる永遠のアナクロニズムのような郷愁がこの地には宿っている。

大都会の生活の名残と田舎の生活の余波がここで落ちあって……。
言い換えれば、環境面で西洋化された生活とDNAに刻まれた日本古来の生活の融合か……。

美味しいオムライスを楽しんだ後、会計にレジへと向かい店の奥さんに挨拶をする。
「ごちそうさまでした。美味しかったです!ここはもう永いんですか?」
「そうですね、もう10年くらいは経ちますね」
「とても素敵な雰囲気ですね。ずっとやっていてくださいね」
「はい、細々とですがガンバってやっていきます」

店のドアを開け、すっかり夜の帳が降りた北風の街へと身をさらす。

"気をつけて。じゃあまた!"
TAKAの木板が語りかける。

"ありがとう!いい時間を過ごせたよ"

こころ惹かれる地の、アットホームな店で食べるほっかほかのオムライス。

ふと、空を見上げる。
洋食TAKAのホームページの文章が、星空に輝き、こころをあたためてくれる。

老舗のレストラン数件で13年間修行をし味の研究を重ね、国立の地に店を構えました。
料理には絶対の自信を持ち、老舗より安価で老舗以上の味を楽しめる洋食屋です。
決して気取ることの無く、「辛口」が苦手の方には「甘口」に、ナイフとフォークがなれない方にはお箸を用意。
一人でも、ご家族でも気軽に本格の味を楽しまれてはいかが?

■洋食TAKA店舗情報
TEL:042-573-7997
住所:東京都国立市東1-1-22 パールハイツ国立101
営業時間:[火~金]11:30~15:00(LO.) 17:30~22:00(LO.)[土・日・祝]11:30~22:00
定休日:月曜日


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2017
02.11

一枚皿

ビジネス戦士の秘密基地

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先日、所用で虎ノ門ヒルズに出向いた。
ちょうど昼時だったので、近所でランチをとることに。
虎ノ門駅は新橋駅から地下鉄銀座線でひと駅。
歩いても10分程度なので、新橋から手頃な店を物色しながら歩くのも一興だ。

どこにしようかな???
決めかねているうちに虎ノ門ヒルズに到着。

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虎ノ門ヒルズの中にもいろいろな店があって食事はできるのだけれど、せっかくなので近隣に面白い店はないかなと思っていたら、なんともまか不思議な様相の店が目の前に出現!

一枚皿

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虎ノ門ヒルズの道をはさんだ反対にある小さな店。

無国籍???
何だろう???

ドアを開け、店内に。
中はカウンターのみで、60年代のアメリカを思わせるグッズが壁を覆っている。
先客は2人組のビジネスマンのみ。

「いらっしゃいませ」
フロアお切り盛りしている年配の婦人の声が響く。
「荷物は階段においてください。使いませんので」
誘導に従い一番奥の席に腰を落ち着け、カバンを階段に置く。

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「ランチはパスタかオムライスです」
婦人が指さす黒板に目をやる。

どうやらパスタとオムライスの2巣類というのは決まっていて、味は日替わりらしい。
この日のオムライスはビーフ カレーソースのクリーム味。
間髪入れずにオムライスを注文。

「オムライスひとつ」
婦人が奥の調理場に声をかけると、やがてご飯を炒める心地よい音が店中を包み込む。
うん、いいカンジ……。
狭い空間だし、カウンターの椅子は決してゆったりと座れる代物ではないのだけれど、不思議と落ち着く。

しばらくして、サラダ、そしてオムライスが到着!

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スパイスの効いたカレーの香りが鼻をくすぐる。
同時に、「待ってました!」と、食欲が目を覚ます。

うわあ、美味しそう。。

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ではさっそくひと口。

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うん、美味しい!!
これは初めての味。
ソースはクリームでマイルドに仕上げつつ、インドカレーのようなスパイシーな味わい。
これがバターライスによく絡み、青菜ともやしのしゃきしゃき感がサポートする。
さらにはベーコンで「肉」を感じた舌に、これでもかとばかりにビーフの歯ごたえが追い打ちをかける。
このハイブリッド感はまさに無国籍!

これはいい店を知ったぞー!!!!!!!!
興奮さめやらぬこころと膨れたお腹を食後のコーヒーで落ち着ける。

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それにしても、この落ち着く雰囲気は何なんだろう……。
長居したくなるわけではない。
なぜだか、ほっとする。

無国籍。
どこにも属さない、自由で、無味無臭な深いコクと味わい。

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多種多様な職種の多種多様な人々が交錯するビジネスの世界。
日々是決戦。
弱肉強食。
キツネとタヌキのだまし合い。

ビジネス戦士の、つかの間の休息。

そんな言葉が頭を過ぎる。

一枚皿。
一枚の皿がもたらしてくれるやすらぎ。
そう、ここは、グローバルな空気に包まれたビジネス街に佇むやすらぎの無国籍空間。

「ごちそうさま」
時間がないので、そそくさとコーヒーを飲み干し店を出る。

滞在時間はほんの15分程度。
それでも、心身には、確実に充填されたエネルギーを感じる。


TEL:03-3431-3992
住所:東京都港区虎ノ門3-8-3
営業時間:[平日]11:30 - 14:00(LO 14:00)/18:00 - 21:00(LO 21:00)
定休日:土曜日・日曜日

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