2013
03.31

ショートストーリー 幸福行の列車

Category: ストーリー
 モノトーンで覆われた2月の海は、水平線の彼方で空と溶け合い、うねる波だけが自己主張を繰り返している。遠くには、白くかすみながら必死に飛沫を受け止める灯台が見える。

 季節外れの海辺のリゾート。人影はない。岬に向かって海沿いを走る通りも、クルマ数はまばらだ。

 北の海を引き連れた寒風がボクの体に突き刺さり、これでもかと、寄せては返す波の轟音が耳をつんざく。
 普段であれば、できればお目にかかりたくない辛辣な奴らだ。
 だけど今のボクには違う。大歓迎だ。

 なぜならば……。

 これから来るであろう幸せな時間を、とてもとても暖かいであろう時間を、より一層引き立ててくれる役者たちだから。

 Caffe POPPOⅡ

 白い平屋建ての店の壁に深緑でそう書かれた看板の前に、ボクは立った。

 あれから6年――。

「あれ、君、もしかしてポッポで働いてない? 喫茶店の」
「あ、はい。あー、いつも来ていただいてますよねえ!何かびっくりです!」

 彼女のことは良く知っていた。
 いや、正確に言うと、彼女の働く姿は良く知っていた、と言うべきだろう。

 その当時、地元の小さな出版社に勤務していたボクは、何軒かのお気に入りの喫茶店を作って、そこで企画を練ったり原稿の校正をしたりする日々を送っていた。
 ポッポはお気に入りのひとつであり、彼女はそこでウエイトレスをやっていた。その彼女に、出版関係の勉強会という全く意外な場所で会ったものだから、こちらも驚きだった。

「私、料理とデザインが好きで、料理関係の本とかのデザイナーになれたらいいなあって思うんです。なので、今、出版関係の勉強をしていて、今日は知り合いの人に誘ってもらったんですよぉ」
 ポッポでコーヒーを運んでくれるのとまったく変わらない、屈託のない目が笑う。

 休憩の合間のほんの10分程度の時間であったが、そのときボクたちは、ポッポのアイスコーヒーと小倉ホットケーキは秀逸であること、ポッポは彼女の自宅でお父さんが店主であること、ポッポという名前は汽車ポッポから来ていて、この列車(みせ)でお客さんに安らぎの時間を過ごしてもらいたいとの思いでつけた名前であることなどを話した。

 とてもきれいな目だった。
 今でもはっきりと覚えている。
 希望に満ちあふれた、とてもきれいな目だった。

 何気ない会話の中で、そんな彼女に惹かれていく。

 ポッポが牽引する列車に乗ったボク。
 その列車が、ゆっくりと、動き始めた。

 それからボクは、今までと同じように、週に2~3回ポッポに足を運んだ。
 ただひとつ違うのは、彼女の姿を見つけようとしていたこと。まだ学生で学業の合間に店の手伝いをしていた彼女は、いつも店にいるわけではなかった。それだけに彼女の姿があると、胸躍らせ、挨拶に加えて注文のたびに会話をつなごうとする自分がいた。

「もうすぐ夏休みだね。計画はバッチリ?」
「今、いろいろと考えてるんですよ。私、こういうときが一番好きなんです。もうすぐ何とかってときが。実際に始まっちゃうと、それはそれで楽しいんですけど、始まる前ってわくわくするじゃないですか!夢があるっていうか。そう思いませんか……?」

 純真。真摯。
 彼女も、少なからずボクに好意を持っていてくれていたと思う。飾ることなく、はぐらかすことなく、楽しげに、ボクと話をしてくれた。後に彼女が話してくれてわかったことだが、幼いころに母親と別れた彼女は、父娘ふたりで暮らしてきたという。そんな境遇が彼女を、母親のようにしっかりとしていて、人の気持ちがわかる優しい女性(ひと)に育てあげたのかもしれない。

「いつも出版の話を教えてくれてありがとうございます。活きた話っていうか、現実がよくわかって、すごく勉強になります!」
 会話をつなぐための作為でもあったのだが、出版関係の話はいろいろと彼女に聞かせてあげていた。
「私、本のデザインができるようになったら、その先に夢があるんです……」
「夢?」
「はい、夢です」
 両手で抱えたトレイを胸に、真っ直ぐにボクの目を見つめる透き通った瞳と、ちょっとハスキーがかった声が躍る。
「どんな夢? よかったら聞かせてくれる?」
「いつかこの店を継いだときに、メニューを本にしたいんです。店内も改装して、四季折々の店の風景写真も載せて、料理や飲み物ひとつひとつに自分で名前をつけて、ちょっとしたお話も書いちゃったりして……。お店全部を物語にしたいんです。お店にあるものすべてに感謝です。だって、私はそれで食べているんだし、それに、みんな可愛い私の仲間です。コーヒーだって、サンドイッチだって、一本のフォークだって……。と言っても、まだ、料理もデザインも、どっちも何にもできないんですけどね」

 大いなる彼女の夢は、ボクの心も和ませてくれた。
 今でもポッポという空間は充分に心を癒してくれる。それに加えてその夢が実現したら、客としてもどんなに素敵なことだろう。
 彼女の柔かい笑顔の向こうにある装い新たな店内を想像するだけでも、自然と顔がほころんだ。

 しかし……。

 喜びと悲しみ。そして、後悔。

 自分の人生での、唯一最大の後悔。
 それは、突然やってきた。

 売り物件。

 そう書かれたポッポの前で、ボクは茫然自失としていた。
 血の気が引くのを実感した。

 4か月ほど、ボクは取材のため南の方で缶詰になっていた。
 久しぶりに訪れたポッポ。
 自宅兼店舗の栗毛色の建物は静まり返り、剥がされた表札の跡だけが、転んで膝を擦りむいた子供のようにしくしくと泣いていた。

 どういうこと?
 彼女はどこに?

 連絡先は? 
 わからない。
 というよりも、名前すら聞いていない。
 
 頭から、すーっと寒いものが下に降りて行く。
 お土産を持った手と腰に、力が入らない……。

「ひとつ、お願いがあるんです」
 最後にポッポを訪れた日のことだ。
「今、料理の勉強をしているんですけど、父には内緒で実験してるんです。で、バターライスのオムライスを作ってるんですけど、味見してもらえませんか?」
「バターライスのオムライス?」
「はい。あ、知らないんですか?」
「う、うん。オムライスって言えば、中はケチャップのチキンライス……だよね……」
「あー、私の勝ちですね! オムライスにもいろいろとあるんですよ。バターライスも、カレー風味のも、十穀米のやつとかも」
「へえー、そうなんだ。いいよ、作ってみてよ。楽しみだなあ……」
「そんなあ!期待されちゃうと……」
「大丈夫、大丈夫。自信を持って。夢の実現には必要でしょ」

 しばらくして、彼女の両手に大事そうに抱えられた、ふわふわのタマゴとデミグラスソースに包まれたオムライスが運ばれてきた。
 目の前でホカホカの湯気が立ちのぼり、バターのほんわかとした香りが辺りに漂う。
 それはまるで、幸せの国からやってきた食べ物のようだった。

「どう、ですか? ホワイトソースの方がいいですかねえ? それ以前に、そもそもダメですか?」
不安が彼女を饒舌にさせる。

 しかしその不安は、30秒後に、とびぬけた笑顔に変わった。
 本当の笑顔は、周りの人をも幸せにしてくれる。学校でも、家庭でも、職場でもなく、彼女がボクに教えてくれたことだ--。

 海風は先ほどよりも強さを増している。
 空では、その強風にも負けずに、カモメが悠然と飛んでいる。
 POPPOⅡの文字の横に貼られた看板に、ボクは目をやった。

“いらっしゃいませ! バターライスのオムライスはいかがですか!名付けて……”

 運命の神様は、ときに残酷であり、ときに感動的なほど優しい。

 何でボクがこの地を訪れ、偶然にもこの店を見つけたのか?
 自分でもわからない。
 偶然?
 いや、もしかして……。

「いやあ、すごく美味しかった。このバターライスのオムライス、看板メニューで行ける!今度、感想を書いて持って来るよ」
「えー、本当ですか?楽しみです!あ、わがまま言っていいですか?」
「いいよ」
「本当ですか?いいんですか、そんな安請け合いして」
「いいよ。男に二言はないから」
「じゃあ、メニューに載せるバターライスのオムライスの物語も書いてください!」
「……」
「男に二言はないんですよね!」
「う、うん……。よし、わかった。約束する。素敵な物語を書くぞー!」

 あのときの宿題、まだ渡してなかったもんね……。
 随分と遅くなっちゃったけど、今日、持ってきたよ。

「私、ポッポのトレードマークは、ずっと大切に守っていきたいんです」
 何時ぞやの彼女の声が、頭の中を駆け巡る。

 四つ葉のクローバーと、愛国から幸福行きの切符を模した看板。
 ピカピカに磨かれたポッポのトレードマークは、バターライスのオムライスの看板の横に、しっかりと貼られている。

 さあ、ボクも新しいポッポに乗せておくれ。
 ポッポがPOPPOⅡになり、今、新しい旅が始まろうとしている。

 改札(ドア)を抜けたら、はじめに何て言おうかな……。

 上空のカモメが、笑っている――。


poppo.jpg

伝書鳩&四葉のクローバー


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2013
03.26

番外編:桐の家

大繁盛の、ほかほかやわらかさくさくかつやさん

DSC_0029_convert_20130326141253.jpg

このところ、本編のオムライスレポが停滞している。
理由は簡単。次にどういう行き方をしようか考えているから。
近場のオムライスは結構食べてきたので、次は都内に進出しようか、それとも……。

まあ、考えてばかりでは先へ進めないし、かつ、読者離れが進んでしまう。

ということで、合間の味付けで別のものを食べてみよう!お汁粉を甘くするのに塩を入れるようなものだね(なんか違うような気もするが……。まあ、細かいことは気にしない)。

オムライスばかりで大切な読者さまがおなか一杯になってしまってはいけないしね。
かつ、かつですよ、読者さまのリクエストにはちゃんとお応えしないとね(これ大事)。

で、かつ、かつですよ。

え?

かつ、どうしたって?

だから、かつ、です。

あのさあ、ふざけんなよ、かつ何なんだって?

だから、今回は「かつ」です!

オムライス同様、市民権を得ている「カツ」。
トンカツ、カツ丼、カツカレー。いや~、みんないいねえ……。

美味しそうな店をネット検索していたら、食べログの神奈川県トンカツランキング第4位の「桐の家(きりのや)」って、なんだよ、通勤途中じゃん!毎日横を通ってるじゃん!ここならすぐに行かれる。

悩みも考えもせず、速攻で桐の家に決定!パチパチパチ。
あ、これから先は「カツ」ではなく「かつ」と書きます。
何故かって?
オムライスのやわらかさに対抗するには、やはり「カツ」ではなく「かつ」でしょ。
かつ、桐の家の看板に、大きく「とんかつ」って書かれているから。この気持ちを汲まないと……。かつ、「カツ」じゃあなんか背中をビシって叩かれそうだもんねえ……。喝!

桐の家を訪れたのは月曜日の19:00頃。
おー、駐車場が満車だあ!
ちょっと昔っぽいけどとても温もりを感じる建屋を目にやきつけ、"よろしく!"と入口のドアを開ける。

わおー。すごい、大繁盛じゃん!
親子連れ、団体さん、仕事仲間風と、いろいろなお客さんで賑わっている。
月曜なのに……。どうやら休みの日は並ぶらしいというのが納得である。

注文するものは既に決めているけれど、メニューを拝見。
ふむふむ。おー、みんなひらがなだあ……。

ひれかつ定食 1,470円。
上ひれかつ定食1,995円
ろーすかつ定食 1,470円。
ちーずかつ定食1,575円。
しょうが焼き定食1,155円。
等々。

そんな中、この日は、ちきんかつ定食1,155円を注文。

オムライスのご飯の定番はチキンライス。“チキン好き”としては、日頃からちきんかつは好きで食べるけど、振り返ってみると、コンビニの弁当や総菜だったりで、とんかつ屋できちんとちきんかつを頼んだことはない。

人生初の、とんかつ屋さんのちきんかつ。
期待と期待と期待が交錯する。
(あ、これは交錯とは言わないか!)

しばらくして先付が運ばれてきた。
野菜の煮物、漬物、それと塩辛。

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先ずは野菜の煮物を……。

う、うまい!!
味の良くしみたこんにゃく。柔らかく上品な筍。甘い人参……。

続いて漬物……。
わー、これも美味しい!!
ご飯にとっておこう!これでご飯1杯は行ける!

最後に塩辛……

や、やばい、これ!
うますぎる!
とげのない、ほんのり柚子がきいた柔らくて優しい塩辛さが口いっぱいに広がる……。
うん、これもご飯にとっておこう……。
ご飯とキャベツはお代わり自由。このままではご飯が何杯あっても足りないぞー。

早くも感動した舌が、「かつ、かつ、かつ」と、かつコールを繰り返す。
五月蠅いなあ、まったく。せっかちなんだから……。我ながら自分で自分にあきれる。

「かつ、かつ、かつ」
それでもかつコールは鳴りやまない。
もう、勝手にしろ!

それからどれくらいの時間が経ったのだろう……。(きっとそんなに経っていない)

いよいよ、期待のちきんかつが登場!
6切れのかつが、花をあしらった皿の上に鎮座ましましている。

上げ色は薄く、見た目もサクサク。

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しかも……。
柔らかい!箸で簡単にヒュって切れる!

もう、食べる前に想像できちゃいますよね。

それからはもう、素敵な時間を過ごさせていただきました。
ほかほかで、サクサクで、やわらかくてジューシー。
口の中に幸せが広がっていく……。
それでなくてもあまり噛まないで食べてしまうので、これはもう、すっと喉を通って行ってしまう。

きっと、とんかつも美味しいんだろうなあ……。

あ、ついついかつに話が集中してしまったけれど、ご飯も、みそ汁も美味しい。
これは人気なのが頷ける。

桐の家は、創業30年以上の老舗。
田舎の民家風の建屋に、店内は家庭的な雰囲気と、ちょっとしたオシャレな雰囲気。
団体の座敷、テーブル席、カウンター席と、それぞれの客層を受け入れてくれる。

大勢のお客さんを相手に、従業員の接客もとても良い。これはいい店を知った。

「とんかつのある風景。ブーブー」というシリーズはできないだろうけど(いや、もしかすると……)、
新たなる発見ができて、とてもいい時間を過ごさせていただいた。

それと……。

自分では「ちきんかつ」を店で食べるという発想は全くなかったので、ご提案頂き今回の機会を与えてくださった読者さまには、改めて感謝申し上げます。

さあ、気分も新たに、またオムライスに突入するぞー!!
あ、こういったオムライス以外の要望がありましたら、もちろん、それも大歓迎です!!

2013年3月25日

■ 店舗情報 ■
・住所:神奈川県横浜市泉区和泉町3863-5
・電話:045-803-9880
・営業時間:11:30~14:00 17:30~21:00
・定休日:火曜日

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愛はチキンカツ

「カツと言ったらトンカツでしょ。チキン、ビーフなんて邪道でしょ!」
 それでなくても赤ら顔の東克也が、怒髪天を衝く阿修羅像よろしく血管を浮き上がらせ、大声でどなり散らす。
 今治和代は、”そんなにもトンカツ?”、そう思いながらも千手観音の安らかな表情を崩すことなく、必死に弁解を試みる。
「克也さん、そう興奮しないで。私はトンカツが嫌いって言っているわけではなくて……」
「いや、納得がいかない。初めて会ったときから、清楚で知性に満ち溢れた貴女には大いに惹かれている。貴女と一緒に生きて行かれたらどんなに素晴らしいことかと思う。あ、失礼。素晴らしいことかと思います。いや、頂けたらいいなあって思います。だけどこれだけは譲れない。そもそも、とんかつは豚にかつと書く。トンだぞ、トン。ビーフもチキンも”日本語+カツ”にはなっていないじゃないか!同じならばトンカツはポークカツと言うべきだ。それだけトンカツは日本人の心に沁みついてるんだ!トンカツこそがカツ。日本人の魂なんだ!」
 東の顔がますます赤みを増す。
 やれやれ。これは大変だあ。
 でも、克也さんには私も惹かれているし、私のトンカツ、いや、婚活もそろそろ決着つけたいし……。あ、私もちょっと動揺してるかな……。
 呼吸を整え、和代は口を開いた。
「ポークカツもあるから。ほら、西洋風の……」
 言いかけて、和代は、いけない!これは火に油だ……ほら、そうだろって言われちゃう……と、口に手をやった。

 が、時すでに遅し。

「ほら、そうだろ!ポークカツとトンカツが明確に分かれているだろ!トンカツはトンカツ屋、ポークカツは洋食屋。第一、トンカツ屋とは言うが、チキンカツ屋とか、ビーフカツ屋とは言わない。だからこそ私はトンカツにこだわるんだ。日本の味に。偉大なる日本の文化に。わかるかい?」
「え、……ええ……」
 千手観音の手が、散り際の花束のように、シューと音を立てて萎んでいく。

 そう言えば……。

 和代の中で、頭のレコーダーが逆回転サーチを始める。

 お見合いの日の自己紹介で言ってたっけ……。
“私の名は東克也。ヒガシと書いてアズマ。ヒガシはトン。通称、トンカツヤです”

 その時は場を和ますための、限りなくおやじギャグに近いダジャレかと思っていた。
“私、時任三郎のことをトキジンザブロウって思ってたんですよ。でも、知り合いにもっと変な子がいて、彼女、東邦生命のことを、ずっとアズマクニオ イノチって思ってたんですって。アズマクニオさんってすごいなあ、日本全国に熱狂的な追っかけがいるんだあって。この前、今度、アズマさんて人とお見合いするのって話しをしたら、彼女びっくりしちゃって……”

 確かに場は盛り上がり、お互い、初対面から飾らない話ができる気さくさに親しみを感じて意気投合。その後の交際も順調に続いた。
 今日はそろそろXデーの話でも、と思っていたところだった。

「わかってもらえればそれでいいんだ」
 阿修羅像の怒髪は柳のようにしな垂れ、見る見るくしゃくしゃの笑顔のブーフーウーに変わっていく……。

 和代、ここで引いたらだめよ。ちゃんと言わないと。気持ちがチキンになっちゃダメ!
 和代は自分で自分にそう言い聞かせ、大きな声で、はっきりと言った。
「克也さんのトンカツへの思いは良くわかったわ。でも、チキンカツも美味しい。この店の、桐の家のチキンカツは、特に。だから、私は今日はチキンカツが食べたい……」

 ブーフーウーの笑顔が、一瞬通りすがりの雲に覆われた太陽のように陰ったが、すぐに明るさを取り戻した。
「わかった。貴女がそれほど言うのなら、どうぞ。もともと貴女と喧嘩するつもりは、これっぽっちもないし、私も興奮して言い過ぎた。お互いの好きなものを知るのも大切なことだしね」
「うん!じゃあ、私はチキンカツ定食にする!克也さんは上ひれかつ定食ね!」

 よかった……。めったに表情を変えない千手観音が安堵の表情を浮かべ、店員に注文を告げた。

「2年位前に残念ながら閉店してしまったんだけど、上野に平兵衛というトンカツ屋があってねえ。ここがすごい。表の看板に、他店とは全く違いことを謳っている。味の話じゃあないんだ。地球環境の話。黒く汚染した油を使う殆どの他店は傷害罪だ!とか、肉を叩かないと柔らかくできないのは下手ということだ!とかね。店内にはパンフレットもあって、業界の現状、とんかつとは?、今後の業界等について事細かに記されている。こうなると、もう学問だよ。トンカツ学。……」
それからしばらく、カツが揚がるまで、ふたりはそんな”カツ話”に花を咲かせた。

 本当にトンカツが好きな人なんだなあ……。
 ちょっと熱くなり過ぎることろもあるけれど、東の一途な純真さに、和代は大きな信頼を抱く瞬間でもある。

 やがて、こんがりと揚がったカツがテーブルに運ばれてきた。

「わー、美味しそう!」
 和代がはしゃぐ。
 その笑顔を見て、東も幸せを感じる。
「いっただっきま~す」
そう言いながら、和代は一切れのチキンカツを箸で、すっと、ふたつに割った。

「えっ!」

 処理しきれなくなったパソコンよろしく、東が、かたまった……。
 和代が割ったチキンカツを見たまま……。
 うんともすんとも言わない。矢印ポインターが、動かない……。

 きょとんとした目で、割った半分のチキンカツを口に運ぶ和代。
 その動作を、口を開けたまま追いかける東……。

「ど、どうしたの?」
「……」
「私、何か変かなあ……」

「チキンカツって……」
「チキンカツ?」

「チキンカツって、そんなに柔らかいの?」

「うん、やわらかいよ」
「それに、すごく美味しそうだ……」
「うん、美味しいよ」
 東の問いかけに、平然と応える和代。

 一方。

 東の中で、今まで築き上げてきた価値観が、ガラガラと音を立てて崩れて行く。

「あれ、もしかして、克也さん、チキンカツって……」
 やっぱりね。この人、チキンカツ、知らないんだあ……。カツ博士なのに、本当にトンカツ一筋。
 変化観音の中でも最も変化し、救済力が強いと言われる千手観音。今こそ、迷える子羊に救いの手を差し伸べるべく、力の発揮どころだ。

「チキンカツ、食べてみる?」
 子羊と化した東のプライドが飛んでいく……。
「……いいの?……」
「もちろんよ。はい、どうぞ」
 和代はチキンカツが乗った皿を、満面の笑みと神々しい手で差し出した。

 CookDo回鍋肉のコマーシャルの杉咲花よろしく、東はチキンカツを一口つまむと、ゆっくりと口に運び、パクリと押し込んだ。

 東の表情が、唖然から笑顔、笑顔から涙へと、移り変わっていく……。

「…う…、う…、うまい。……うまい。うますぎるーーーーーーーーー!」

 そうなんだあ。そんな、泣くほど美味しいんだあ……。
 なんか可愛い。よしよし。いい子いい子。
 東の全身で感動する姿を、和代は冷静に見ることができた。

 なぜならば……。

 和代はまた、お見合いの日の会話を思い浮かべていた。

“私は今治和代です。イマバリといっても愛媛とは関係ないんですけどね。あ、そうそう、今治を逆に書くと治今じゃあないですか!東さんがトンカツヤでしたら、私はチキンカズヨ、チキンカツヨですね!なんて、ちょっと苦しいですよね”

 チキンカツヨ。
 そう、チキンが勝つ。

 うふふ。これで夫婦生活は安泰ね……。

 東が、こわれて行く……。

「チキンカツだあ!世の中はチキンカツだあ!明日はチキンカツだあ!愛は、愛は、愛はチキンカツだあーーーーー!!!!」

 そう叫ぶと東は、突然、かつてのヒットソング「愛は勝つ」の替歌「愛はチキンカツ」を唄い出した。

 ♫
 心配ない からあげ(からね)
 君の お餅が(想いが)
 誰かに 豆腐(届く)
 明日が きつねうどん(きっと来る)

 どんなに こんにゃくで(困難で)
 くじけ そうめん(そうでも)
 とん汁(信じる)事を
 けして や明太子(めないで)

 カレーうどん カレーライス
 (Carry on carry out)

 しば漬け 福神漬け(傷つけ 傷ついて)

 愛する せツナサラダ(つなさに)
 少し疲れ 天丼(ても)

 oh・・・・・・

 どんなに こんにゃくで(困難で)
 くじけ そうめん(そうでも)
 とん汁(信じる)事さ
 必ず 最後に チキンカツ(愛は勝つ)

 これで完璧ね。

 結婚に当たり主導権をどちらがとるか、その後の人生にとって、これはとても重要なことだ。
 阿修羅像をブーフーウーに変え、終いには迷える子羊に仕立て上げた千手観音、今治和代。
 大丈夫だ。日本の未来は、まだまだ明るい。

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2013
03.22

オムライス選手権 1回戦 第4試合 青森 VS 大阪

会場は次の試合への準備が整ったようです。

さあ第4試合は、注目の大阪の登場です。
西の雄、大阪。優勝候補の一角です。
どのような貫禄を、そしてどのような"まくしたて"を見せてくれるでしょうか。

対するは青森。どのような展開に持ち込むでしょうか。
正攻法では厳しい気もしますが、ストレートに行くのか、はたまたリンゴパワー炸裂か……。

さあ、その青森。代表の店名はシャルムです。
この店もどうやらオムライスが評判とのことです。

さあ……。

⇒ 残念ながらお見せできません。食べログをご覧ください。

おっ!
これは洒落た外観!素敵な雰囲気を醸し出しています!

店内はどうでしょう。

⇒ 残念ながらお見せできません。食べログをご覧ください。

小ぢんまりとしていますが、これまたいい雰囲気です。

さて、評判のオムライスはいかに……。

⇒ 残念ながらお見せできません。食べログをご覧ください。

おー、これはすごい!!!

おきて破りの海老フライ乗せだああ!

これは意表をついた攻撃。
リンゴではなくエビです!
価格はこれで900円ですって!?

食べログの口コミでは、チキンライスとタマゴ、デミの愛称が抜群。味は濃いめだけどとても美味しいと評判です!

得点はどうでしょう……。



343

う~ん、これはどうでしょう。
まずまずの点ですが、何せ相手は食い倒れの町、大阪です。

大阪の様子はどうでしょう。
おー、さすがに大阪。まったく同様の色はみえません。

大阪第1代表はC.D.TAKOH(シーディータコウ)。
大阪市内、大江橋駅にある店です。

外観は、……、ん????????
あれ???????

⇒ 残念ながらお見せできません。食べログをご覧ください。

ピンポーン、こんにちは!タコウさんのお宅ですか?

なんと、会員制の店です。
あやしい?
高級〇〇クラブ……。

いや、違います。

一見さん御断りの、著名人御用達の店のようです。

さすがに会場がどよめいています……。

店内の写真は、撮影禁止のため掲載されていません。
価格は出ていませんが、メチャメチャ高いようです。

やっぱり、あやしい高級〇〇……、いや、違います。
失礼いたしました。

さあ、ということで、早速オムライスの登場です。
期待に応えることができるでしょうか……。

⇒ 残念ながらお見せできません。食べログをご覧ください。

おー、なんとデミグラスソースとケチャップソースの融合です!
これまた意表をつく素晴らしい攻撃。得点はどうでしょう……。

出ました!


434
これは高い!

食い倒れの町、たこやき、串カツの要素たっぷりの店を送り込むと思いきや、まさかの会員制高級店を送り込んできた大阪。レパートリーは豊富。さすがに優勝候補の戦いっぷりです!

青森は無念。相手が悪かった。
しかし、お洒落な雰囲気と海老フライ乗せのオムライスは、大会に新鮮な空気を送り込んでくれました。
いつまでもみなさんの記憶に残ることでしょう!

<記録>

○大阪 434 - 343 ●青森

シャルム 食べログ情報 

シャルム洋食 / 浅虫温泉駅

C.D.TAKOH(シーディータコウ) 食べログ情報 

C.D.TAKOH洋食 / 大江橋駅なにわ橋駅東梅田駅

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2013
03.22

オムライス選手権 1回戦 第3試合 山形 VS 滋賀

続いて第3試合、山形対滋賀、東北と関西の対決です。

今、両者が試合会場に入ってきました。
山形は雪国のハンデを乗り越えて力を発揮できるでしょうか!
といいつつ、オムライスに北国のハンデなんてなさそうですが……。

一方、滋賀は琵琶湖の魂をオムライスに込められるでしょうか!
琵琶湖の魂ってなんだかわからずに言っていますが……。

さあ、先行は山形です。
山形といえば芋煮会。
芋煮会は山形県と宮城県近隣の河原で行われる、里芋を煮て食べる会合ですが、仲が良いのか悪いのかわからないその隣県の宮城が、今日は大声援を送っています。


第1代表は、房’s(ボウズ)。天童駅前にある店です。

⇒ 残念ながらお見せできません。食べログをご覧ください。

おー?
これは予想外と言っていいでしょう!
蔵ですか?
オムライスが想像できません……。
これも山形一流の作戦なのでしょうか?

店内はどうでしょう。

⇒ 残念ながらお見せできません。食べログをご覧ください。

これまた和風のかおり漂う雰囲気。
木のぬくもりが落ち着きを与えてくれそうです。

さて、いよいよオムライスです!
果たして、和風仕立てなのでしょうか?それとも……。

今、情報が入りました。
どうやらオムライスが売りで、いろいろな種類がある模様です。

さて、いかがでしょうか……。
いま、ベールを脱ぎました!

じゃーん!

⇒ 残念ながらお見せできません。食べログをご覧ください。

まるい!
山形ですが、丸い山です!

きれいですね!
ソース、ご飯、タマゴ、まとまりを感じさせます。
価格は850円。これはお値ごろです。

店構えからは想像できないオムライス、これは期待できそうです!

得点はどうでしょう……。




308
あれ?

伸びませんねえ……。
おしゃれな雰囲気を醸し出していたんですが、どうしたことでしょう……。
何が原因でしょうか。。

もしかして味が???

この点を見て、対戦相手の滋賀がほっとした表情を浮かべています。
しかし油断は禁物です。

さあ、その滋賀はどうでしょう。

代表はスイス。彦根駅から15分程度のところにある店のようです。

先ずは外観です。

な、なんだあこれは!!!!!!!

⇒ 残念ながらお見せできません。食べログをご覧ください。

おーーーーー!
見せて、いや、魅せてくれます。

いやあ、本当にいろいろな店があるものですねえ。

蔦、蔦、蔦、また蔦。
かつての甲子園球場も顔負けの、スイスの雪男ならぬスイスの蔦男ってカンジでしょうか……。

これは強烈な印象を与えます。

この分だと、店内もすごそうな予感ですが……。

⇒ 残念ながらお見せできません。食べログをご覧ください。

おー、山小屋風ですかねえ……。
まさにスイスのロッジか。


さあ、そうこうしているうちに、早くもオムライスが用意されます。

え?

⇒ 残念ながらお見せできません。食べログをご覧ください。

おーっと、どよめきが起きます。

これはやってしまったか……。
見た目はごくありきたりの感があります……。
しかも400円とは……。

得点が出ました!

おー!

352

滋賀がガッツポーズです!
どうやら、コスパがいいようで、ハンバーグも500円。
山小屋風建屋の中は、いつも満席のようです。

一方、唖然とした表情の山形。

勝敗が決しました。
いやー、勝負って、本当にわからないものですねえ……。

泣くな山形。
美しいオムライスをありがとう。
また頑張りましょう!

<記録>

○滋賀 352 - 308 ●山形

房’s(ボウズ) 食べログ情報 

房’s洋食 / 天童駅
 
スイス 食べログ情報 

スイスハンバーグ / ひこね芹川駅彦根駅彦根口駅) 

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2013
03.22

オムライス選手権 1回戦 第2試合 神奈川 VS 佐賀

さあ、間もなく第2試合の開始です。
第1試合に続いて、またもや関東VS九州。
九州も意地を見せたいところですが、相手は前評判の高い神奈川です。

佐賀がどのように喰らいついていくでしょうか……。

先行の神奈川。代表は大船にある「ミカサ」です。
これは以外。横浜近辺の店が第1代表になるかと思いきや、所在は鎌倉市です。

東京にしろ神奈川にしろ、中心地ではない店でも評判がいい。これは首都圏のレベルの高さの現れでしょうか。

では、ミカサを見てみましょう。

⇒ 残念ながらお見せできません。食べログをご覧ください。

これは威風堂々!
まさに「これぞレストラン」の風格漂う趣です!
1936の文字が見えます。
これは創業の年。鎌倉市で最も伝統のあるレストランとのことです。

ホームページはこちらですねえ……。

http://www1.m.jcnnet.jp/micasa/

松竹の大船撮影所があった時代には俳優さんたちも足しげく通っていたそうで、実力は確かなようです。

おっと、店内もまた期待を裏切りません!
まさに羊羹、あタイプミスです。まさに洋館、文明開化、文明堂、カステラ食べたい!

⇒ 残念ながらお見せできません。食べログをご覧ください。

さあオムライスの登場です。

⇒ 残念ながらお見せできません。食べログをご覧ください。

おっと、これは何とも言えないオムライスですねえ……。

どうやらソースは自分でかけるようです。

時代にマッチしているかといえば、もしかしたら時代遅れともとられかねない、でも伝統に裏打ちされた定番の威厳を感じさせる、そんな雰囲気を醸し出しています。

価格は1,500円と、これは高め。これがどう影響するか?

注目の得点はどうでしょう……。



出ました! 

356

う~ん、これは思ったより低い気もします。
どうでしょうか?

これには最初からやや諦めムードだった佐賀の顔つきが変わります!

さあ、続いてその佐賀です。

代表は佐賀駅から徒歩8分のところにある、ミール珈屋凪(こやなぎ)。
どうやら、ヒデシマライスという、カレーをかけて食べる独特のオムライスがあるようです。

先ずは外観です。

⇒ 残念ながらお見せできません。食べログをご覧ください。

これはみかさとは対照的!
牧歌的、田舎のドライブインのような素朴な雰囲気の喫茶店です。
青空が似合いそうですねえ……。

店内はどうでしょう。

⇒ 残念ながらお見せできません。食べログをご覧ください。

これまた外観通りのイメージ。
テーブルはこれは、ゲーム機付のですか?
インベーダー、名古屋打ち、ピューンピューン!

懐かしさと親しみを感じさせる、気軽に落ち着けそうな店です。

さあ、いよいよ注目のオムライス、ヒデシマライスの登場です!

おーーーーー!

なんだこれはーーーー!!

大歓声があがります!

⇒ 残念ながらお見せできません。食べログをご覧ください。

デカイ!
超巨大オムライスだーー!
ご飯3合分だそうです。

オムライス650円。大盛り1,100円。
ヒデシマライスはカレーをかけてたべるようで、どうやら中もカレー味のチャーハン。
この店の常連の秀島さんのリクエストでできたとのことです!

得点はどうでしょう???

えーー!




312

どうしたことか、点数がのびません!
この巨大さが裏目に出たか……。

これには佐賀もがっくりと肩を落としています。

佐賀は無念の1回戦敗退。九州勢は2連敗となってしましました。

あー、佐賀はまだ茫然自失状態のようです。
今、応援に駆け付けていた隣県の長崎が佐賀の肩を抱き上げました……。

これにはスタンドも拍手喝采。
泣くな佐賀。明日を目指してまた頑張りましょう!

神奈川は2回戦でも実力を発揮してもらいたいものです。

<記録>

○神奈川 356 - 312 ●佐賀

ミカサ 食べログ情報 

ミカサ洋食 / 大船駅

ミール珈屋凪 食べログ情報 

ミール珈屋凪喫茶店 / 佐賀駅

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2013
03.21

オムライス選手権 1回戦 第1試合 東京 VS 熊本

さあ、いよいよ記念すべき、第1回オムライス選手権の開幕です。
開会式直後の第1試合。早くも優勝候補の東京が登場です。
対するは九州の雄、火の国熊本。どのような戦いを見せてくれるでしょうか……。

先行は東京です。

登場するは「洋食 三浦亭」。
港区でも、品川区でも、渋谷区でもなく、東京第1代表は練馬区の武蔵関駅近辺の店です。

お、ホームページもあります!
↓↓
http://miuratei.com/index.html

店の外観を見てみましょう。

⇒ 残念ながらお見せできません。食べログをご覧ください。

意外と小ぢんまりとしています。
東京第1代表にしては地味なイメージも受けます。
しかし、逆に、充実したオムライスが期待できるとも言えます。

店内はどうでしょう……。

おーーーーー!!!!!

これは驚きです!

⇒ 残念ながらお見せできません。食べログをご覧ください。

カウンター6席のみ!
これはすごい。
シェフの心意気、固定ファンの多さ、いろいろな要素が想像されます。

さあ、いよいよオムライスです。

ランチはスープ、サラダ付きで900円。
ディナーは単品で850円。

うん、リーズナブルですねえ。

出ました!

食べログ 東京 三浦亭 オムライス2


デミグラスソースのオムライス。
まさにタマゴにオムされた(包まれた)様相で、これはおいしそうですねえ……。

点数はどうか……。


おー、

381
いきなり高得点!
さすがです!

大会を盛り上げるべく、初っ端から魅せてくれました。



さて、対する後攻の熊本
ゆるキャラの「くまもん」がスタンドで応援する姿も見えます。

代表は松葉軒です。
熊本市内の、な、なんと、ラーメン屋さんです!

⇒ 残念ながらお見せできません。食べログをご覧ください。

いきなりラーメン屋とはこれはどういうことでしょう……。

おー!
オーソドックスなケチャップのオムライスですねえ。
しかし、これも結構美味しそうですよ。

口コミによると、チキンライスのご飯がパラパラで絶妙との評判。

しかも、しかもですよ。
価格は、なんと600円!これは安い!

⇒ 残念ながらお見せできません。食べログをご覧ください。

ラーメン屋にして熊本オムライス第1代表。
これはただものではなさそうな予感……。

もしかするといきなり大波乱か……?

さあ注目の得点は……。



350

勝者、東京!

東京、2回戦に進出です!
熊本も善戦しましたが、惜しくも破れました!
しかし、熊本には笑顔。涙はありません。

今、両者、がっちりと握手を交わしました。

スタンドからは両者に大きな拍手が送られます!

開幕試合から互いに高得点のいい試合でした。
熊本はまったくもって不運。これからの頑張りに期待しましょう。

東京はやはり実力者。早くも2回戦が楽しみです!


<記録>

○東京 381 - 350 ●熊本

三浦亭 食べログ情報 

洋食 三浦亭洋食 / 武蔵関駅東伏見駅

松葉軒 食べログ情報 

松葉軒ラーメン / 藤崎宮前駅黒髪町駅

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2013
03.21

第1回オムライス選手権(食べログ大会)

日本一美味しいオムライスを探す!

そうは言っても、実際に全国を回って食べ歩くのはかなり困難。
仮にできたとしても、すごく時間がかかる。何年かかるのだろう……。

ということで、机上の大会を開催しま~す!

名づけて、「第1回オムライス選手権(食べログ大会)」

パンパカパ~ン、パパパ パンパカ~パン

さて、ルールを決めよう。

・トーナメント形式
  ※トーナメント表は独断で勝手に決める
・食べログの評価点&係数で勝負
・1回戦は、その都道府県で1番評価の高い店同士で競う
・2回戦は、その都道府県で2番目に評価の高い店同士で競う
・以降、3回戦は3番目同士、準々決勝は4番目同士、準決勝は5番目同士、決勝は6番目同士
・ただし、2回戦から登場の都道府県もあるので、それらは1番+2番の合計で2回戦を戦う
尚、食べログの写真は使えないので、ラジオ放送のような中継とする。

  ⇒ 2013/4/20 ルール変更 : 食べログAPIで公開されている画像があれば使う

では早速、組み合わせ抽選会を行おう……。
1回戦からの登場は30都道府県。2回戦から登場は17都道府県。
初戦は東VS西。

都道府県名を書いたカードをシャッフルし、ランダムに抽出。

さあ、対戦カードが決まりました……。

発表です!

■1回戦
 <下記2回戦Cブロック>
  第 1試合 東京  - 熊本  A
  第 2試合 神奈川 - 佐賀  B
  第 3試合 山形  - 滋賀  C
  第 4試合 青森  - 大阪  D
  第 5試合 群馬  - 鳥取  E
  第 6試合 山梨  - 兵庫  F
  第 7試合 福井  - 高知  G

 <下記2回戦Dブロック>
  第 8試合 北海道 - 和歌山 H
  第 9試合 岩手  - 長崎  I
  第10試合 秋田  - 山口  J
  第11試合 愛知  - 徳島  K
  第12試合 三重  - 香川  L
  第13試合 埼玉  - 広島  M
  第14試合 茨城  - 鹿児島 N
  第15試合 石川  - 島根  O
 
■2回戦
 <Aブロック>
  第 1試合 福島  - 奈良
  第 2試合 岐阜  - 岡山
  第 3試合 宮城  - 福岡
  第 4試合 栃木  - 大分

 <Bブロック>
  第 5試合 新潟  - 宮崎
  第 6試合 静岡  - 沖縄
  第 7試合 千葉  - 愛媛
  第 8試合 富山  - 京都

 <Cブロック>
  第 9試合 長野  - A勝者
  第10試合 B勝者 - C勝者
  第11試合 D勝者 - E勝者
  第12試合 F勝者 - G勝者

 <Dブロック>
  第13試合 H勝者 - I勝者
  第14試合 J勝者 - K勝者
  第15試合 L勝者 - M勝者
  第16試合 N勝者 - O勝者

さあ、解説のオムさんことオムラカツヤさん、いかがでしょうか?
ブロック別に見てみましょう……。

先ずはAブロック

結構地味なチームが集まったカンジですねえ。
ただ、一見、派手さはないものの、実は実力者かもしれませんから。
ここはどうでしょう。福岡あたりが強そうですねえ。
宮城、福島は震災のハンデをこえて力を出し切ってもらいたいところです。

続いてBブロック

ここは千葉、京都あたりが目につきますね。
米所の新潟がどのくらいの実力なのか、楽しみですね。

さてCブロック

ここは強豪が集まったカンジですね。
一番の激戦区ですね。
東の東京、神奈川。西の大阪、兵庫。それと、日本一美味しいオムライスをメニューに持つ「ゆず庵」擁する高知も侮れない。
どこが勝ち上がってもおかしくないです。

最後にDブロック

そうですね。ここは愛知、埼玉あたりですかね。
長崎はエース松翁軒がいないのが痛いですね……。

そんな中、ベスト4を予想してみてください。

う~ん、難しいですが、層の厚いチームが勝ち上がると思いますので。
Aブロックは福岡
Bブロックは京都
Cブロックは東京
Dブロックは愛知
としておきましょう。

はい、オムさん、ありがとうございました。

では、大会をお楽しみに!
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2013
03.18

番外編:突っ走れ!

Category: 競馬関連
 自分の人生をどうとらえ、日々をどう生きて行くか。

 周りに何と言われても、自分を貫き通し明日に向かって突っ走る。そんなことを教えてくれた馬がいる。

 その馬の名は、ツインターボ。

 馬は臆病な生き物である。
 馬の近くに行ったことがある方ならおわかりだと思うが、近づくと、目と一緒に耳がその方向を向く。

“なになに、どうするつもり……”

 じっと見つめて警戒。いきなり後ろに回ろうものなら、”バシッ”って蹴られる。

 嬉しいときは尾や頭を振る。とてもわかりやすい。
 馬が“大丈夫、安心できる”って判断した人には、馬の方から頭をすり寄せてくる。そして、そっと首筋をなでると、気持ちよさそうに黒目勝ちのつぶらな瞳を細める。

 競走馬とて同じ。
 競馬は馬が集団となって走って行く競技なのだが、この ”集団” が馬にとっては怖かったりする。
 もちろん、人間と同じように馬にも性格の違いはある。だから、怖がりの度合いも違う。

 1991年3月2日にデビューしたツインターボは、とてつもなく怖がりの馬だった。
 410キロ~420キロ程度の小さな体で、馬群の中に入ってしまっては体がすくんでとてもレースにならない。

 極度に怖がりで場群に入れない馬。
 さて、どんな作戦をとったらよいか……?

 結論、スタートから先頭に立って逃げること。
 先頭で走っていれば、馬群につつまれることはない。

 そもそも”ツインターボ”というのは、クルマのエンジンに”ターボチャージャー”を2つ着けたものを言う。排気量以上のパワーを出すために高性能車に装着され、背中を座席に押し付けられるような加速を味わうことができる。飛行機が離陸する時、滑走路を走り出して、ノロノロ走行から”キーン”という音とともに一気に加速するときを思い浮かべてもらいたい。それと同じだ。

 名は体を表すとは、まさにこの馬のためにあるようなものだ。ターボエンジンの加速で先頭に立ち、そのままゴールする。
 そんな作戦でむかえたデビュー戦。3番人気に支持され、2着に3馬身差をつけて勝利!2戦目も、7番人気ながらこれまた2着に11/2馬身差で先頭をきってゴール!
 逃げる作戦は、見事大成功。その後、重賞のラジオたんぱ賞も手に入れ、順調に上位へと進んで行く。

 しかし、勝ち上がるに連れ、彼の中で何かが弾けたのだろう。

 スタートしたら猛スピードで突っ走る。
 とにかく、全速力で逃げて逃げて逃げまくる。

 逃げ方が尋常ではなくなったのだ。
 まるで何かにとりつかれたような、狂気の走り。

 通常、レースには、マラソンに代表されるようにペースがある。
 ハイペース。スローペース。それにあわせて駆け引きを行い、先頭でゴールすることを考える。

 しかし、彼にとってはそんなのは関係ない。

 10馬身、15馬身、20馬身。……。
 どんどん他を引き離して行く。

 そして、その結末はいつも決まっていた。
 エネルギーはレース半ばで切れ、次々と皆に抜かれた挙句、疲れ果てた姿でゴールイン。

 1番人気に支持された福島民友カップでは、なんとシンガリ負け。つまり最下位だった。

 最初は笑いの種でしかなかったが、そんな走りはやがて多くのファンを引きつけることになる。

「いけー、ツインターボ!」

 人は、社会の枠を逸脱しては生きていかれない。
 世の中の常識や良識の中で、周りに気を遣いながら抑制して生きている自分がいる。
 自分が何者なんだかわからない中、時間は過ぎ、悪戯に年を重ねる。

 そんな、多くの人が感じていながら表に出すことができない閉塞した社会のストレスを、彼の走りは解消してくれた。

 後先考えずに突き進むツインターボ。もはや勝ち負けなどは関係ない。

 1994年12月25日。競馬ファンが年末の夢を買う、競馬の祭典有馬記念。
 ファン投票で選出されたこのレースが、千両役者ツインターボのにとっての最後の花道だったと思う。
 1番人気は、時代の最強馬ナリタブライアン。もちろん、よほどのことがない限り、その勝ちは揺るがない。
 このままでは面白くも何ともないレース。そう、お祭りの味付けにはツインターボの大逃げが必要である。

 ゲートが開き、13頭立てのスタートが切られた!
 先頭に出ようとするナリタブライアン。
 決して許すまいと、期待通りにそれを追い抜くツインターボ。

 有馬記念は2500メートルの長距離戦である。力を蓄えるために、ただでさてペースは遅くなる。
 しかし、そんなことなどおかまいなしに、がむしゃらに走るツインターボ。見る見るナリタブライアン以下の後続を突き放して行く。

 集団が1コーナーを回る頃、1頭だけ、早くも2コーナーを回り向こう正面に差しかかる。
 その差は40メートルも、50メートルも……。

 どよめきと歓声がこだまする。

「いいぞー、ツインターボ!」
「そのまま行っちゃえー!!」

 やがて3コーナーに差しかかるころ、案の定、ツインターボのガソリンメーターはいつものようにエンプティ―を示した。
 ターボ逆噴射。
 あっという間に集団がツインターボを飲み込んで行く……。

 次の瞬間、集団は、ツインターボを置き去りにした。

 他の馬が次々とゴールを駆け抜けて行く中、1頭だけ歩くようにゴールを目指す。
 やがて大観衆の中を、やっとのことでゴールイン……。

 1着ナリタブライアン。タイム、2分32秒2。
 2着ヒシアマゾン。タイム、2分32秒7。1着との差は3馬身。
 間をおいて、最下位、ツインターボ。タイム、2分37秒2。前の馬、つまり12着の馬との差、大差。
大差とは、10馬身以上離されたことを示す、屈辱的な記録である。

 ファンとは、ときに冷徹で、そしてときに優しいものだ。
 最後まで走り切ったツインターボに、惜しみない拍手が贈られた。
「よくガンバったぞ!」

 だがこの走りで燃え尽きたのか、翌年になると、ツインターボはもうスタートダッシュもままならない状態になっていた。

 そして1995年5月の新潟大章典を最後に、彼は中央競馬を離れ山形県の上山競馬場へと移籍。しばらくして、ひっそりと引退した。

「さあ、4コーナーを回った。先頭はツインターボ。ターボ全開でぶっちぎりか!どの馬もついてこれません!これは速い!春の天皇賞馬のライスシャワーも、桜花賞馬のシスタートウショウも、ツインターボの影さえ踏めないのか!さあ、ツインターボ、今、1着でゴールイン!なんと2着のハシルショウグンに5馬身差の圧勝だあ!オールカマーを制したのはツインターボです!」

 これは、彼の最高のレースだと思う1993年オールカマーの、ボクの頭の中での勝手な実況の再現だ。
 とんでもなく美しいレースだった。

 人生、闇雲に突っ走っても、成功するか失敗するかはわからない。
 いや、失敗する確率のほうが高いかもしれない。

 でも、失敗を恐れていたら、決して先へは進めない。
 とにかく突っ走る。
 怖いから突っ走る、それでもいいじゃないか。

 後戻りはできない人生。後悔は不要。後ろなんて振り向かない。

 結果たとえ負けたとしても、悔いと余力を残さずに完全燃焼する。これぞ人生。

 さあ、心にツインターボを搭載して、エンジン全開で明日に向かって突っ走ろう!


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2013
03.14

番外編:祝福を君に

Category: 競馬関連
 1995年6月4日、曇り空につつまれた京都競馬場。大観衆が見守る中、第36回宝塚記念のゲートが開いた。17頭の選ばれし精鋭が、それぞれの期待を乗せて、淀のターフに飛び出して行く。

 3番人気に支持されたその馬は、気心の知れた名手的場均を背に後方集団を進む。菊花賞、2度の天皇賞・春の栄冠を勝ち取った得意の馬場。

 しかし、いつもの手応えがない……。
 的場がいくらゴーを出しても動こうとしない。

 やはり、1か月半前の天皇賞での、ステージチャンプとの激闘が尾を引いているのか……。

 第1コーナーで的場は、早くも「今日は無事に回ってこられれば」、そんな気持ちを抱いた。
 430キロあまりの、サラブレッドとしては小さな体。蓄積した疲れは簡単には抜けない。

 疲労度を見た陣営は、もともと秋まで休養させる方針であった。しかし陣営の思惑とは裏腹に、多くのファンの心を動かした走りが彼を宝塚記念のファン投票1位へと導いた。
 この年は阪神大震災が起きた年であり、開催場所は例年の阪神競馬場ではなく得意な京都。おまけに復興支援と命名されたレース。辞退してファンの期待を裏切るわけにはいかなかった。

 25戦、1着6回、2着5回、3着2回。
 それが彼の戦績だ。
 18頭中16番人気で2着に飛び込んだ日本ダービー。そして、皐月賞、日本ダービーを制した世代最強馬ミホノブルボンの3冠の夢を打ち砕いた菊花賞。フラフラになりながらも気力を振り絞って走る姿に、ファンは酔いしれた。

「この馬は、レースで勝った負けたをやたら気にする馬だった」と、当時の関係者は言う。
 レースで勝った直後の日は、厩舎の前を人が通るたびに馬房から首を出し"どんなもんだい"と自信満々な態度をとる。一方、惨敗後は、いじけて馬房の奥でしょんぼりとしている……。

「写真に撮られるのが大好きでねえ……」これは夏の休養先の牧場関係者の言葉だ。
 夏の放牧シーズンで大東牧場に放牧されていた時、ファンがカメラを向けるとその前でとまりポーズをとる。
「この馬の写真は、ほかの馬よりも綺麗に写っているものが多いよね」牧場関係者は言葉を続ける。
 
 そんな馬だから。

 そんな、人の心がわかるような馬だから ――。

 やがてレースは進み、淀の坂へと差しかかる。

 背中の的場には、生き残るためには勝つことしかない競走馬の宿命を教え込んでもらっていた。
 日本ダービーでマヤノペトリュースとの2着争いをハナ差でかわした闘争心。
 天皇賞で、ステージチャンプを15センチ差でおさえ2度目の栄光を手に入れた荒ぶる魂。
 目を覚まさないわけがない。

 その馬の中で、何かがはじけた。

 手綱を握る的場の意思とは裏腹に、余力があろうはずのない体が、みるみる加速していく。

 あるいはそれは、ずっとコンビを組んで共に戦ってきた的場に応えるものだったのかもしれない。

"さあ行くよ的場さん、見てて"

 そして、運命の3コーナーへと吸い込まれていく。

 夢を託した歓声が場内にこだまする。

 と、その瞬間(とき)、

 時間が、止まった――。

 スローモーションのように、馬体が前のめりに崩れ落ちて行く。
 と同時に、振り落とされた的場が地面にたたきつけられる。

 何が起きたのかは誰の目にも明らかだった。

 左前脚第1指関節開放脱臼。

 予後不良。
 手の施しようがない。

 脱臼の下の部分の骨は粉々に砕け散っていたという。
 自分の体を支えられなくなった馬は、残念ながら生きて行くことができない。

 その場での安楽死処分。

 それが、かつて栄光を手に入れた舞台で立ち上がることもできずにのたうち回る彼を楽にしてあげる唯一の方法だった。

「死んだはずがない。もう一度見てくる」
 周りの人の制止を振り切り、的場は全身を強打した重症の体で何度も冷たくなった馬の元に行こうとしたという。

 的場は現役時代、大きなレースで勝った時のガッツポーズも、勝った後もウイニングランもしようとはしない男だった。
 全力で走った後の馬がかわいそうだから……。

 そんな的場とコンビを組めて、そんな的場に最期を看取られて、彼も幸せだったのかもしれない。

“的場さんゴメンなさい。オレ、ちょっと失敗しちゃったよ……。明日は馬房の奥でひっそりとしてようかな……”

 はるか遠くから、そんな声が聞こえてくるようだ。

 ライスシャワー 。

「結婚式のライスシャワーのようにこの馬にふれる人々に幸福が訪れるように」との思でつけられたその名前。

 小さな体に宿る誰にも負けない大きな力で、夢と勇気、そして感動を与えてくれた君の雄姿を、ボクは決して忘れない。

 君は最後の最後まで、堂々と走り抜いた。
 あの日、みんなの心の中で、間違いなく君はゴール版の前を真っ先に駆け抜けた。

 カメラの前でポースをとる君には笑顔がお似合いだ。

 だから、あえて言う。

 おめでとう、ライスシャワー。

 祝福を君に。

ライスシャワー
 写真:Wikipediaより転載
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2013
03.08

Pepita Lion

北藤沢に佇む文化的癒しの空間


DSC_0054_convert_20130308041436.jpg

この日は木曜日。
週始めに、なにげにネットでオムライス検索をしていたら、なんと、地元湘南台に美味しい店があるという情報が出ているではないか!
これは行くしかない!
では休みの日に行こう。そう考えていたのだが、お腹が許してくれなかった。
休みまで待つ? なんだそれ。ふざけるなよ。
まあ、自分のお腹とケンカしても仕方ないし、て言うかしたくもないし、て言うかできないし、ここはお腹に素直に従って食べに行こう!

ということで、会社の帰りに湘南台駅東口にあるPepita Lion(ペピタライオン)にGO。

ただし、ひとつだけ気がかりなことがある。
何かって?

それは花粉症。
この日は暖かい上に風が強く、街を歩いていて、「おい、今日はオレ達の好き勝手にさせてもらうぜ」って傍若無人に暴れまわる花粉軍団の姿を強く感じる……。
となると、「なにぬねの」が言えなくなるくらい鼻が詰まる可能性があるわけで、そうしたら味なんてわからない!

“どうか鼻が詰まりませんように”
そう祈りながら駅から店への道を進む。

やがて店に到着。どうやら春の神様が花粉軍団を押さえ込んでくれた。
OK、鼻は大丈夫だ。

大きな窓に囲まれた店から溢れる暖かい光が街路を照らす。
う~ん、間違いなくひかれますね、この光……。
外観もシンプルなお洒落を演出していて好感がもてる。

数人の女性客と入れ違いに店内に入る。
客はだれもいない。落ち着いて食べられそうだ。

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早速メニューを拝見。
えーと、オムライスは・・・。

わーお、いっぱいある!
トマトソース880円。
デミグラスソース880円。
チキントマトソース950円
チキンクリームソース950円。
きのこクリームソース950円
きのこデミグラスソース950円。
それに、各々プラス100円でとろーりチーズ入にすることもできる。

さてどれにしようか?

注文を取りに来た店員さんにおすすめを聞くと、デミグラスソースとの応え。
ではと、ここはオーソドックスにデミグラスソースのオムライスを注文。

しばらくしてお待ちかねのオムライスが登場した。

すごい湯気。
ほっかほっかのオムライス。

ボリュームはちょっと少ないかな。

DSC_0040_convert_20130308041342.jpg

DSC_0042_convert_20130308041722.jpg

さて味の方は……。
結構あっさり。
もしや花粉が……。
いや違う。ソースもご飯もあっさりしている。
でもいくら食べても飽きが来ない味だし、こくがある。
それに、できたてのホカホカ感とご飯のホクホク感。
加えてふわふわ卵がいい塩梅にソースとマッチする。

う~ん、他のも食べてみたいな……。
でも今日はガマン。また今度にしよう。

Pepita Lionは湘南台文化センターのすぐ近くにある。新しい街の湘南台にあって、喫茶店からスタートして29年営業しているらしい。
今日は平日の夕飯時に訪れたけれど、付近を走る467号線の向こうには公園もあるし、休日の散歩ついでや文化センターで遊んだ帰りなどにゆったりとした時間を過ごすのもよいかもしれない。

パスタをはじめ、他の料理もかなり美味しそうだ。
地元のこんな近いところにいい空間を見つけられて、ホントよかった!
それに、西口に姉妹店のニューオリンズもある。こちらも興味津津。
今後ともよろしくお願いしま~す!

2013年3月7日

■ 店舗情報 ■
・住所:神奈川県藤沢市湘南台1-5-10
・電話:0466-43-0878
・営業時間:[月~土]11:00~22:00 [日]11:00~21:30
・定休日:無休

Pepita Lion 食べログ情報 

ペピタライオンパスタ / 湘南台駅

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NOZOMI

 湘南台駅からバスで20分ほどの緑豊かな大学の入口に来ると、背筋をピンとさせ、希美は大きくひとつ伸びをした。
 
 新学期が始まる前なので、まだ学生の姿はなく、辺りは閑散としている。それでも気持ちが高揚している希美には、楽しげにキャンパスに入っていく大勢の学生たちの姿がはっきりと見える。

 みんなとはちょっと年が離れているけど、いいお姉さんになればいいんだもんね……。
「みんさ~ん、来週からよろしくね!」
 誰もいない門に向って、大きな声で挨拶をする。
“こちらこそ!”
 春を待ちわびた目の前に広がる森の木々が、元気に応えてくれる。

 ふと空を見上げる。 
 青く突き抜ける空を、鳶が、悠然と旋回している。

 さあ、いよいよ始まるわ、新しい生活が……。夢の、第一歩が……。

 4年ほど前――。

 希美を、突然異変が襲った。
 激しいめまいと吐き気、それに頭痛がとれない。

 もともと頭痛もちの希美は、最初は「またいつものことか」程度に受け止めていたのだが、いつまでたっても症状が変わらない。
 おかしい……。
 どういうこと?
 私、いったいどうしたの?

 脳腫瘍――、それが希美に伝えらえた診断結果だった。

 希美なんて皮肉な名前よね……。
“世の中の不正を許したくないの”
 そんな強い思いから弁護士の夢をめざして大学の法学部に通っていた希美から、正義感あふれる美しい希望が消えて行く。

 おまけに高校生の時に、姉妹のように仲がよかった母親を病気で亡くした。
 何で私だけこんなにつらい思いをしないといけないの……。
 何で、何で私だけ……。

 大学の正門の横に腰かけた希美は、カバンから小さなスケッチブックを取り出した。
 しばらくの間じっと辺りの風景を見つめ、それをしっかりと目に焼き付ける。
 やがて希美は、鉛筆でしなやかな線を描きはじめた。
 一本、また一本。
 自分の中にある心のフィルターを通し、感じたままを描く。
 絵を描くのは昔から好きだった。
 写実的な絵を描いていた希美の画風が変わったのは、腫瘍の手術後からだ。
 目に焼き付けた、瞬間の景色を、心象風景に昇華させて描いていく。私を表現したい。みんなを表現したい。思い切り。今この瞬間を生きて在る、私を、みんなを……。

 その日は、今でもはっきりと思い出せるくらい夕焼けがきれいな日だった。
「あれ? のぞみ……、ちゃん?」
 手術の手続きを終え、病室の窓からぼんやりと夕景色を眺める希美の耳に、聞き覚えのある女性の透き通った声が響いた。
「あー、岩崎さん!」
「やっぱり希美ちゃんだったのね!」

 思いがけないところでの3年ぶりの再会だった。
 高校の帰りに、毎日、母親のお見舞いに病室に来ては明るく楽しげに学校での出来事を母親に話す希美。岩崎多恵は、そのときの担当看護師だった。

 絶望に押しつぶされそうな小さな体をふるい立たせ、気丈に母親を励まし続けた希美。そんな希美を、多恵は励まし続けてくれた。

「岩崎さん、この病院に移ってたんですか?」
「そう、3か月前にここに来たの。びっくりよね、こんな偶然があるなんて……」

 偶然なのか、それとも必然なのか、人生にはときどき何かに操られているかのような不思議な出来事がある。

「私の担当看護師が岩崎さんで、ホントよかった。なんだか私、ついてるわ」
 手術の不安と闘う希美の心に、多恵は、安心をたたえた柔らかい風を送り込んでくれた。
「大丈夫よ希美ちゃん。何の心配もないわよ。あんなにお母さんのことを思って頑張ってた希美ちゃんのことを、神様が見放すはずないわ。それに、天国のお母さんが力をくれる」

 多恵の言葉の通り、無事、手術は終わった。

 病室で術後の養生をする希美に、多恵はいろいろな話を聞かせてくれた。
「希美ちゃんが美しい希望なら、私は恵みが多いようにってつけられた名前でしょ。う~ん、でも、そんなに多くの恵みはないかなあ……。あ、だけどね、この仕事をしていて思ったの。もしかして、多くの患者さんと話ができて、その人の人生に関わることができて、それこそ天が与えてくれた恵みなのかなって。心や体に傷を負っていても、一所懸命に今を生きようとしている患者さんに勇気づけられることも沢山あるわ。希美ちゃんは美しい希望を持ち続けて生きて行くのよ。自分の身に起きたことを恨んだりはしないで、今日を精一杯生きるの。お母さんもそれを望んでいるし、遠くて近いところでずっと見守っていてくれているのよ」

 改めてまじまじと見ると、岩崎さんって、本当に綺麗な目をしている。
 こんなに綺麗な目をした人、見たことがない……。

 母親になりかわるように、優しい口調で、まるでオムライスのたまごのようにふんわりと包み込んでくれる多恵に、いつしか大きく引き込まれて行く自分がいた。

 人の人生に関わる。
 弁護士を目指していた希美にとっては、心から共感できることだった。

 患者さんの人生に関わる……。それこそが恵み……。
 多恵の言葉を反芻し、希美は自分の気持ちを落ち着いて振り返った。

 私が目指してきたのは、もしかしたら机上の世界のことばかりだったのかもしれない。
 法律を勉強し、それを武器に不正のない世の中を作る。それはそれで立派なことだとは自分でも思う。だけど、本当に喜ばれることって何だろう。人と人とのふれあいって何だろう……。

 そして、

 今を生きるって何だろう……。
 生きていること。私も、みんなも……。
 今、この瞬間を生きていること。

 生きて、在ること--。

「退院おめでとう!」
 多恵はお祝いに"希"の字を型どったネックレスをプレゼントしてくれた。
「ありがとうございます! 私、岩崎さんみたいになりたいって、本気で思います!」
「ありがとう。なんか照れるわねえ……。今度は外で紅茶でも飲みながら話ましょ」

 スケッチは、間もなく完成をむかえようとしている。

 新緑のキャンパスを颯爽と歩く学生たち。
 どこまでも広がる空を自由に飛びまわる鳥たち。
 その中を駆け巡る、ちょっといたずら好きのそよ風。

 そう希美、このキャンパスで明るく、前向きに、今日を、今を生きるの。
 そして夢をかなえるの。
 このスケッチは、あなたが今を生きている証だから。
 スケッチは、希美にそんなことを話しかけてくれる。

 この辺だと、夜は星空もきれいなのかなあ……。
 そういえば、最近、星空なんて全然みてないや……。

 そうだ、帰りに湘南台文化センターのプラネタリウムに寄って帰ろう!昔、家族でよく遊んだもんなあ……。
 それと、Pepita Lionでオムライスを食べよう!あそこのオムライス、お母さん、大好きだったよなあ……。

 弁護士改め看護師の夢に向かって歩き始めた、みんなよりちょっと年上の看護医療学部1年生、沖田希美。

 脳腫瘍がいつ再発するかはわからない。今でも、夜になるとひどい頭痛に悩まされることがある。再発したら、最悪失明するかもしれない。
 でも、それも自分。自分を支えてくれる、かわいい自分の体。
 この目にしっかりと、今を焼き付けるんだ。

 最後の一筆を描き終わると、希美は、スケッチに2Bの鉛筆で力強くサインを書き込んだ。

 NOZOMI

 今、一枚のスケッチに、永遠の命が吹き込まれた――。

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2013
03.06

Indah Bali

横浜でバリ島気分でオムライス


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さて、どこに行こうかな。
うん、オムライスの写真を見て、「お、美味そう!」って直感で反応したところにしよう。
そんなルーレット気分でネットを検索。

検索すればするほど次から次へと現れるオムライス。
すげー、改めてオムライスの多さにびっくり。
いくら行ってもきりがないよ~、って、もぐらたたきじゃないんだから……。

ということで、いくつかピックアップしたうちのひとつに決めた。
今回は、羽衣町3丁目の交差点のすぐそばにあるIndah Bali(インダバリ)を訪問。
駅からの距離で言うと、関内駅と伊勢佐木長者町駅から、ともに5分くらいかな。

Indah Baliは、パセラ横浜 関内店の1階にある。
1階がインドネシア雑貨売り場と今回の目的の、カフェIndah Bali。
2階がレストラン。
3~4階が貸切パーティー会場。
5~6階がカラオケ。
7階がビリヤード&ダーツバー。

入口を入ると総合案内があり、そこにいらっしゃるきれいなお姉さまに「お好きな席にどうぞ」と誘導され、窓際の席を選択。

さてさて、メニューを……。

ん? あれ? オムライスは……?

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「すみません、オムライスありますか?」
「あ、大丈夫ですよ。メニューにはないんですけど」
どうやら、食事を作っているのは2階のレストランで、レストランの営業は17:00から。
逆に1階の喫茶は17:00までで、オムライスはメニューにはないけど食べられるらしい。
う~ん、ネット検索で知っててよかった。

土曜の昼下がりだけど、店内はすいている。
席もゆったりとしていて、全体的に開放的な作りで落ち着ける。
水槽の熱帯魚も癒してくれるし、この店はとてもいい雰囲気かもしれない……。

しばらくして、もうひとりのきれいなお姉さまがオムライスを運んできてくれた。
うんうん、この店はとてもとてもとてもいい雰囲気かもしれない。

さて、オムライス。
とろとろ玉子のデミグラスオムライス830円。

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カレーのように、ご飯とソースが分かれている。これはこれで美しい。
それと、チキンライスの中には、緑、赤、黄色のピーマンがまぶされていて、これもトロピカルっぽくてきれい。

味も美味しい。
しゃきしゃきのご飯がチキンとマッチしていい感じ。卵がちょっと少ないかなあ……。
ボリュームは普通だけど、チキンの歯ごたえが満腹感を与えてくれる。

Indah Baliがあるパセラリゾーツは、「癒し」と「寛ぎ」をテーマとしたエンターテイメント施設として銀座、六本木、赤坂、渋谷など、都内を中心に展開している。
横浜はここの関内店と、もうひとつ横浜駅西口にある。

いろいろと遊べそうだし、休日、伊勢佐木町での買い物の帰りなどに「とっても近場のバリ島気分」でゆったりと過ごすのも楽しいかもしれない。

トゥリマ カスィ バニャッ ( どうもありがとう )!

2013年2月16日

■ 店舗情報 ■
・住所:神奈川県横浜市中区末広町3-95 パセラリゾーツ
・電話:0120-911-753
・営業時間:11:30~翌朝8:00
・定休日:なし

Indah Bali 食べログ情報 

Indah Bali 横浜関内店タイ料理 / 伊勢佐木長者町駅関内駅日ノ出町駅


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白球は海を超えて

「バリってどこだっけ?」
 パセラリゾーツ関内の入口を抜けると、バリの雑貨が並ぶ一角を見ながら変声期をむかえたクオンがつぶやいた。
「バリはね、インドネシアだよ」
 息子の健司と、息子の少年野球仲間の翔とクオンの3人の少年を引き連れた正夫が呼応する。
「首都のジャカルタがあるジャワ島の隣りにある小さな島。クオンの故郷のベトナムよりもっと南にあるんだ」
「へえー、めちゃくちゃ暑そー」そう言う健司に
「甲子園の方が暑いよ」翔が真顔で反応する。
「ははは、そうだよな。身も心も甲子園はアツイところだ。3人で行くんだもんな、甲子園!」
 正夫は3人の肩を抱き寄せ、大声で笑った。

「はじめまして、グエン ティン クオンです。ベトナム人です。でも、ベトナム語は話せません」
 3年前、クオンは正夫がコーチとして携わる地域の少年野球チームに入団した。正夫が勤務する町工場の同僚の息子で、彼の類希なるバネの効いた走りに一目惚れした正夫が入団を奨めたのだった。

 きっとこの子は、ものすごい選手になる……。
 ただし、致命傷になりかねない弱点を克服できれば……。

 永年少年野球に携わってきた直感がささやく。

 正夫の読み通り、クオンはすぐに頭角を現した。
 もともと器用な上に、もの覚えも早い。小学6年にして175センチを超えたしなやかな体から繰り出される速球は、とても小学生では打てるものではない。
 硬式少年野球チームからの誘いもかかり、中学からは地元神奈川の強豪、浜南ボーイズへの入団も決まっている。
 いや、正確には、決まっていたと言うべきかもしれない。

 順調に育ってきている、そう思っていた。
 この子なら、全国制覇も夢ではない、そう確信していた。

 が、その矢先、2ヶ月ほど前……。

 恐れていたことが、現実になった。

 全日本学童軟式野球大会神奈川県予選の決勝戦。
 クオンの速球が冴えまくり、3-0で最終回をむかえた。ここまで内野安打2本。ほぼ完ぺきに近い。
「よし、クオン、意識しないでいつも通りに行こう」
 キャッチャーの健司が声をかける。
「うん、大丈夫」
 そう頷くクオンの表情(かお)は、自信に満ちあふれている。

 最初のバッターは、簡単に三振に打ち取った。
 あとふたり。OK、もう間違いない!
 みんながそう思った。

 インコース高めのストレート。
 健司のサインに頷き、クオンはゆっくりと振りかぶる。
 土を蹴った長い脚が高々と上がり、獲物をしとめる目が、ぶれることなくまっすぐに健司の構えるミットを見据える。
 そして、全身の力をためたムチのような腕が、大きくしなる。

 と、そのとき……。

「きやがれ、ベトナム野郎!」
 バッターが、突然、大きな雄叫びをあげた。

 流れるようなフォームを演出するクオンの体が、一瞬で凍りつく。

 ベトナム野郎……。
 ベトナム野郎……。

 トラウマが……。

 消し去ったはずのトラウマが、眠りから覚めた野獣のごとく牙をむく……。

「来るんじゃねーよ、ベトナム野郎。難民は帰れ! 汚いのがうつるだろ」
 幼児の頃は、自分が日本人ではないことなんかまったく気にならなかったクオンだが、大きくなるにつれ、心無い言葉を浴びせられることが多くなった。
 昔は仲よく遊んでいた友達も、いつのまにか離れて行く。
 なぜ?
 ボクのどこがいけないの?
 なんでボクは日本人じゃないの?
 ベトナム人ならベトナムに引っ越そうよ。
 親を問い詰めもした。

 ベトナム難民の血を引く両親は、そんなクオンに、
「私たちはここで生きるしかないの、強くなって、クオン」
 ただただ同じ言葉を繰り返すしかすべがなかった。

 クオン ―― 日本語にすると”強い”を意味する。
「強い男に」との思いでつけられた名前だ。

 しかし、その名前とは裏腹に、もともと引っ込み思案な性格がクオンの弱さを増長させて行く。
 日々、ひとりでぽつんと過ごすクオン。
 このままでは本当にまずいことになる。そう考えた両親は、仕事も変え、ベトナム人が多く住む横浜の一角に移り住むことを決断した。
 正夫から野球の誘いがかかったのはそんなときだった。

 チームワークを教え込まれたメンバーは、何の違和感もなくクオンを温かく受け入れてくれた。
 これには、最初は入団をためらっていたクオンも驚いた。

 もう、トラウマも甦ることはないだろう。
 この日まで、この日のこの瞬間まで、みんながそう信じていた……。

 きやがれ、ベトナム野郎!

 クオンの投じたボールは、バッターへと向かって飛んで行く。
 あっ、と思った瞬間、ボールはバッターの脇腹に当たった。
「デッドボール!」
 審判が試合を止める。
「ううう……」
 苦しそうに顔をしかめるバッター。
 クオンの顔から、見る見る血の気が引いていく。

「くそー、わざと当てやがったな。きたねーぞ、ベトナム野郎」
 バッターボックスでうずくまるしかめっ面が、クオンをにらむ。

 違う、わざとじゃない。
 ベトナム野郎……。
 きたない……。

「すみません」とバッターにお辞儀をした健司が、あわててクオンの元に駆け寄ってくるのがぼんやりと見える。

 わざとじゃない。
 ベトナム野郎……。

「クオン、落ち着け。大丈夫だ。点差もある」
 健司の言葉が、そよ風のように耳を通り抜けて行く。
「大丈夫、クオン、自分を信じろ!」

 それから後のことを、クオンはよく覚えていない。
 気が付いたら、スコア―ボードの7回表に刻まれた”8”の文字を、ベンチの椅子でぼんやりと眺める自分がいた。

 そして、それ以来、クオンはボールを投げられなくなった。

「イップスですね」
 医者の人工的な声が平然と残酷な言葉を発した。
 イップスとは、精神的な原因で思うような動作ができなくなる運動障害だ。
 よりによって……。
 恐れていたクオンの精神的な弱さが、最悪の形になって表れた……。

「2階のレストランは17時からなんだ。1階で食べられるので、ここで食べよう」
 正夫は子供たちをインダバリのテーブル席に着くように促した。
「さあ、思い切り大きな声で応援できるように、美味しいオムライスを食べてそれから横浜スタジアムに行こう!」
「え、ここでもオムライス食べられるの?」
 オムライスに目がないクオンの目が、真ん丸になった。
「インドネシアの食べ物しかないのかと思ってた!」
「びっくりだろ。ここではいろいろな国の料理が食べられるんだ。ベトナム料理もあるんだぞ。日本の料理もベトナムの料理も一緒に食べられる。日本人だろうがベトナム人だろうが一緒だ。命あるひとりの人間なんだ」
 正夫は総合案内と給仕を兼ねる女性を呼び、オムライスを4つ注文した。

 店内の水槽では、熱帯魚が悠然と泳いでいる。
 切り出すタイミングは今かな……。
 その姿をながめながら、正夫は優しくクオンに話しかけた。

「なあクオン、もう一度チャレンジしてみないか、野球?」
「やろうよ、クオン」
「大丈夫だよ。お前はすげーんだから……」
 事前の打ち合わせ通りに、健司と翔が追従する。

 これから多感な時期を迎える少年には、辛いこともきっと沢山出てくるだろう。でもそれは、何の因果か、クオンが神様に与えられた試練だ。
 それに、そういった辛い経験をすればするほど、大きく成長する。
 逆に、ここで逃げたらお終いだ。
 早いうちに障害にぶつかったのも、前向きに捉えれば良かったのかもしれない。
 持って生まれた才能を生かすも殺すも、まだこれからだ。
 両親以外でこの子を成長させてあげられるのは自分しかいない。
 ぼんやりと窓の外に目をやるクオンを見ながら、正夫はそんなことを思っていた。

「ボクさあ、一度ベトナムに行ってみたいなあ……」
 クオンがぽつりとつぶやいた。
「ベトナム人なのに、ベトナム語も話せないし、ベトナムに行ったこともない。でも、みんなはぼくのことをベトナム人って目でしか見ない。だから一度、ベトナムに行ってみたい。そうしたら、何かが変わるような気がする……」

「そうだよな……。ねえ、みんなで行ってみようよ」
 健司が同意を促す。
「オレも行ってみたいな。クオンの故郷を見てみたい。ベトナムでも野球やってるのかなあ?」
 うきうきした表情を浮かべた翔が尋ねる。
「うん、正式な団体はないけど、日本人もベトナムに行って普及させているようだよ」
「え、そうなの?」
 クオンの目が輝く。
「クオン、ベトナムに行ってみよう。大勢のベトナム人にお前の速球を見せてあげよう! 君と翔のお父さんお母さんには話をしてみるよ」
 ここぞとばかりに、正夫が畳み掛ける。

「おまたせいたしました」
 やがて出来たてのオムライスが到着した。
「わー、美味しそう!」
「すげー、なんかソースとご飯が分かれててカレーみたい!」
 子供たちがうれしそうにはしゃぐ。

 よし、行ける!正夫の直感がささやく。

「みんなで誓った約束を実現させようじゃないか。甲子園に行ってプロになる。な!」
「もちろん!」
「その前にベトナムだよね」
「いや、その前に今日の横浜DeNA VS 巨人だよ」
「そりゃそうだ」
「なんかすごく美味しいんだけど」
「お前のお母さんのオムライスの次くらいかな……」
「やっぱ、オムライスを食べると元気が出るなあ!」

 笑顔を取り戻したおだやかな午後の時間が、ゆっくりと過ぎて行く。

「ボク、明日からまた練習するよ。で、ベトナムでみんなにボクのボールを見せるんだ。うん、今なら投げられるような気がする……」
「久しぶりなんだから、最初から飛ばすなよ!」

 野球に国境はない。

 差別もない。

 白球は世界をつなぐ共通言語だ。

 みんなの心の中に、夢を乗せたけがれなき同じひとつの白球が、高々と舞いあがった――。

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