シゴノセカイ - 2013.07.25 Thu
まもなく時計の針が重なり日付が変わろうとしている。
玄関のドアを開け、熱帯夜なのに寒々しい部屋に明かりを灯すと、ミエは、どかっとソファーに座りこんだ。
"まったく、あのオバタリアンたち、いったい私に何のうらみがあるっていうの……"
"どうせ冷やかしで買いもしないんだから、文句たらたら言わないでよね。ほんと、とさかにくるわ"
都会暮らしに恋い焦がれ、念願のハウスマヌカンになったものの、イメージと現実の世界のギャップがミエを悩ませる。
しかも、隣んちから聞こえてくるいちゃつく声。
思わず耳がダンボになってしまう。
"あーあ、うらやまC。こんなときに優しく包み込んでくれるいかしたダーリンがいたらなあ……"
"シブカジ系のペアルックでナウいチョッキを着て、バッシュウもおそろにして、アベックで遊園地とかに行ってエンジョイしたいな……"
"そしたら、疲れもふっとんで、ルンルン気分だろうなあ"
ミエの妄想はバリバリに膨らんで行く。
"やっぱ彼氏はちょっとトッぽくて強いチーマーかな……。それともジモティーのトレンディくんがいいかな……。ま、ネクラじゃなきゃいっか"
"マジで好きになっちゃったなんてコクって、でもお前、胸がナインだからな、なんてからかわれちゃったりして、えーちょっちタンマ!それは言いっこなしだよ!でもとっても胸キュン!ぶりっ子じゃないからね。もう、あなたのなすがママきゅっりがパパ。勇気出してコクるんだから断ったりしたらとんでもハップン歩いて10分だからね。ゆるしてチョンマゲなんて誤ったって、めんごなんて誤ったって、ぜってー許してあげないから"
"でも、最近、毎日が天中殺だしなあ……。しかも、わらひ、イマいスッチーのようにマブくないし、ドジでマヌケでのろまなカメだし……"
"それに、この前の合コンのときみたいにドッチらけなのはやだし……。一番右のやつ、何が、あ、オレ、君にゾッコンになりそう!なんちゃって、うそピョーンよ。となりの席のやつも、それはなるほどザワールド秋の祭典スペシャルですね!じゃないわよ"
"ん、もう、頭がピーマンになりそう……"
"今週は思いきりフィーバーしちゃおうかな……"
"……"
不思議な言葉たちを乗せたミエの夜が、ガタンゴトンと走るE電に揺られるように更けて行く。
"あー、しば漬け食べたい……。でも、もう寝よっと"
夜が明けたら花金がやってくる。
素敵な明日を夢見ながら、いつのまにやらバタンキューのミエであった。
● 夜霧のハウスマヌカン やや
玄関のドアを開け、熱帯夜なのに寒々しい部屋に明かりを灯すと、ミエは、どかっとソファーに座りこんだ。
"まったく、あのオバタリアンたち、いったい私に何のうらみがあるっていうの……"
"どうせ冷やかしで買いもしないんだから、文句たらたら言わないでよね。ほんと、とさかにくるわ"
都会暮らしに恋い焦がれ、念願のハウスマヌカンになったものの、イメージと現実の世界のギャップがミエを悩ませる。
しかも、隣んちから聞こえてくるいちゃつく声。
思わず耳がダンボになってしまう。
"あーあ、うらやまC。こんなときに優しく包み込んでくれるいかしたダーリンがいたらなあ……"
"シブカジ系のペアルックでナウいチョッキを着て、バッシュウもおそろにして、アベックで遊園地とかに行ってエンジョイしたいな……"
"そしたら、疲れもふっとんで、ルンルン気分だろうなあ"
ミエの妄想はバリバリに膨らんで行く。
"やっぱ彼氏はちょっとトッぽくて強いチーマーかな……。それともジモティーのトレンディくんがいいかな……。ま、ネクラじゃなきゃいっか"
"マジで好きになっちゃったなんてコクって、でもお前、胸がナインだからな、なんてからかわれちゃったりして、えーちょっちタンマ!それは言いっこなしだよ!でもとっても胸キュン!ぶりっ子じゃないからね。もう、あなたのなすがママきゅっりがパパ。勇気出してコクるんだから断ったりしたらとんでもハップン歩いて10分だからね。ゆるしてチョンマゲなんて誤ったって、めんごなんて誤ったって、ぜってー許してあげないから"
"でも、最近、毎日が天中殺だしなあ……。しかも、わらひ、イマいスッチーのようにマブくないし、ドジでマヌケでのろまなカメだし……"
"それに、この前の合コンのときみたいにドッチらけなのはやだし……。一番右のやつ、何が、あ、オレ、君にゾッコンになりそう!なんちゃって、うそピョーンよ。となりの席のやつも、それはなるほどザワールド秋の祭典スペシャルですね!じゃないわよ"
"ん、もう、頭がピーマンになりそう……"
"今週は思いきりフィーバーしちゃおうかな……"
"……"
不思議な言葉たちを乗せたミエの夜が、ガタンゴトンと走るE電に揺られるように更けて行く。
"あー、しば漬け食べたい……。でも、もう寝よっと"
夜が明けたら花金がやってくる。
素敵な明日を夢見ながら、いつのまにやらバタンキューのミエであった。
● 夜霧のハウスマヌカン やや