シゴノセカイ、再び…… - 2014.09.17 Wed
言葉は生き物。
時代とともにかわるし、方言や土地柄もある。
「一生懸命は誤りで一所懸命だ」と習ったけど、今では当たり前で一生懸命が使われる。
「好きではない」が「好きくない」になり、「いいのでは」は「いいんじゃね」になった。
そうそう、「〇〇じゃん!」(ボクは当たり前に使うけど)っていうのは横浜の方言って聞いたときは驚いた。
でも、「じゃん」ってどうやら横浜の方言ではないらしい。
「じゃん」と対になる標準語は「ではないか」。「ではないか」が話し言葉で変形したものなのだそう。
「では」→「じゃ」 (「それでは」が「それじゃ」となるように変わった)
「ない」→「ん」 (「やらない」が「やらん」、「行かない」が「行かん」となるように変わった)
「か」→脱落
あれ?
「やらない」が「やらん」、「行かない」が「行かん」って……
これ、関西じゃん!
関西とまで行かないものの、どうやら「じゃん」は神奈川より西から来たらしい。
1905年に山梨県で「じゃん」が使われていた記録があり、山梨県が発祥地とのこと。
1940年代の静岡での空襲の記録の中にも「じゃん」が出てくる。静岡県清水市が舞台の「ちびまる子ちゃん」の中でも「じゃん」が使われている。
要するに、山梨で生まれ、静岡で育ち、東海道を通って横浜に入ってきたのだ!
横浜では昭和初期から使われ始め、1960年代頃からだんだんと定着し1980年代に流行した。
横浜は、昭和の高度成長期に一気に大都市に発展し人口も激増。「じゃん」を使う人数も多かった。そのため方言として定着したと考えられるそうだ。
ちなみにここ最近は若者用語の「いいんじゃね」などの「〇〇じゃね」を日常のように耳にするけど、この「じゃね」って言うのは北関東発祥らしい。
「ない」が「ね」に変わるのは西日本ではなく、関東ならではの使い方。
「じゃん」と真逆のルートで北関東から東京に入り、横浜にも広がったそうだ。
へえ、やっぱルーツがあるんじゃん!
言葉って、面白いよね。。
では、以前掲載した「シゴノセカイ」を再び。
***************************************************************
シゴノセカイ
まもなく時計の針が重なり日付が変わろうとしている。
玄関のドアを開け、熱帯夜なのに寒々しい部屋に明かりを灯すと、ミエは、どかっとソファーに座りこんだ。
"まったく、あのオバタリアンたち、いったい私に何のうらみがあるっていうの……"
"どうせ冷やかしで買いもしないんだから、文句たらたら言わないでよね。ほんと、とさかにくるわ"
都会暮らしに恋い焦がれ、念願のハウスマヌカンになったものの、イメージと現実の世界のギャップがミエを悩ませる。
しかも、隣んちから聞こえてくるいちゃつく声。
思わず耳がダンボになってしまう。
"あーあ、うらやまC。こんなときに優しく包み込んでくれるいかしたダーリンがいたらなあ……"
"シブカジ系のペアルックでナウいチョッキを着て、バッシュウもおそろにして、アベックで遊園地とかに行ってエンジョイしたいな……"
"そしたら、疲れもふっとんで、ルンルン気分だろうなあ"
ミエの妄想はバリバリに膨らんで行く。
"やっぱ彼氏はちょっとトッぽくて強いチーマーかな……。それともジモティーのトレンディくんがいいかな……。ま、ネクラじゃなきゃいっか"
"マジで好きになっちゃったなんてコクって、でもお前、胸がナインだからな、なんてからかわれちゃったりして、えーちょっちタンマ!それは言いっこなしだよ!でもとっても胸キュン!ぶりっ子じゃないからね。もう、あなたのなすがママきゅっりがパパ。勇気出してコクるんだから断ったりしたらとんでもハップン歩いて10分だからね。ゆるしてチョンマゲなんて誤ったって、めんごなんて誤ったって、ぜってー許してあげないから"
"でも、最近、毎日が天中殺だしなあ……。しかも、わらひ、イマいスッチーのようにマブくないし、ドジでマヌケでのろまなカメだし……"
"それに、この前の合コンのときみたいにドッチらけなのはやだし……。一番右のやつ、何が、あ、オレ、君にゾッコンになりそう!なんちゃって、うそピョーンよ。となりの席のやつも、それはなるほどザワールド秋の祭典スペシャルですね!じゃないわよ"
"ん、もう、頭がピーマンになりそう……"
"今週は思いきりフィーバーしちゃおうかな……"
"……"
不思議な言葉たちを乗せたミエの夜が、ガタンゴトンと走るE電に揺られるように更けて行く。
"あー、しば漬け食べたい……。でも、もう寝よっと"
夜が明けたら花金がやってくる。
素敵な明日を夢見ながら、いつのまにやらバタンキューのミエであった。
● 夜霧のハウスマヌカン やや
時代とともにかわるし、方言や土地柄もある。
「一生懸命は誤りで一所懸命だ」と習ったけど、今では当たり前で一生懸命が使われる。
「好きではない」が「好きくない」になり、「いいのでは」は「いいんじゃね」になった。
そうそう、「〇〇じゃん!」(ボクは当たり前に使うけど)っていうのは横浜の方言って聞いたときは驚いた。
でも、「じゃん」ってどうやら横浜の方言ではないらしい。
「じゃん」と対になる標準語は「ではないか」。「ではないか」が話し言葉で変形したものなのだそう。
「では」→「じゃ」 (「それでは」が「それじゃ」となるように変わった)
「ない」→「ん」 (「やらない」が「やらん」、「行かない」が「行かん」となるように変わった)
「か」→脱落
あれ?
「やらない」が「やらん」、「行かない」が「行かん」って……
これ、関西じゃん!
関西とまで行かないものの、どうやら「じゃん」は神奈川より西から来たらしい。
1905年に山梨県で「じゃん」が使われていた記録があり、山梨県が発祥地とのこと。
1940年代の静岡での空襲の記録の中にも「じゃん」が出てくる。静岡県清水市が舞台の「ちびまる子ちゃん」の中でも「じゃん」が使われている。
要するに、山梨で生まれ、静岡で育ち、東海道を通って横浜に入ってきたのだ!
横浜では昭和初期から使われ始め、1960年代頃からだんだんと定着し1980年代に流行した。
横浜は、昭和の高度成長期に一気に大都市に発展し人口も激増。「じゃん」を使う人数も多かった。そのため方言として定着したと考えられるそうだ。
ちなみにここ最近は若者用語の「いいんじゃね」などの「〇〇じゃね」を日常のように耳にするけど、この「じゃね」って言うのは北関東発祥らしい。
「ない」が「ね」に変わるのは西日本ではなく、関東ならではの使い方。
「じゃん」と真逆のルートで北関東から東京に入り、横浜にも広がったそうだ。
へえ、やっぱルーツがあるんじゃん!
言葉って、面白いよね。。
では、以前掲載した「シゴノセカイ」を再び。
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シゴノセカイ
まもなく時計の針が重なり日付が変わろうとしている。
玄関のドアを開け、熱帯夜なのに寒々しい部屋に明かりを灯すと、ミエは、どかっとソファーに座りこんだ。
"まったく、あのオバタリアンたち、いったい私に何のうらみがあるっていうの……"
"どうせ冷やかしで買いもしないんだから、文句たらたら言わないでよね。ほんと、とさかにくるわ"
都会暮らしに恋い焦がれ、念願のハウスマヌカンになったものの、イメージと現実の世界のギャップがミエを悩ませる。
しかも、隣んちから聞こえてくるいちゃつく声。
思わず耳がダンボになってしまう。
"あーあ、うらやまC。こんなときに優しく包み込んでくれるいかしたダーリンがいたらなあ……"
"シブカジ系のペアルックでナウいチョッキを着て、バッシュウもおそろにして、アベックで遊園地とかに行ってエンジョイしたいな……"
"そしたら、疲れもふっとんで、ルンルン気分だろうなあ"
ミエの妄想はバリバリに膨らんで行く。
"やっぱ彼氏はちょっとトッぽくて強いチーマーかな……。それともジモティーのトレンディくんがいいかな……。ま、ネクラじゃなきゃいっか"
"マジで好きになっちゃったなんてコクって、でもお前、胸がナインだからな、なんてからかわれちゃったりして、えーちょっちタンマ!それは言いっこなしだよ!でもとっても胸キュン!ぶりっ子じゃないからね。もう、あなたのなすがママきゅっりがパパ。勇気出してコクるんだから断ったりしたらとんでもハップン歩いて10分だからね。ゆるしてチョンマゲなんて誤ったって、めんごなんて誤ったって、ぜってー許してあげないから"
"でも、最近、毎日が天中殺だしなあ……。しかも、わらひ、イマいスッチーのようにマブくないし、ドジでマヌケでのろまなカメだし……"
"それに、この前の合コンのときみたいにドッチらけなのはやだし……。一番右のやつ、何が、あ、オレ、君にゾッコンになりそう!なんちゃって、うそピョーンよ。となりの席のやつも、それはなるほどザワールド秋の祭典スペシャルですね!じゃないわよ"
"ん、もう、頭がピーマンになりそう……"
"今週は思いきりフィーバーしちゃおうかな……"
"……"
不思議な言葉たちを乗せたミエの夜が、ガタンゴトンと走るE電に揺られるように更けて行く。
"あー、しば漬け食べたい……。でも、もう寝よっと"
夜が明けたら花金がやってくる。
素敵な明日を夢見ながら、いつのまにやらバタンキューのミエであった。
● 夜霧のハウスマヌカン やや