砂利道とオムライス - 2017.07.30 Sun
7月30日、日曜日。
昨晩から続く雨の音で目が覚める。
いつまで降り続くのだろう……・。
くもりだったウェザーニュースの予報が、いつに間にか「朝方は雨」に変わっている。
雨かあ。
気が重いなあ。
でも、行くか。
午前4時15分。
雨の中、日課にしているウォーキングに出かける。
なんでそこまでして欠かさずにウォーキングに励んでいるのか?
知っている人は知っている(笑)。
あるものにはまっているから。
(自分ではそんなにはまっているつもりはないんだけど、周りはそう見てくれないようだ)
まだひと気のない、夜明け前の道をひとり歩く。
傘を打つ雨。
"ボクがいるからこころおきなく歩けるだろ"
傘が微笑みかける。
何の変哲もないビニール傘なのだが、雨中を歩くボクにとっては最高の友だちだ。
"ありがとう!さあ、行くよ!"
見慣れた小路を抜け、大通りへと向かう。
と、傘がボクの肩をたたく。
"今日はクルマ通りの少ない裏路地伝いに歩いたほうがいいんじゃない?危ないし"
"うん、わかった"
大通りを歩くよりちょっと時間はかかるが、素直に傘の指示に従い裏路地を進む。
しばらく進んだところで傘が再びボクの肩をたたいて言った。
"そうだ!この角を左に曲がってごらん!"
"ここを?何かあるの?"
"うん"
"いつもは通らないような道に入ると、こんなところに道祖神があったんだあなんて新たな発見があるのは確かだけど、ちょっと狭すぎない、この道?"
"大丈夫!行きどまりではないから"
"わかったよ、君を信じるよ"
傘を信じ、狭い路地へと歩を進める。
やがてボクの目に、大きな水たまりができた砂利道が姿を現した。
道幅すべてを覆いつくした水たまり。
うわっ!こんな砂利道の水たまりは長靴じゃないと歩けない……。
ん?
砂利道。
水たまり。
長靴。
こんな砂利道の水たまりは、長靴じゃないと……。
まだ明けきぬ空と異次元空間のような裏路地。
傘のタイムカプセルに乗ったボクのこころは、在りし日へと向かう。
長靴じゃないと……。
長靴……。

世の中が大阪万博に熱狂した年の7月。
教室の外を見やる。
天気予報に反して2時間目の終了辺りから降り出した雨は、一段と強さを増している。
あまりの豪雨に、遠くの山々はかすんで見えない。
"帰るころには止んでるかなあ……。"
小学生として初めての夏を迎え、ひとりで歩いて家に帰るボクのこころに不安がよぎる。
幸い、雨は4時間目が終わるころには小ぶりになった。
「ではみなさん、帰りは気をつけて!傘のない人は学校の置き傘を使うんだよ」
4時間目が終了し、先生の声が教室中に響き渡る。
今日は土曜日。
雨の中を帰るのはつらいけど、帰ったら思いきり遊べる。
それに、お昼ご飯は大好きな……。
「お昼は何が食べたい?」
朝の支度を終え玄関を出るボクに母が尋ねる。
「オムライス!」
期待を膨らませるボク。
微笑む、母。
帰ったら大好きなオムライスが待ってる。
今朝の母との会話を胸に、14番と書かれた置き傘を手にして帰路に着く。
駄菓子屋の前を通り過ぎ、スーパーのある角を右に曲がる。
さあ、ここまでくればもうすぐ家だ。
小ぶりになった雨が、また強くなってきた。
大丈夫。
あと少し。
この砂利道をまっすぐ行けば……。
あ!
眼前に水たまりが現れる。
大きな、大きな、湖のように大きな水たまりが。
どうしよう。
長靴はいてないし……。
とても飛び越せるような大きさではない。
しかたがない。
恐る恐る、水たまりに足をそっと入れながら歩を進める。
靴から染み出た水が靴下を濡らす。
うっ。
気持ち悪い。
ここまで濡れちゃったらしょうがない。
一気に行っちゃった方がいいかな。
両足とも靴の中はびっしょり。
うわあ、再悪。
はやく帰りたいよぉ……。
一歩一歩歩くたびに、つま先が「グシュ、グシュ」っと靴の中に侵入した水を踏みつける。
やがて、自宅が視界に入る。
帰ったら着替えてオムライスを食べよっと!
そのあとは、布団に入って本を読もうかな。
布団の中はボクの基地。
どんな大雨だあってへっちゃらさ。
家に着いたボクは、玄関の扉を開けて大きな声で叫ぶ。
「ただいまあ!」
家が、母が、布団が、っそしてオムライスが、ボクを包み込む。

2017年7月30日。
"どうだったかな、初めて通った裏路地は"
ビニール傘が問いかける。
"ありがとう。大切な思い出がよみがえったよ"
"たまにはいいだろ、砂利道の裏路地も"
"そうだね"
さあ、今日は帰ったらオムライスを食べようかな。
道路の舗装率が上がり、砂利道を見かける機会は減りつつある。
特に、ボクが住んでいる神奈川県はその傾向が顕著だ。
砂利道の減り具合と比例するように、「オムライスと言えば」の味つけも変わってきている。
主役はチキンライス+固焼きたまご+ケチャップから、ふわとろたまご+デミグラスソースへ。
下地となるチキンライス(当然チャーハンのようにこれだけで美味しい)は、たまごとソースの邪魔をしないようにと薄味のピラフのような味つけが多くなりつつある。
砂利道とオムライス。
なんだか似ている気がする。
単なる懐古なのか。
それとも。
すっかり色のあせた紫陽花が、季節の移り変わりを物語る。

ふるさとのあの道は、今はどうなっているのだろう……。

あの日に通った砂利道は今はもうないが、その道は、ボクの中でどこまでも続き、そして、未来へとつながっている。
昨晩から続く雨の音で目が覚める。
いつまで降り続くのだろう……・。
くもりだったウェザーニュースの予報が、いつに間にか「朝方は雨」に変わっている。
雨かあ。
気が重いなあ。
でも、行くか。
午前4時15分。
雨の中、日課にしているウォーキングに出かける。
なんでそこまでして欠かさずにウォーキングに励んでいるのか?
知っている人は知っている(笑)。
あるものにはまっているから。
(自分ではそんなにはまっているつもりはないんだけど、周りはそう見てくれないようだ)
まだひと気のない、夜明け前の道をひとり歩く。
傘を打つ雨。
"ボクがいるからこころおきなく歩けるだろ"
傘が微笑みかける。
何の変哲もないビニール傘なのだが、雨中を歩くボクにとっては最高の友だちだ。
"ありがとう!さあ、行くよ!"
見慣れた小路を抜け、大通りへと向かう。
と、傘がボクの肩をたたく。
"今日はクルマ通りの少ない裏路地伝いに歩いたほうがいいんじゃない?危ないし"
"うん、わかった"
大通りを歩くよりちょっと時間はかかるが、素直に傘の指示に従い裏路地を進む。
しばらく進んだところで傘が再びボクの肩をたたいて言った。
"そうだ!この角を左に曲がってごらん!"
"ここを?何かあるの?"
"うん"
"いつもは通らないような道に入ると、こんなところに道祖神があったんだあなんて新たな発見があるのは確かだけど、ちょっと狭すぎない、この道?"
"大丈夫!行きどまりではないから"
"わかったよ、君を信じるよ"
傘を信じ、狭い路地へと歩を進める。
やがてボクの目に、大きな水たまりができた砂利道が姿を現した。
道幅すべてを覆いつくした水たまり。
うわっ!こんな砂利道の水たまりは長靴じゃないと歩けない……。
ん?
砂利道。
水たまり。
長靴。
こんな砂利道の水たまりは、長靴じゃないと……。
まだ明けきぬ空と異次元空間のような裏路地。
傘のタイムカプセルに乗ったボクのこころは、在りし日へと向かう。
長靴じゃないと……。
長靴……。

世の中が大阪万博に熱狂した年の7月。
教室の外を見やる。
天気予報に反して2時間目の終了辺りから降り出した雨は、一段と強さを増している。
あまりの豪雨に、遠くの山々はかすんで見えない。
"帰るころには止んでるかなあ……。"
小学生として初めての夏を迎え、ひとりで歩いて家に帰るボクのこころに不安がよぎる。
幸い、雨は4時間目が終わるころには小ぶりになった。
「ではみなさん、帰りは気をつけて!傘のない人は学校の置き傘を使うんだよ」
4時間目が終了し、先生の声が教室中に響き渡る。
今日は土曜日。
雨の中を帰るのはつらいけど、帰ったら思いきり遊べる。
それに、お昼ご飯は大好きな……。
「お昼は何が食べたい?」
朝の支度を終え玄関を出るボクに母が尋ねる。
「オムライス!」
期待を膨らませるボク。
微笑む、母。
帰ったら大好きなオムライスが待ってる。
今朝の母との会話を胸に、14番と書かれた置き傘を手にして帰路に着く。
駄菓子屋の前を通り過ぎ、スーパーのある角を右に曲がる。
さあ、ここまでくればもうすぐ家だ。
小ぶりになった雨が、また強くなってきた。
大丈夫。
あと少し。
この砂利道をまっすぐ行けば……。
あ!
眼前に水たまりが現れる。
大きな、大きな、湖のように大きな水たまりが。
どうしよう。
長靴はいてないし……。
とても飛び越せるような大きさではない。
しかたがない。
恐る恐る、水たまりに足をそっと入れながら歩を進める。
靴から染み出た水が靴下を濡らす。
うっ。
気持ち悪い。
ここまで濡れちゃったらしょうがない。
一気に行っちゃった方がいいかな。
両足とも靴の中はびっしょり。
うわあ、再悪。
はやく帰りたいよぉ……。
一歩一歩歩くたびに、つま先が「グシュ、グシュ」っと靴の中に侵入した水を踏みつける。
やがて、自宅が視界に入る。
帰ったら着替えてオムライスを食べよっと!
そのあとは、布団に入って本を読もうかな。
布団の中はボクの基地。
どんな大雨だあってへっちゃらさ。
家に着いたボクは、玄関の扉を開けて大きな声で叫ぶ。
「ただいまあ!」
家が、母が、布団が、っそしてオムライスが、ボクを包み込む。

2017年7月30日。
"どうだったかな、初めて通った裏路地は"
ビニール傘が問いかける。
"ありがとう。大切な思い出がよみがえったよ"
"たまにはいいだろ、砂利道の裏路地も"
"そうだね"
さあ、今日は帰ったらオムライスを食べようかな。
道路の舗装率が上がり、砂利道を見かける機会は減りつつある。
特に、ボクが住んでいる神奈川県はその傾向が顕著だ。
砂利道の減り具合と比例するように、「オムライスと言えば」の味つけも変わってきている。
主役はチキンライス+固焼きたまご+ケチャップから、ふわとろたまご+デミグラスソースへ。
下地となるチキンライス(当然チャーハンのようにこれだけで美味しい)は、たまごとソースの邪魔をしないようにと薄味のピラフのような味つけが多くなりつつある。
砂利道とオムライス。
なんだか似ている気がする。
単なる懐古なのか。
それとも。
すっかり色のあせた紫陽花が、季節の移り変わりを物語る。

ふるさとのあの道は、今はどうなっているのだろう……。

あの日に通った砂利道は今はもうないが、その道は、ボクの中でどこまでも続き、そして、未来へとつながっている。
● COMMENT ●
Re: タイトルなし
こい☆さん、こんにちは!
お気遣いありがとうございます!!
はい、大丈夫です♪
すごい雷雨で、地域によっては停電したところっもあったようですが・・・。
> 砂利道に所々ある水たまりで遊ぶのが好きだったなあ。
そうそう笑
こどもって、なんで水たまりとか大好きなんですかね。。
長靴をじはいていたら、わざわざ入っていきましたよね
でも、そういう「こころ」(いわゆる童心)って大切なんでしょうね
「感動」の源のような気がします・・・。
お気遣いありがとうございます!!
はい、大丈夫です♪
すごい雷雨で、地域によっては停電したところっもあったようですが・・・。
> 砂利道に所々ある水たまりで遊ぶのが好きだったなあ。
そうそう笑
こどもって、なんで水たまりとか大好きなんですかね。。
長靴をじはいていたら、わざわざ入っていきましたよね
でも、そういう「こころ」(いわゆる童心)って大切なんでしょうね
「感動」の源のような気がします・・・。
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砂利道に所々ある水たまりで遊ぶのが好きだったなあ。
…と、テレビでニュース見てたら、神奈川はゲリラ豪雨ですごい事になっていますね。
そちらは大丈夫ですか?