2017
10.03

新駒

看板に刻み込まれた確かな味の証

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去る9月30日、横浜の名店 タマガワ がその歴史に幕をおろした。

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タマガワは、スパゲティナポリタンの発祥であるホテルニューグランド初代総料理長サリー・ワイルさんの元で修行した初代店主・小澤健之助さんが、1947年(昭和22年)に調布の多摩川近くで創業した老舗。
その後、横浜に移転し、70年もの長きに渡って人々のお腹とこころを満たしてくれた。

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横浜では今年の4月に1967年(昭和42年)創業の 山田ホームレストラン が店主の急逝で閉店。
名店の相次ぐ閉店は寂しいけど、いつかはくる別れ。

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ありがとう。
さよなら、タマガワ。

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10月1日、日曜日。
東海道線に揺られ川崎へと向かう。
川崎駅で市営バスに乗り換え、臨港警察署前で下車。
バス停から歩くこと5分。
閑静な一角に黄色い看板がお目見えする。

中華料理 新駒 と書かれた古びた看板。

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うわっ!
すごいな、この看板。
大丈夫かなあ……。
一瞬、不安がよぎる。

が、次の瞬間、不安が安心に変わる。

開放されたドア。
店の前に並ぶ数台の自転車。
それはきっと、周辺の空気に溶け込んだ、地元民に愛される店。
休日のゆったりとした午後の時間に、平和な陽光が差し込む。

「こんにちは」
開け放たれたドアを抜け狭い店内に滑り込む。

4人掛けのテーブルが3つと、カウンター6席。
カウンターには年配の男性客がひとり。
テーブル席には若い夫婦がひと組と、父子がひと組。

カウンター席に陣取り、さっそくオムライスを注文。

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「オムライス」
初老の夫婦が営む店に、奥さんの声がこだまする。

ちょっと色のあせた赤いテーブルに、赤い椅子。
壁に貼られた多くのメニュー。
ざっと数えたところ、麺類が23、ご飯ものが15、おつまみが17。
そうかあ、ニラレバではなくて、ニラ炒めとレバー炒めが別メニューなのかあ……。
そんなことを思いつつ、今度は耳を澄ませる。

かすかに聞こえる天井近くの一角に設置された扇風機のうなり音。
その対角に設置されたテレビから流れるは、日曜日の昼の定番、パネルクイズ アタック25。
そして、中華鍋ではじける油の音が合唱をはじめる。

ゆっくりと流れる時間。
美味しそうにご飯をほお張る先客。

「ごちそうさまでした!」
食事を終えた子供の大きな声。

いいなあ、この雰囲気。

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やがてオムライスが出来上がり、目の前に運ばれる。

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眼前に立ち込める湯気。
店名が書かれたお皿に乗った、ほっかほかのオムライス。
これは間違いない!
中華スープも美味しそう。
目にした途端、美味しさを確信。

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先ずはひと口。

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うん!
美味しい!!!!!!!!!!!!!!!

口の中に広がる香ばしさとやさしさ。
しっかりと炒められたあつあつのチキンライスには、鶏の風味と玉ねぎの甘みが詰め込まれている。

それもそのはず。

大きく切られた玉ねぎに、

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ゴロゴロチキン。

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中華スープもオムライスにピッタリ。
これぞ町中華のオムライス!
ひとくち、またひとくち、ゆっくりとその味わいを楽しむ。

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「美味しいですね」
お礼を述べて会計を済ませる。
「ありがとうございます。これしかできないんで」
礼儀正しいご主人が頭をさげる。
「ここはどれくらいになるんですか?」
「先代からなので、もう六十年以上ですね」
ちょっと照れ笑いを浮かべるご主人。
その表情には、地元民に愛される職人の腕とやさしさがにじみ出ている。

「また来ますね!」
そういって店を出る。

「ありがとうございました!」
背中にご主人の声が響く。

タマガワ、山田ホームレストランの閉店。
新駒は……。

戦後から高度経済成長期に開店した町の飲食店の多くは、店主がそろそろ引退の年を迎え、後継者がいない中、その歴史の終焉へと向かっている。
2020年の東京オリンピックまでは頑張る。
そんな合言葉もあるようだ。

改めて、新駒の看板を眺める。
そこに刻まれているのは、確かな味の証と年輪。

メニューのはじから順に全部食べてみたいな。
秋色の風が、こころにしみる。


■ 新駒 食べログ情報
・電話 044-299-4814
・住所 神奈川県川崎市川崎区池上新町2-6-2
・交通手段
 川崎駅東口バスターミナルより川崎鶴見臨港バス・川崎市営バス臨港警察署前バス停下車 徒歩2分
・営業時間 11:00~14:00 17:00~21:00
・定休日 火曜日

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