2013
02.24

ポポロ

隠れ家的秘密基地的飲んで食べれる洋食屋 


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善行に歴史のある洋食屋があるのは、なんとなく知っていた。
しかし、この近辺ではどうしても栄えている湘南台と藤沢に目がいってしまい、間にある善行には全く注目しておらず、Out of 眼中、すっかり忘れ去っていた。
が、片瀬江ノ島行きの小田急線に乗っていて、ふと、思い出した。
あ、そういえば、善行に洋食屋さんがあったよなあ……。
さっそく、「善行 洋食屋」でググってみた。
おー、あった、あった。ポポロって言うんだ……。オムライスあるかなあ?
店のホームページを開き、キャッチコピーを確認。
“洋食屋さんの美味しいハンバーグ・オムライス・ドリアをどうぞ”
おーーーーー、オムライス、売りじゃ~ん!

ということでそのまま善行へ直行。
小ぢんまりとした店だけど、駅のすぐそばなのですぐにわかる。
店の前には「Restaurant & Pub 飲んで食べれる」と書いた木の看板。
ほー、飲みも売りなんだあ……なんて思いながら薄暗い店内を覗き込みながらドアを開ける。
と、黒塗りの2人がけのテーブルが5卓程度とカウンター席の、まるでバーのような雰囲気が目の前に広がる。
なんか、水割りと乾き物、それにグラスに入れたポッキー、タイトスカートをはいたチーママとかが出てきそうな雰囲気……。
しかーし、しかーしである。店内には堂々と、「人気のオムライス」の張り紙が。
はいはいわかってます、もちろん、注文しますよ~、その人気のオムライスを。
「すみません、オムライスと生ビールをください」
あれ?生ビール?
今、生ビールって言ったよなあ、オレ……。
頭の中はすっかり「飲める店」になっていて、赤信号が青になったら反射的に横断歩道を渡るのと同じような当たり前の感覚でビールを頼んでしまった。

待っている間に店内を眺める。
お客さんは他に夫婦らしき男女がひと組。
この暗さと狭さが、妙に落ち着く。
守られているような、秘密基地にいるような、そんな雰囲気。
体内回帰願望かなあ……?

さてメニューは。ん?下の方を見ると何やら絵が描いてある。
ポポロくん?すげー!キャラクターがいる(蚊取線香じゃあないですよ)!

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そうこうしているうちにオムライスが到着。
オムライスは、ポポロ風オムライス850円と、シーフードオムライス1,100円の2種類。
ポポロ風オムライスはチキンライスにデミグラスソース。シーフードオムライスは中のご飯がドライカレー。
ともにスープ、サラダ付きなのでお得感がある。今回注文したのはポポロ風オムライス。

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さてさていかに……。
おー、見た目色鮮やか!
卵の黄色、デミグラスソースの茶色、トマトの赤、レタスや豆の緑……。
目で楽しませてくれる。
味はどうだろう……。

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あ、やばい!
ビールを飲んじゃって味が……。

このとき思った。
オムライスの味って、繊細なんだなあって。
当たり前でつまみを食べながらビールを飲むけど、オムライスって、飲んじゃうと卵とソースとケチャップライスの融合の微妙な感じがわからなくなっちゃう気がした。
で、改めて、デミグラスソースとケチャップの微妙なバランスが大切なんだなあって思った。

とりあえず、サラダと水で口直しをして実食。
うん、味もよいよ~。
1週間寝かせるというソースはもちろん、チキンライスもとても美味しい。
いろいろな味といろいろな食感を楽しめる。
ボリュームも多いし、更にボリュームをという方には大盛1,000円もある。

ポポロは1973年、善行に「グラタンハウスポポロ」としてオープン。
開業以来40年近く、こだわりの味を提供し続けている。
「ポポロってどいう意味なんですか?」とご主人に尋ねたら、イタリアのローマにある広場の名前で、「いつでも皆さんが集まれる憩いの空間を」との思いでつけられたとのこと。
またよろしくお願いしま~す!
今度はゆっくりと飲みに来ようかな……。

2013年2月2日

■ 店舗情報 ■
・住所:神奈川県藤沢市善行7-5-4
・電話:0466-82-7903
・営業時間:【ランチ】11:30~14:30 【ディナー】17:30~22:00 
・定休日:火曜日

ポポロ 食べログ情報 

ポポロオムライス / 善行駅

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怒られ屋

「はい、大丈夫です。……。今回の件を反省して、次回の納品のときはくれぐれも気をつけてくれとのことです。……。そうですね、最後はにこやかな表情でしたので問題ないと思います。……。では今日はこれで直帰します。……。お疲れ様でした。……。はい、失礼します」

 上司への報告の電話を切ると、美喜男はメニューを片手に「Restaurant & Pub ポポロ」と書かれた窓の外に目をやった。
 天気予報に反して突然降り出した横殴りの雨が、4月の夕方を飲み込んでいる。
 この分だと、しばらくはやみそうにないな。
 みんなとのこの店での約束の時間には、まだ1時間以上ある。何も考えずに入っちゃったけど、豪雨の中を歩き回る気にもなれないし、先に軽く飲んでようかな……。
 そう思った途端、仕事の緊張感から解き放たれた。

 ビールを注文し、三分の一ほど一気に飲み干す。
 と、同時に、最近口癖になっているいつもの言葉が、無意識のうちに口をつく。

 あー、疲れた。

 ビールを片手に、美喜男の目はぼんやりと宙を泳ぐ。

 あー、疲れた……。……。

 ため息のシャボン玉が、リフレインの列を作ってふわふわと飛んで行く。

“いやー、本当に君がいて助かるよ……”
“突然で悪いんだけど、すぐに対応に行ってほしいんだ……”
“お願い!どうにかならないかなあ……”
“悪いとは思っているんだけどさ……”

 上司や同僚の声を乗せたシャボン玉が、浮かんでは消える。

 怒られ屋のミッキー。
 それが社内で美喜男についたニックネームだ。
 どんなに怒っているお客でも、最後は円満に収めてしまう。
その不思議な手腕を上司に買われ、クレームやトラブルが発生するとお呼びがかかる。営業の総括職なので、職務と言えばそれまでだが、そんな役割が定着するとさすがに自分の価値というものがわからなくなってくる。
 おまけに、あまり下が入って来ない環境のせいか、入社以来もう10年も若手扱いされている。
 確かに童顔で草食系のイメージがあり、頼まれれば断れない性格であると自分でも思う。人を蹴落としてまでも上に行きたいとも思わないし、喧嘩をせず下手に出て、にこやかに生きていくのが性にあっているのかもしれない。
 だけど、それでいいのだろうか?
 競争社会に取り残され、男の威厳がないまま年を重ねる。
 怒られ屋なんて呼ばれて、たとえそれがいい意味で言われているとしても何も嬉しくはないし、便利屋かパシリ以外の何者でもないではないか……。
 あー、疲れた。
 こんな人生で満足か?
 とは言え、だからと言って何ができるわけでもない。
 何なんだこのオレは……。

 軽く飲むはずのビールが、4杯目からは焼酎のロックになり、やがてバーボンになった。

 そうだ、いい機会じゃないか。
 みんなが来たら言ってやろう。何が怒られ屋だ。
 オレはそんなことをするために生きてんじゃねえよ。
 そうだよ、今日言えばいいんだよ。
 そうだよ……。
 そうだよ……。
 ……。

 そんなつぶやきは、いつの間にか寝息に変わっていた。

 それからどれくらい経ったのだろう。

「松下さん……。松下美喜男さん」
 呼びかける男の声がする。
 ボーッとする頭で、声に反応する。
「……はい」
「まだ宴会が始まる前だと言うのに、随分と飲んでいますね」
 声の主は、しょうもない人ですねといった口調で話を続けた。
「どうしたんですか一体。だいぶお疲れのようで」
 美喜男は焦点が合わない目で、顔をあげた。
 見ず知らずの、美喜男と同年輩くらいと思われる男の姿が目の前に現れた。
 ぼんやりとした視界の先にある顔は、美喜男に勝るとも劣らぬおとなしそうな童顔で、柔和な笑みを浮かべている。
 誰だっけ?
 美喜男は記憶の糸を手繰る。
 全く思い出せない……。
 知っているふりをして、あっ、久しぶり、なんてしらじらしい演技は自分にはできない。
「すみません、ちょっと記憶が不確かで……、どちら様でしたっけ?」
「あ、全然気にしないでください。そうですよね、覚えていらっしゃらないでしょう。お会いしたのは、なにせまだ幼少の頃ですし」
 男は笑みをたたえたまま続けた。
「申し遅れました。ヒジカタタイガと言います。名前負け、してますよね」

 名前を聞いてもとんと思い出せないのだが、美喜男の嗅覚は、ヒジカタタイガと名乗るその男にどことなく自分と似た匂いを感じとった。
 酔いも手伝い、すぐさま意気投合した様子で男の話に耳を傾ける。
 どうやら、彼も会社でいいように使われているようだ。
 お互いの社内での話に花が咲く。
「同じです、同じです。そうなんですよね、まったく。面倒なことは全部押し付けですよね」
美喜男が大きく相槌を打つ。
「こんな話で盛り上がれるのは他にないですね」
 笑顔の男が追従する。
 男がトイレに立つまで、そんな会話がしばらく続いた。

 トイレから戻ると、このタイミングを待っていたかのように、男は真面目な顔で美喜男に話し始めた。
「ところで松下さん。僕はそれでもいいと思っているんですよ」
 え、どうして?
 男は続ける。
「何て言うんですかねえ。僕の信念と言うか。戦っていないようで、実はすごく戦っていて……」
 バーボンのグラスにやろうとしていた美喜男の手がとまる。
「そういう自分をボクは褒めてやりたいと思っています。誠実に生きる、誠実に対応するのが僕の信念ですし、ボクの取り柄です。だから、みんながどういうつもりで僕に接しているかなんて全く気になりませんし、どうでもいいんです。会社は利害関係が働く場ですから確かに本当の仲間は作りにくいとは思うのですが、何事にも誠実で、誰に対しても誠実で、自分にも誠実であれば、きっと周りの信用も得られ、いいように使われているように見えても実はとても頼りにされていて、本当の仲間ができるし、そういう人たちを信じたいと。たとえテクニックを磨いても、偽りの心には誰も振り向いてくれないのではないでしょうか……」

 決してそらすことのない堂々とした澄んだ瞳が、じっと美喜男の目を見つめている。
「松下さんも、そうなんじゃないですか。いつも誠実であろうと思うからこそ、決して逃げることなく自分を精一杯ぶつけるからこそ、仕事仲間もお客さんも、みんなが認めてくれる。誠実であり続けるのは大変で立派なことです。そのことに、もっと自信と誇りを持っていいんじゃないですか……」

 誠実であること。何事にも。誰にも。自分にも。そして、仲間を信じる……。

“松下さんも、そうなんじゃないですか”
“もっと、自信と誇りを持っていいんじゃないですか”

 男の言葉が、頭の中で、何度も何度もこだまする。

 誠実、仲間、自分の信念……。

 ……。

「松下さん……。松下美喜男さん」
 呼びかける男の声がする。
「……はい」
 ボーッとする頭で、声に反応する。
「まだ宴会が始まる前だと言うのに、随分と飲んでいますね」
 声の主は、しょうもない人ですねといった口調で言う。
 美喜男は焦点が合わない目で、顔をあげた。
「……ヒジカタさん……」
 寝ぼけ眼で周りに目をやりながら美喜男が言う。
「ヒジカタさん?」
 見ず知らずの……、いや、後輩の山岡の、ちょっと心配そうな表情(かお)が目の前に現れた。

「あ、山岡。いや、ほら、ここに座っていた人、いただろ」
 え?首をかしげ、キョトンとした表情を浮かべ山岡が言う。
「誰もいませんでしたよ。松下さん一人でテーブルに突っ伏して……」
 いやいや、ほら、一緒に飲んでた彼のバーボンのグラスがテーブルの上に、あれ?
「松下さん夢でも見てたんじゃないですか。目を覚まして見てくださいよー」
 山岡に促され見渡すと、店には同じ部署の同僚や先ほど報告の電話をした上司、加えて他部署のメンバーの顔がずらりと並んでいる。
 あれ、今日は3~4人での飲み会じゃなかったっけ……。
「ミッキー、後ろ、後ろ」
 面食らう美喜男に、同僚の吉田が後ろを見ろと促す。

“ミッキー、入社10周年&誕生日おめでとー”

 いつの間にか、美喜男が座っている後ろの壁に横断幕がはられている。
「みんなの意見で、びっくりさせてやろうってことになってな」笑顔の上司が言う。
「オレたちの感謝の気持ち。お前の大好きなオムライスもたくさんあるぞ」吉田が握手を求める。
「松下さんのお祝いだったら、是非私たちも参加させてくださいってお願いしちゃいました」隣の部署の女性社員たちが言う。

 誠実であること。何事にも。誰にも。自分にも。そして、仲間を信じる……。

 彼は誰だったんだろう……。

 ふと、美喜男の頭に忘れかけていた記憶が蘇る。

 ヒジカタタイガ……ヒジカタ? タイガ?

 あっ!

 子供心に好きだった新撰組の土方歳三と、「愛と誠」の太賀誠。
 「誠」の隊旗を掲げ幕府軍に仕えた新撰組。
 その副長として、幕府軍最後の砦五稜郭にて一人敵地に飛び込んだ土方歳三。
優しさゆえに冷徹な鬼となった男は、最期まで仲間を裏切ることなく誠実を貫いた。
 そして、早乙女愛を守るべく命を賭して戦い抜いた太賀誠。
 心優しき悪は、やっと素直になれた最期の瞬間までは、”愛”のために無愛想でつっぱった鎧を着続けた。

「さあさあ、カンパイしよー」仲間の楽しそうな笑顔がはじける。
 そんな笑顔を見ながら、美喜男は思った。
 オレは、鬼になることも無愛想の鎧を着ることもなく誠実な自分を貫けるではないか。
 怒られ屋ミッキー ――そう呼ばれるのは世の中で自分ひとりだけ。何が悪いんだ。

 猛威を振るっていた横殴りの雨はいつしかやみ、晴れ渡る夜空に満月が浮かんでいる。

「カンパーイ!おめでとう、ミッキー!」

 今、美喜男の11年目のスタートが切られた。

 心に、「誠」の確かな一文字を刻み込んで……。

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