パリー食堂 - 2019.08.13 Tue
山の神のやさしい微笑み

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午前6時。
我が相棒に乗り込みスタートボタンに手をやる。
同時に、V6 3.7リッターの咆哮が夏の朝にこだまする。
この日の目的地は埼玉県秩父市。
夏の曲をBGMに、片道約3時間半のドライブを楽しむ。
昨年の12月に訪れた飯能を越え国道299号線を北上。
全長約2キロの正丸トンネル(ちなみに鉄道用は約5キロある)を抜けると、いよいよ秩父が目の前に迫る。
やがて、山肌を大きく削られた武甲山が姿を現す。
セメントの材料に使われる石灰岩が豊富にあるため採掘で山の形が変形し、標高も低くなってしまったようだ。

9時20分。
秩父鉄道の秩父駅前の駐車場に相棒を停め街へと繰り出す。

ローカル色豊かな秩父駅の改札。

長瀞方面へと線路は続く。

”のんびり行こうよ”
日々草の向こうで、おだやかな風がやさしく微笑む。
「のどか」という言葉はこの街のためにあるようだ。

駅前を離れて秩父神社方面へと足を運ぶ。
夜祭で知られる秩父。
「秩父夜祭」は京都の祇園祭、飛騨の高山祭と並び「日本三大曳山祭り」に数えられる「秩父神社」の例大祭で、ユネスコの無形文化遺産として登録されている。
さすがに祭りの街、「秩父まつり会館」なる建物も。

ほどなくして秩父神社に到着。
夏の観光シーズンだが人影はまばらだ。

二礼二拍手一礼、平和を祈願する。

続いては歴史のある店の探訪。
創業95年を誇る松本製パン。

かなり美味しいと評判のレストラン・ハクオー。
営業してるの?
そんな疑いを持ってしまう外観と味は必ずしも一致しない。
秩父の隠れ家的名店だ。

大正5年創業の安田屋。
こちらでは豚肉の味噌漬を購入!
あと数日寝かせたら食べごろになるとのこと。

老舗だけではない。
こういった、風情を感じる歴史的な建物も多く残っている。

ファミリーマートも景観を損ねない配色だ。

秩父鉄道の秩父駅とは趣が異なる西武秩父駅。
2017年にリニューアルされた駅舎は、この年に駅前にオープンした複合型温泉施設「西武秩父駅前温泉 祭の湯」と一体感を持たせたデザインになっている。

そして、御花畑駅。
ボクの頭の中か、はたまた天国に一番近い駅か。
江戸時代からの桜の名所で、副駅名として「芝桜駅」という名前がつけられている。

2時間半ほど散策を楽しみ、いよいよこの日の目的の店へと向かう。
その店の名は、パリー食堂

1927年(昭和2年)製の建物は、有形文化財にも登録されている。
もともとはカフェ・パリーとして創業し、料亭を経て現在のパリー食堂に至っている。

ショーケースに並ぶ古びた食品サンプルのオムライス。

なんだかとてもワクワクする。
右から書かれたパリーの暖簾をくぐり店内へ。

先客はひと組2名。
フロアの女性にさっそくオムライスを注文。

しばらくして、フロアの女性の笑顔とともにオムライスが運ばれてきた。

水の入ったコップに入れられたスプーン。
付け合わせの野菜とフルーツ。
のどかな街並みにピッタリの、ほんわかとした景色が目の前に広がる。

ボリュームは多くはないが、付け合わせを考えるとこれで充分。

では、いっただきま~す!!

うわっ!
やさしい味!!
具材はゴロゴロチキンと大きめにカットされたタマネギ。
これとライスを、絶妙な量のケチャップがこれまた絶妙な炒め具合で包み込む。
薄焼きたまごと相まって、ホントにやさしい味が口の中に広がる。
なんだろう、このやさしさは……。
炒めた香ばしさや甘さも強くない。
ケチャップの酸味も強くない。
見た目もいろいろな野菜やフルーツで彩られてはいるものの、決して「美しい」というわけではない。
何が特徴かと言われると答えに窮する。
傑出した特徴があるわけではないのに、それでいて妙にやさしく、なぜか惹かれる。
ケチャップとたまごが手をつなぎ、オムライスを構成する面々に微笑みかける。
ライスにもやさしい。
チキンにもやさしい。
タマネギにもやさしい。
そして、お客さんにやさしい。
地元民に愛され、柔和な笑顔を見せる年老いた店主の腕と心の成せる技なのだろうか。
オムライスって、これでいんだよな。
いや、これがいいんだよな。
これがオムライスだよな。
オムラスに気負いはいらない。
やさしさで包み込んでくれて、笑顔になれればそれでいい。
ボクの中で、もうひとりのボクが言い聞かせるようにつぶやく。

山に囲まれ幾多の歴史が刻まれてきた秩父。
そんな秩父には、関東でも有数のパワーの強い神様たちが住んでいるとされ、中でも「秩父神社」は女性的でやさしい包み込むようなパワーを持つ神社と言われていている。
やさしい景観。
やさしい風。
そして、やさしいオムライス。
もしかしたら、「場」の持つ力が街全体を覆いつくしているのかもしれない。
先行きが不透明な現代社会。
秩父の街を歩いていると、何が大切かを改めて考えさせられる。
涼しくなったら、また来よう……。
■ パリー食堂 食べログ情報
・電話:0494-22-0422
・住所:埼玉県秩父市番場町19-8
・交通手段:秩父線御花畑駅から徒歩約3分
西武秩父駅から徒歩約6分
秩父線秩父駅徒歩約6分
・営業時間:11:30 〜 20:30
・定休日:不定休


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午前6時。
我が相棒に乗り込みスタートボタンに手をやる。
同時に、V6 3.7リッターの咆哮が夏の朝にこだまする。
この日の目的地は埼玉県秩父市。
夏の曲をBGMに、片道約3時間半のドライブを楽しむ。
昨年の12月に訪れた飯能を越え国道299号線を北上。
全長約2キロの正丸トンネル(ちなみに鉄道用は約5キロある)を抜けると、いよいよ秩父が目の前に迫る。
やがて、山肌を大きく削られた武甲山が姿を現す。
セメントの材料に使われる石灰岩が豊富にあるため採掘で山の形が変形し、標高も低くなってしまったようだ。

9時20分。
秩父鉄道の秩父駅前の駐車場に相棒を停め街へと繰り出す。

ローカル色豊かな秩父駅の改札。

長瀞方面へと線路は続く。

”のんびり行こうよ”
日々草の向こうで、おだやかな風がやさしく微笑む。
「のどか」という言葉はこの街のためにあるようだ。

駅前を離れて秩父神社方面へと足を運ぶ。
夜祭で知られる秩父。
「秩父夜祭」は京都の祇園祭、飛騨の高山祭と並び「日本三大曳山祭り」に数えられる「秩父神社」の例大祭で、ユネスコの無形文化遺産として登録されている。
さすがに祭りの街、「秩父まつり会館」なる建物も。

ほどなくして秩父神社に到着。
夏の観光シーズンだが人影はまばらだ。

二礼二拍手一礼、平和を祈願する。

続いては歴史のある店の探訪。
創業95年を誇る松本製パン。

かなり美味しいと評判のレストラン・ハクオー。
営業してるの?
そんな疑いを持ってしまう外観と味は必ずしも一致しない。
秩父の隠れ家的名店だ。

大正5年創業の安田屋。
こちらでは豚肉の味噌漬を購入!
あと数日寝かせたら食べごろになるとのこと。

老舗だけではない。
こういった、風情を感じる歴史的な建物も多く残っている。

ファミリーマートも景観を損ねない配色だ。

秩父鉄道の秩父駅とは趣が異なる西武秩父駅。
2017年にリニューアルされた駅舎は、この年に駅前にオープンした複合型温泉施設「西武秩父駅前温泉 祭の湯」と一体感を持たせたデザインになっている。

そして、御花畑駅。
ボクの頭の中か、はたまた天国に一番近い駅か。
江戸時代からの桜の名所で、副駅名として「芝桜駅」という名前がつけられている。

2時間半ほど散策を楽しみ、いよいよこの日の目的の店へと向かう。
その店の名は、パリー食堂

1927年(昭和2年)製の建物は、有形文化財にも登録されている。
もともとはカフェ・パリーとして創業し、料亭を経て現在のパリー食堂に至っている。

ショーケースに並ぶ古びた食品サンプルのオムライス。

なんだかとてもワクワクする。
右から書かれたパリーの暖簾をくぐり店内へ。

先客はひと組2名。
フロアの女性にさっそくオムライスを注文。

しばらくして、フロアの女性の笑顔とともにオムライスが運ばれてきた。

水の入ったコップに入れられたスプーン。
付け合わせの野菜とフルーツ。
のどかな街並みにピッタリの、ほんわかとした景色が目の前に広がる。

ボリュームは多くはないが、付け合わせを考えるとこれで充分。

では、いっただきま~す!!

うわっ!
やさしい味!!
具材はゴロゴロチキンと大きめにカットされたタマネギ。
これとライスを、絶妙な量のケチャップがこれまた絶妙な炒め具合で包み込む。
薄焼きたまごと相まって、ホントにやさしい味が口の中に広がる。
なんだろう、このやさしさは……。
炒めた香ばしさや甘さも強くない。
ケチャップの酸味も強くない。
見た目もいろいろな野菜やフルーツで彩られてはいるものの、決して「美しい」というわけではない。
何が特徴かと言われると答えに窮する。
傑出した特徴があるわけではないのに、それでいて妙にやさしく、なぜか惹かれる。
ケチャップとたまごが手をつなぎ、オムライスを構成する面々に微笑みかける。
ライスにもやさしい。
チキンにもやさしい。
タマネギにもやさしい。
そして、お客さんにやさしい。
地元民に愛され、柔和な笑顔を見せる年老いた店主の腕と心の成せる技なのだろうか。
オムライスって、これでいんだよな。
いや、これがいいんだよな。
これがオムライスだよな。
オムラスに気負いはいらない。
やさしさで包み込んでくれて、笑顔になれればそれでいい。
ボクの中で、もうひとりのボクが言い聞かせるようにつぶやく。

山に囲まれ幾多の歴史が刻まれてきた秩父。
そんな秩父には、関東でも有数のパワーの強い神様たちが住んでいるとされ、中でも「秩父神社」は女性的でやさしい包み込むようなパワーを持つ神社と言われていている。
やさしい景観。
やさしい風。
そして、やさしいオムライス。
もしかしたら、「場」の持つ力が街全体を覆いつくしているのかもしれない。
先行きが不透明な現代社会。
秩父の街を歩いていると、何が大切かを改めて考えさせられる。
涼しくなったら、また来よう……。
■ パリー食堂 食べログ情報
・電話:0494-22-0422
・住所:埼玉県秩父市番場町19-8
・交通手段:秩父線御花畑駅から徒歩約3分
西武秩父駅から徒歩約6分
秩父線秩父駅徒歩約6分
・営業時間:11:30 〜 20:30
・定休日:不定休

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