2013
02.24

COIN TOSS

Which? Eat or Drink?


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前に書いたように、オムライスにもいろいろある。
洋食屋のオムライス、喫茶店のオムライス、チェーン店のオムライス。
そして、バーのオムライス。
さて、バーのオムライスって、どんななのだろう……。

ということで、この日は大和駅のすぐそばにあるCafe&Barコイントスを訪問。
営業時間は19:00~翌朝4:00。
開始の19:00に合わせて店に行く。
ドアを開けて中に……あれ???
どういうこと?
ドアがない……。
中の様子はわかるのだけれど入り口がわからない。

一瞬とまどう。
が、すぐに発見!
な~んだ、壁かと思ったら、そこが入り口だった。
よかったあ。
このままうろうろしていたら、ボケor不審者だ。

間口はそんな広くないけれど、開放的な作りと奥行きが広さを感じさせる。
そして、大型の液晶と、サインやらフラッグやら壁に飾られた数々のサッカー関係グッズ。
いやがおうでも気分が高揚する。
う~ん、これは代表戦のときなんか「さあ、盛り上がってください」と言わんばかりだね。

さて、オムライスはどこかな……。
写真が盛りだくさんのメニューをめくる。

おー、バーだけあってメニューのトップを飾るのは様々な種類のドリンク。
先ずはワールドカップのように並ぶ各国のビール。日本代表はキリン。
ちなみに、この日も当然の如くビール(黒生)を頼んでしまった……。
それから焼酎、ウイスキー。
ウイスキーは数々のスコッチ、バーボン。
カクテルにワイン。
「ワインには、マンU公式ワイン。飲んで香川選手を応援しよう」なんていうのや、「イニエスタコラソンロコ。FCバルセロナのイニエスタが所有するワイナリーのワイン。コラソンロコは熱狂的な心の意味」なんていうのもある。

そんな中、メニューの中ほどのページにオムライス1,000円を発見。
チキンライスにふわふわタマゴ、デミグラスソースの文字。
さて、どんなオムライスなんだろう。
写真はないので、返ってわくわく。
期待が膨らむ。

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オムライスのできあがりまで黒生をゆっくりと飲む。
やがて、デミグラスソースがたっぷりとかかったオムライスが到着。
おー、美味そう!
色の派手さはないオーソドックスな見た目。
だけど自然と「美味しそう」という言葉が口をついた。
実際のお味はいかがでしょう……。

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う~ん、美味しいじゃん!
酒に負けないように、味は濃い目。
おつまみとしても成り立つ味だ。
ちょっとご飯が柔らかい感じ。
だけどチキンの食感がよく、また卵とソースとの相性もよい。
味が濃いと、チキンライスのケチャップとデミグラスソースが主張し合ってまとまりがつかなくなるのではと思いきや、そういうことはなく、お互いがお互いを引き立てている。
うん、これは酒がすすむなあ……。
ボリュームは普通かな。
でも、いろいろとおつまみを食べることを踏まえると充分だと思う。

この店は夫婦でやっているのかな?
気さくな奥さんが料理やお酒を運んできて聞かれた。
「ブログやってるんですか?」
「あ、ブログじゃないんですけど、オムライスが好きでレポート書いてます」
「オムライスマニアですか!!」
マ、マニア……。
マニアではなくファン位だと思うんだけど、まあ、似たようなモノかもしれない。
お客さんは男性が多いらしい。
なので、夜食感覚で結構食べるのだろう。

ホント、お酒もいいのがあるし、料理はご飯もおつまみもとても美味しい。
(オムライスの後、スコッチとおつまみでのんびりしちゃいましたよ……)。
これで代表戦の勝ち試合をみんなで盛り上がって見られたら、最高に幸せな時間を過ごせるんだろうなあ……。

2013年2月9日

■ 店舗情報 ■
・住所:神奈川県大和市大和南1丁目4-12 大塚ビル1F
・電話:046-262-1554
・営業時間:19:00~4:00
・定休日:木曜日(1/1~1/3は休業)


Heads or Tails?

「お疲れ!カンパ~イ!」
 Cafe & Bar COIN TOSSのテーブル席に着いた正樹と美穂は、はじける笑顔でビールのグラスを重ねた。
「いやー、準優勝は嬉しいけど、でも悔しいよなあ」
 半分ほど一気に飲んだ正樹が唇をかむ。
「でも、私ラケットバックなんかよりもウェアの方がほしかったから、よかったわ」
 慰めか本気か、弟をなだめるお姉さんのような美穂の目が、正樹の顔を覗き込む。
「それはよかった。でもさあ……」苦笑いの正樹が続ける。
「あのスマッシュミスはホント恥ずかしいよ。肝心なときに空振りなんてさ……」
「しょうがないじゃない、太陽が目に入っちゃったんだから」
「いやあ、ジュニアのときにコーチに言われてたんだ。いいか、晴れた日にコイントスで勝ったら4-4のときに太陽が背になるようにコートを選べって。なのに、すっかり忘れてて、せっかく選択権がとれたのにサーブ権をとっちゃって。まあ、まさか本当に4-4でそんな場面に遭遇するなんて思ってもいなかったけどね……」
「いいのいいの、ポジティブ、ポジティブ。『ダブルフォルトしない、じゃなくて、ファーストを入れるだよね』」
 お通しを箸でつまみながら、おどけた表情の美穂が正樹の口まねをしながら笑う。

 正樹と美穂が町田のテニススクールで知り合ったのは5ヶ月ほど前のことだ。
 お互いレベルも同じようで、その上なぜか初めて会ったきから不思議とリラックスして話ができ、美穂の積極的な誘いもあってすぐにミックスダブルスを組むようになっていた。

「だってさあ、準優勝2回とベスト4が3回。7大会出てこれって、すごくない?」
「それはすごいって思うよ。でも逆に言うと、5回もベスト4以上に行っているのにまだ一度も優勝できないなんてさあ。あー、今日はチャンスだったのになあ。ごめんね……」
正樹は残りのビールを飲み干し、同じものをもう一杯注文した。
「う~ん」
 遠くに目をやりながら美穂がつぶやく。
「そこなんじゃないかなあ……」
「え?何が?」

 土曜日の夕飯時だが、店内はまだすいており、ふたり以外に客はいない。ひと呼吸おいて美穂が続けた。

「あなたの弱さ。遠慮なくずばり言うけど。まだジュニアのときのトラウマを引きずってるでしょ」
「そうかな……。そう、思う?……」
 出来たてのカマンベールチーズ揚げを口に放り込むと、正樹は右手で鼻をこすった。困惑した正樹が無意識のうちにする仕草だ。
「うん。そう思う。でも、あなたはあなたなんだし、どこかでふっきってチャレンジしないといけないと思うし、あなたならできると思うわ……」

 準優勝が5回、ベスト4が3回。
 小学3年から中学3年まで、大きなテニスクラブのジュニア育成チームに所属していたときの正樹の成績だ。

 優秀な選手が集まる所属チームの中で、正樹の成績は決して誇れるものではなかった。
 そんな正樹に父親の怒号が飛んだ。
「なんでそんな簡単なミスをするんだ。自分から負けに行っているようなものじゃないか。お前には勝ちたい気持ちが全く見えない。テニスは相手にエースを決められても自分がミスしても同じ1ポイントなんだぞ。自分からミスするバカがどこにいるか。よくそんなんでプロになりたいなんて言うよな。よし、今から家まで走って帰れ」

 人間は成長する。プラス方向にも、そして残念ながらマイナス方向にも。
 父親の怒号のおかげでミスは格段に減り、そこそこの成績を残せるようにはなった。
 が、しかし、その大きな代償として、いつしか正樹はミスを恐れる人間になっていた。
 肝心なときに、ミスをしてはいけない恐怖心が体を固くさせる。
 この呪縛からのがれられない。いや、のがれようとすればするほど逆の結果に陥ってしまう……。

「中学3年の夏までに公式戦で優勝できなかったら、この先の望みはないからテニスはやめよう」
 父親とのそんな約束に従い、正樹は中学3年の途中でテニスチームを離れた。
 それから7年。5ヶ月前にふと、もう一度テニスやりたいな。しかも今度は楽しいテニスを。そう思ってスクールに通い出すまでは、正樹は一切テニスに触れようとはしなかった。

「ねえねえ、見て見て、オムライスがあるよ!」
 スクリーンに映るミュージックビデオにぼんやりと目をやっていた正樹の肩を、宝物をみつけたような表情の美穂が叩く。
「オムライス?」
「うん、頼もう!どっちもオムライス好きじゃん!いっぱい飲んで、いっぱい食べよ」
 正樹を見つめ、いいよね、と首をかしげる美穂。
 その小悪魔的な仕草に、黙ってうなずく正樹。

 そうか……。

 そんな美穂を見て、正樹の第六感が、ピンと反応した。

「ねえ、ミーちゃんさあ、ダブルス組んでて、オレのプレーってどう思う?」
「そうねえ……。よく言えば正確。悪く言うとマシンみたい。なんか、ボールに気迫がないと言うか、魂がこもっていないと言うか……。マーくんは自分の可能性を自分で仕舞い込んじゃっている気がする。大きな可能性を持っているのに。きっとジュニアのときも、ちょっと考え方を変えていたらすごい選手になっていたと思うなあ……。でもそれは過去の話だし。生きているのは今だし……。それと……。あ、すみませ~ん、オムライスふたつください!」
 美穂は明るく手を挙げると、話を続けた。
「それと……」
「それと?」
「何て言うのかなあ、なんか、プレッシャーがかかる肝心なところになると、萎縮して周りが見えなくなっちゃうって言うのかなあ。ほら、テニスって対戦相手がいるでしょ。ダブルスだったらパートナーもいる。マーくんはそれが見えなくなっちゃって、ひとりでミスしないことだけに必死になっちゃうの」

 ドンマイ、気にしない気にしない。次のポイントとって行こう!
 大丈夫、今日のマーくんは調子いいから!
 試合では、いつも美穂が励ましてくれる。

 3つ年上だから。
 そんなことを理由に当たり前だと思っていたけど、それだけではない。
 一見自分勝手で奔放な言動に隠れて全然気がつかなかったけど、彼女はいつもボクの動きを見ていてくれている。いや、動きだけじゃない。ボクの心理状態も、打ち破るべきボクの壁も……。

 やがて、デミグラスソースがたっぷりとかかったオムライスが運ばれてきた。

「美味しそう!マーくん、この店のメニューにオムライスがあるなんて思いもよらなかったでしょ」
 スプーンを利き手の左手でぶらぶらさせながら美穂が言う。
「周りを見ずに凝り固まった判断でものごとを決めつけちゃう。だから冒険もできない……」
 美穂の言葉を受け、正樹が自虐的につぶやく。
「そのくせ優勝には人一倍こだわっちゃう。どこかで勇気を出して冒険しないと優勝なんてできないのに……」
 小悪魔の目が追い打ちをかける。

 ミュージックビデオの音が壁に吸い込まれていく。

 静寂が時を刻む。
 黙々とオムライスを食べるふたり。

 黙々と、黙々と……。

 やがて、小悪魔が、口を開いた。

「ねえ、私にかけてみない。私ならできるわ。本当のあなたを引き出してあげる」
 正樹は食べる手を止め、自信にみなぎる美穂に目を向けた。

 何もかもが吸い込まれていく。
 過去も、未来も、今も、……。

「私のカンだと、私たちもうすぐ優勝できるような気がするの。しかも、大きな大会で」

 自分の気持ちに正直になりなさい。
 肝心なときこそ、自分の中に閉じこもらないで相手を見なさい。
 小悪魔の目が、そう言っている。

 もしかしたら、彼女は運命の女性(ひと)なのかもしれない。
 なんで、何の気なしにもう一度テニスをやろうって思ったのだろう……。
 そこで、なんで彼女に出会ったのだろう……。
 神の見えざる手?

 テニスでは今まで何度もやり過ごしていたチャンスボールが、今、自分の目の前に来ているのかもしれない。

 この出会いは、本物なのか、にせものなのか。

 素直に自分を出しなさい。
 あなたのことは、あなたの心が決めるの。
 自分を信じれば、きっとあなたが望む結果が訪れるわ。
 さあ、決めるのはあなたよ。

 小悪魔のささやきが、正樹の心の中を自由に泳ぎ回る。
 そしてそのささやきは、正樹の心のシグナルを青色に変えた。

「ミーちゃん、お願いがあるんだ」
 笑みをたたえた美穂の目が、なんでもどうぞ、と言っている。
「コイントスしてくれる。オレ、それを当てるから。で、当たったら、オレの願いをきいてほしい」

 コートにいるときのような、真剣なふたりの目が交錯する。

「うん、わかった」
 美穂は、まるでこの時が来ることを予測して、待ってましたとばかりにそう言うと、財布から百円硬貨を取り出した。

「勝負は1回よ」

 さあ、相手の動きを見るのよ。
 そして、自分は勝つって信じるの。
 美穂の心の声が、正樹の中でこだまする……。

 美穂は、硬貨を、左手の親指で高々とはじいた。

 照明の光を浴びてキラキラと光ながら、明日を乗せた銀色がゆっくりと宙を舞う。

 Heads or Tails?

 さあ、どっちだ……。

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