無償 【4】 - 2013.07.07 Sun
7
午後1時。リョウは営業部門の優秀賞受賞者の事例発表会に列席した。
発表会場の会議室の壁一面には、個人ごとに目標と実績が対比されたグラフが並んでいる。そして、目標をクリアした担当者の名前の上には、選挙の当選時につけられるような赤いバラがつけられている。
「今年度も残り3ヶ月です。厳しい状況が続きますが、どうか皆さん、力をあわせ、一丸となってガンバっていきましょう!」
社長の挨拶を皮切りに事例発表会は始まった。
「私は、どうやってお客様の信用を得るかが一番のポイントだと考えています。そこで重要になるのが説得力です。私が常日頃心がけているのは、『これこれこう思います』ではなく『これこれこう考えます』という言い方をすることです。『思う』という言い方は非常に曖昧で思考や論理が感じられません。なのでお客様を不安にさせます……」
最初の発表者が、熱く語る。
熱心にメモをとる者。ライバル心むきだしのギラギラした目で聴き入る者。あくびをこらえる者。そこにあるのは、動物園の猿山よりも面白い光景かもしれない。
ちなみに、最優秀賞は、もう何年もトップセールスを維持しているオジサンが受賞した。この社員は、見るからに頼りなく、しゃべりも下手で一見うだつがあがらなそうなのだが、なぜか顧客のハートをつかんでいる。とても不思議に思えていたが、リョウはその理由がちょっとわかってきたような気がした。
8
彼女がボクにくれたもの。
彼女と過ごした時間。
琥珀がボクにくれたもの。
琥珀と過ごした時間。
彼女がボクにくれた『おくすり』って、一体何だろう。
彼女がいる『無償の星』。
彼女の純真で真摯な姿。
『おくすり』って、『無償』って?
一体、『無償』って何だろう、どういうことだろう……。
それはきっと、かけがえのないとても大切なもの。
あの日以来、リョウは考えをめぐらせた。
与えること。
与え続けること。
与えあうこと。
求めること。
求め続けること。
求めあうこと。
求めないこと。
見返りを期待しないこと。
ボクにとっての彼女。
彼女にとってのボク。
ボクにとっての琥珀。
琥珀にとってのボク。
企業人のボク。
一人の人間のボク。
流れ行くもの。流行。
変わらないもの。不易。
うわべの気持ち。
真心。
……。
そしてひと月ほど前、リョウの中で何かがはじけた。
突然、リョウは考えることをやめた。
『無償』とは思うものであって考えるものではない。
リョウの中の何者かがそうつぶやく。
それを境に、リョウを襲っていた息苦しさも影をひそめた。
損得とは無縁の自然な発露。
自分の存在理由。
時空を超えた思い。
心の障壁を溶かしてくれるもの。
彼女は今、どうしているのだろう?
何を思っているのだろう?
ボクは彼女に何をしてあげられるのだろう?
ふつふつと沸き立つ思いが、リョウの体を駆け巡る。
彼女に、会いたい。
どうしようもなく、会いたい。
本当の意味で、彼女とわかり合いたい。
今のボクにとって、最も必要でしかも最高に効く『おくすり』を処方してくれた彼女に、ボクにできる精一杯の感謝を伝えたい。それは決して彼女のボクに対する思いや行為に応えるといった気持ちからではなく、ボクの心の底から自然とあふれ出る素直な気持ちの現れとして。
そしてボクは、その中を彼女が自在に飛びまわれるべく、ボクの魂を彼女に開放する。
昨日の夜、駅前の電話ボックスから、リョウは彼女に電話をかけた。
なぜ駅前の電話ボックスからかけたのか、リョウにもわからない。
何番にかけたのかも全く覚えていない。
受話器をとり、ボタンを押す。
呼び出し音の向こうに、ボロボロになったタイガースの帽子をかぶった彼女の姿が、はっきりと見える。
ほどなくして電話はつながった。
「もしもし。ごぶさた。……。突然だけど、明日の夜、会えるかな?」
受話器の向こうは黙ったまま。何も聞こえない。
「よかったら、今度は君が好きな場所にボクを連れていってほしいんだ……」
もうそれ以上『言葉』はいらない。
午後6時。仕事を終えたリョウは、彼女との約束の場所へと向かう。
街にはジングルベルの軽快な曲が流れ、クリスマスプレゼントを抱えた人々が家路を急ぐ。
昨日はオリオン座がはっきりと見えていた冬の夜空が、今日は雲に覆われ、いつしか真っ白い雪が舞い始めた。
遠くから、かすかに、線路を走る列車の音が聞こえる。
ボクにとって大切なこと……。
ボクにとっての無償……。
リョウは、ケーキ屋の看板に目をやりながら、首に巻いたネックレスを外すと、そっとポケットにしまった。
クリスマスケーキより、やっぱりこっちだよな……。
「レアチーズケーキ、ふたつください」
彼女との約束の時間まで、あと1時間――。
< 終 >
-----------------------------------
最後までお付き合い頂き、ありがとうございました。
この後、どうなるのでしょうねえ?????
実は、この続きは食べレポ&ストーリーカテゴリーの「ラケル」の話です。
リョウが彼女のところに行く前にラケルの園に足を踏み入れます。
それともうひとつ。
リョウが使っていた電話はストーリーカテゴリーの「街角の小景」の電話です。
まあどれも、単なる作者の自己満足なんですけど、そうやってリンクさせるのが好きです。
さて、今日のオムライスに行きましょう!!
今日は「辛いオムライス」で検索。いきなり夏全開で、こう暑いと辛い物が食べたくなる。
で、ヒットした中でここを選択。
東京にあるめぐろ三ツ星食堂。
オムライスやカレーが売りで、多国籍風の創作料理のようだとのこと。
オムライスの種類も豊富で、辛いのは「ちょっと辛いケチャップオムライス」。
人気なのは「醤油オムライス」らしい。
マヨネーズに七味がかかっている!!
イカ焼いて食べるかい?????
おー、ビールがほしくなりそう……
他にオムカレーもある。
では辛いオムライスと醤油オムライスです!
先ずはちょっと辛いケチャップオムライス。



こちらが醤油オムライス。

う~ん、美味しそう!!
よーし、早速ここも訪問候補に入れておこう!!
午後1時。リョウは営業部門の優秀賞受賞者の事例発表会に列席した。
発表会場の会議室の壁一面には、個人ごとに目標と実績が対比されたグラフが並んでいる。そして、目標をクリアした担当者の名前の上には、選挙の当選時につけられるような赤いバラがつけられている。
「今年度も残り3ヶ月です。厳しい状況が続きますが、どうか皆さん、力をあわせ、一丸となってガンバっていきましょう!」
社長の挨拶を皮切りに事例発表会は始まった。
「私は、どうやってお客様の信用を得るかが一番のポイントだと考えています。そこで重要になるのが説得力です。私が常日頃心がけているのは、『これこれこう思います』ではなく『これこれこう考えます』という言い方をすることです。『思う』という言い方は非常に曖昧で思考や論理が感じられません。なのでお客様を不安にさせます……」
最初の発表者が、熱く語る。
熱心にメモをとる者。ライバル心むきだしのギラギラした目で聴き入る者。あくびをこらえる者。そこにあるのは、動物園の猿山よりも面白い光景かもしれない。
ちなみに、最優秀賞は、もう何年もトップセールスを維持しているオジサンが受賞した。この社員は、見るからに頼りなく、しゃべりも下手で一見うだつがあがらなそうなのだが、なぜか顧客のハートをつかんでいる。とても不思議に思えていたが、リョウはその理由がちょっとわかってきたような気がした。
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彼女がボクにくれたもの。
彼女と過ごした時間。
琥珀がボクにくれたもの。
琥珀と過ごした時間。
彼女がボクにくれた『おくすり』って、一体何だろう。
彼女がいる『無償の星』。
彼女の純真で真摯な姿。
『おくすり』って、『無償』って?
一体、『無償』って何だろう、どういうことだろう……。
それはきっと、かけがえのないとても大切なもの。
あの日以来、リョウは考えをめぐらせた。
与えること。
与え続けること。
与えあうこと。
求めること。
求め続けること。
求めあうこと。
求めないこと。
見返りを期待しないこと。
ボクにとっての彼女。
彼女にとってのボク。
ボクにとっての琥珀。
琥珀にとってのボク。
企業人のボク。
一人の人間のボク。
流れ行くもの。流行。
変わらないもの。不易。
うわべの気持ち。
真心。
……。
そしてひと月ほど前、リョウの中で何かがはじけた。
突然、リョウは考えることをやめた。
『無償』とは思うものであって考えるものではない。
リョウの中の何者かがそうつぶやく。
それを境に、リョウを襲っていた息苦しさも影をひそめた。
損得とは無縁の自然な発露。
自分の存在理由。
時空を超えた思い。
心の障壁を溶かしてくれるもの。
彼女は今、どうしているのだろう?
何を思っているのだろう?
ボクは彼女に何をしてあげられるのだろう?
ふつふつと沸き立つ思いが、リョウの体を駆け巡る。
彼女に、会いたい。
どうしようもなく、会いたい。
本当の意味で、彼女とわかり合いたい。
今のボクにとって、最も必要でしかも最高に効く『おくすり』を処方してくれた彼女に、ボクにできる精一杯の感謝を伝えたい。それは決して彼女のボクに対する思いや行為に応えるといった気持ちからではなく、ボクの心の底から自然とあふれ出る素直な気持ちの現れとして。
そしてボクは、その中を彼女が自在に飛びまわれるべく、ボクの魂を彼女に開放する。
昨日の夜、駅前の電話ボックスから、リョウは彼女に電話をかけた。
なぜ駅前の電話ボックスからかけたのか、リョウにもわからない。
何番にかけたのかも全く覚えていない。
受話器をとり、ボタンを押す。
呼び出し音の向こうに、ボロボロになったタイガースの帽子をかぶった彼女の姿が、はっきりと見える。
ほどなくして電話はつながった。
「もしもし。ごぶさた。……。突然だけど、明日の夜、会えるかな?」
受話器の向こうは黙ったまま。何も聞こえない。
「よかったら、今度は君が好きな場所にボクを連れていってほしいんだ……」
もうそれ以上『言葉』はいらない。
午後6時。仕事を終えたリョウは、彼女との約束の場所へと向かう。
街にはジングルベルの軽快な曲が流れ、クリスマスプレゼントを抱えた人々が家路を急ぐ。
昨日はオリオン座がはっきりと見えていた冬の夜空が、今日は雲に覆われ、いつしか真っ白い雪が舞い始めた。
遠くから、かすかに、線路を走る列車の音が聞こえる。
ボクにとって大切なこと……。
ボクにとっての無償……。
リョウは、ケーキ屋の看板に目をやりながら、首に巻いたネックレスを外すと、そっとポケットにしまった。
クリスマスケーキより、やっぱりこっちだよな……。
「レアチーズケーキ、ふたつください」
彼女との約束の時間まで、あと1時間――。
< 終 >
-----------------------------------
最後までお付き合い頂き、ありがとうございました。
この後、どうなるのでしょうねえ?????
実は、この続きは食べレポ&ストーリーカテゴリーの「ラケル」の話です。
リョウが彼女のところに行く前にラケルの園に足を踏み入れます。
それともうひとつ。
リョウが使っていた電話はストーリーカテゴリーの「街角の小景」の電話です。
まあどれも、単なる作者の自己満足なんですけど、そうやってリンクさせるのが好きです。
さて、今日のオムライスに行きましょう!!
今日は「辛いオムライス」で検索。いきなり夏全開で、こう暑いと辛い物が食べたくなる。
で、ヒットした中でここを選択。
東京にあるめぐろ三ツ星食堂。
オムライスやカレーが売りで、多国籍風の創作料理のようだとのこと。
オムライスの種類も豊富で、辛いのは「ちょっと辛いケチャップオムライス」。
人気なのは「醤油オムライス」らしい。
マヨネーズに七味がかかっている!!
イカ焼いて食べるかい?????
おー、ビールがほしくなりそう……
他にオムカレーもある。
では辛いオムライスと醤油オムライスです!
先ずはちょっと辛いケチャップオムライス。



こちらが醤油オムライス。

う~ん、美味しそう!!
よーし、早速ここも訪問候補に入れておこう!!
● COMMENT ●
Re: タイトルなし
ななをさん、おやすみなさい、そしておはようございます!
すっかり寝てしましました……
> だめだ、辛いのは食べられない。
> 辛くないのでお願いします。
あ、そうなんだ!
ミンティア系の辛さはOKだけど、そうなんだあ。。。
> さ、あしたも学校。
> 最近子供より学校いってる気がする私でした。
ご苦労様です!
てか、ななを先生だし……。
って、妄想をここに引っ張り出すなって?????
暑いから体調にきをつけて~!!
すっかり寝てしましました……
> だめだ、辛いのは食べられない。
> 辛くないのでお願いします。
あ、そうなんだ!
ミンティア系の辛さはOKだけど、そうなんだあ。。。
> さ、あしたも学校。
> 最近子供より学校いってる気がする私でした。
ご苦労様です!
てか、ななを先生だし……。
って、妄想をここに引っ張り出すなって?????
暑いから体調にきをつけて~!!
「ラケル」次訪問したときに読んでみますね!
とてもおもしろかったです!!
私も辛いのは食べられないです…
見るからにまっかっかで…
辛そーーう(>_<)
とてもおもしろかったです!!
私も辛いのは食べられないです…
見るからにまっかっかで…
辛そーーう(>_<)
Re: タイトルなし
yukaさん、こんばんは!
返事が遅くなりました。。。
> 「ラケル」次訪問したときに読んでみますね!
>
ありがとうございます!
素直に嬉しいです!!
> 私も辛いのは食べられないです…
> 見るからにまっかっかで…
> 辛そーーう(>_<)
あ、そうなんですね。。。
では、次回は、タバスコ入りの…
ではなく、先ずはあ~まいチョコレートで!
もし気が向いたら投票をお願いしますです。。
返事が遅くなりました。。。
> 「ラケル」次訪問したときに読んでみますね!
>
ありがとうございます!
素直に嬉しいです!!
> 私も辛いのは食べられないです…
> 見るからにまっかっかで…
> 辛そーーう(>_<)
あ、そうなんですね。。。
では、次回は、タバスコ入りの…
ではなく、先ずはあ~まいチョコレートで!
もし気が向いたら投票をお願いしますです。。
本当にいいものに対しては言葉の数が減る
Omunaoさん、おはようございます。
「ラケル」も今、読ませて頂きました。
そして、過去記事もちょっと読ませてもらいました。
最近、いろんな方のブログの過去記事を読むことが
多いのですが、心境の変化というんですかね、
その人の歴史というんですかね、そういうものが
垣間見えて非常に面白いですね。
(という私は過去記事を読まれるのは非常に恥ずかしいです・
特に初期のものは本当に情けないものなので)
『無償』、何かの機会に再放送してもらいたいです。
ヘタな言葉の羅列は、この話を壊してしまいそうなんで
こんな感じで感想の代わりにさせて下さい。
「ラケル」も今、読ませて頂きました。
そして、過去記事もちょっと読ませてもらいました。
最近、いろんな方のブログの過去記事を読むことが
多いのですが、心境の変化というんですかね、
その人の歴史というんですかね、そういうものが
垣間見えて非常に面白いですね。
(という私は過去記事を読まれるのは非常に恥ずかしいです・
特に初期のものは本当に情けないものなので)
『無償』、何かの機会に再放送してもらいたいです。
ヘタな言葉の羅列は、この話を壊してしまいそうなんで
こんな感じで感想の代わりにさせて下さい。
Re: 本当にいいものに対しては言葉の数が減る
たきやん。さん、おはようございます!
> 「ラケル」も今、読ませて頂きました。
> そして、過去記事もちょっと読ませてもらいました。
ありがとうございます!
たきやん。さんが今回の記事で自分の慢心に気を付けることを書いていらっしゃいますが、まさにこれが大切だと思っています。おごったり、策に走ったりすると人ははなれていくでしょう。
例えば最初にいただいたコメント、最初にいただいた拍手、これらは決して忘れてはいけないものだと思います。
自分も常に初心は忘れないようにしないと、です!
> 「ラケル」も今、読ませて頂きました。
> そして、過去記事もちょっと読ませてもらいました。
ありがとうございます!
たきやん。さんが今回の記事で自分の慢心に気を付けることを書いていらっしゃいますが、まさにこれが大切だと思っています。おごったり、策に走ったりすると人ははなれていくでしょう。
例えば最初にいただいたコメント、最初にいただいた拍手、これらは決して忘れてはいけないものだと思います。
自分も常に初心は忘れないようにしないと、です!
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からーい
だめだ、辛いのは食べられない。
辛くないのでお願いします。
さ、あしたも学校。
最近子供より学校いってる気がする私でした。
おやすみなさいー。