2013
03.26

番外編:桐の家

大繁盛の、ほかほかやわらかさくさくかつやさん

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このところ、本編のオムライスレポが停滞している。
理由は簡単。次にどういう行き方をしようか考えているから。
近場のオムライスは結構食べてきたので、次は都内に進出しようか、それとも……。

まあ、考えてばかりでは先へ進めないし、かつ、読者離れが進んでしまう。

ということで、合間の味付けで別のものを食べてみよう!お汁粉を甘くするのに塩を入れるようなものだね(なんか違うような気もするが……。まあ、細かいことは気にしない)。

オムライスばかりで大切な読者さまがおなか一杯になってしまってはいけないしね。
かつ、かつですよ、読者さまのリクエストにはちゃんとお応えしないとね(これ大事)。

で、かつ、かつですよ。

え?

かつ、どうしたって?

だから、かつ、です。

あのさあ、ふざけんなよ、かつ何なんだって?

だから、今回は「かつ」です!

オムライス同様、市民権を得ている「カツ」。
トンカツ、カツ丼、カツカレー。いや~、みんないいねえ……。

美味しそうな店をネット検索していたら、食べログの神奈川県トンカツランキング第4位の「桐の家(きりのや)」って、なんだよ、通勤途中じゃん!毎日横を通ってるじゃん!ここならすぐに行かれる。

悩みも考えもせず、速攻で桐の家に決定!パチパチパチ。
あ、これから先は「カツ」ではなく「かつ」と書きます。
何故かって?
オムライスのやわらかさに対抗するには、やはり「カツ」ではなく「かつ」でしょ。
かつ、桐の家の看板に、大きく「とんかつ」って書かれているから。この気持ちを汲まないと……。かつ、「カツ」じゃあなんか背中をビシって叩かれそうだもんねえ……。喝!

桐の家を訪れたのは月曜日の19:00頃。
おー、駐車場が満車だあ!
ちょっと昔っぽいけどとても温もりを感じる建屋を目にやきつけ、"よろしく!"と入口のドアを開ける。

わおー。すごい、大繁盛じゃん!
親子連れ、団体さん、仕事仲間風と、いろいろなお客さんで賑わっている。
月曜なのに……。どうやら休みの日は並ぶらしいというのが納得である。

注文するものは既に決めているけれど、メニューを拝見。
ふむふむ。おー、みんなひらがなだあ……。

ひれかつ定食 1,470円。
上ひれかつ定食1,995円
ろーすかつ定食 1,470円。
ちーずかつ定食1,575円。
しょうが焼き定食1,155円。
等々。

そんな中、この日は、ちきんかつ定食1,155円を注文。

オムライスのご飯の定番はチキンライス。“チキン好き”としては、日頃からちきんかつは好きで食べるけど、振り返ってみると、コンビニの弁当や総菜だったりで、とんかつ屋できちんとちきんかつを頼んだことはない。

人生初の、とんかつ屋さんのちきんかつ。
期待と期待と期待が交錯する。
(あ、これは交錯とは言わないか!)

しばらくして先付が運ばれてきた。
野菜の煮物、漬物、それと塩辛。

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先ずは野菜の煮物を……。

う、うまい!!
味の良くしみたこんにゃく。柔らかく上品な筍。甘い人参……。

続いて漬物……。
わー、これも美味しい!!
ご飯にとっておこう!これでご飯1杯は行ける!

最後に塩辛……

や、やばい、これ!
うますぎる!
とげのない、ほんのり柚子がきいた柔らくて優しい塩辛さが口いっぱいに広がる……。
うん、これもご飯にとっておこう……。
ご飯とキャベツはお代わり自由。このままではご飯が何杯あっても足りないぞー。

早くも感動した舌が、「かつ、かつ、かつ」と、かつコールを繰り返す。
五月蠅いなあ、まったく。せっかちなんだから……。我ながら自分で自分にあきれる。

「かつ、かつ、かつ」
それでもかつコールは鳴りやまない。
もう、勝手にしろ!

それからどれくらいの時間が経ったのだろう……。(きっとそんなに経っていない)

いよいよ、期待のちきんかつが登場!
6切れのかつが、花をあしらった皿の上に鎮座ましましている。

上げ色は薄く、見た目もサクサク。

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しかも……。
柔らかい!箸で簡単にヒュって切れる!

もう、食べる前に想像できちゃいますよね。

それからはもう、素敵な時間を過ごさせていただきました。
ほかほかで、サクサクで、やわらかくてジューシー。
口の中に幸せが広がっていく……。
それでなくてもあまり噛まないで食べてしまうので、これはもう、すっと喉を通って行ってしまう。

きっと、とんかつも美味しいんだろうなあ……。

あ、ついついかつに話が集中してしまったけれど、ご飯も、みそ汁も美味しい。
これは人気なのが頷ける。

桐の家は、創業30年以上の老舗。
田舎の民家風の建屋に、店内は家庭的な雰囲気と、ちょっとしたオシャレな雰囲気。
団体の座敷、テーブル席、カウンター席と、それぞれの客層を受け入れてくれる。

大勢のお客さんを相手に、従業員の接客もとても良い。これはいい店を知った。

「とんかつのある風景。ブーブー」というシリーズはできないだろうけど(いや、もしかすると……)、
新たなる発見ができて、とてもいい時間を過ごさせていただいた。

それと……。

自分では「ちきんかつ」を店で食べるという発想は全くなかったので、ご提案頂き今回の機会を与えてくださった読者さまには、改めて感謝申し上げます。

さあ、気分も新たに、またオムライスに突入するぞー!!
あ、こういったオムライス以外の要望がありましたら、もちろん、それも大歓迎です!!

2013年3月25日

■ 店舗情報 ■
・住所:神奈川県横浜市泉区和泉町3863-5
・電話:045-803-9880
・営業時間:11:30~14:00 17:30~21:00
・定休日:火曜日

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愛はチキンカツ

「カツと言ったらトンカツでしょ。チキン、ビーフなんて邪道でしょ!」
 それでなくても赤ら顔の東克也が、怒髪天を衝く阿修羅像よろしく血管を浮き上がらせ、大声でどなり散らす。
 今治和代は、”そんなにもトンカツ?”、そう思いながらも千手観音の安らかな表情を崩すことなく、必死に弁解を試みる。
「克也さん、そう興奮しないで。私はトンカツが嫌いって言っているわけではなくて……」
「いや、納得がいかない。初めて会ったときから、清楚で知性に満ち溢れた貴女には大いに惹かれている。貴女と一緒に生きて行かれたらどんなに素晴らしいことかと思う。あ、失礼。素晴らしいことかと思います。いや、頂けたらいいなあって思います。だけどこれだけは譲れない。そもそも、とんかつは豚にかつと書く。トンだぞ、トン。ビーフもチキンも”日本語+カツ”にはなっていないじゃないか!同じならばトンカツはポークカツと言うべきだ。それだけトンカツは日本人の心に沁みついてるんだ!トンカツこそがカツ。日本人の魂なんだ!」
 東の顔がますます赤みを増す。
 やれやれ。これは大変だあ。
 でも、克也さんには私も惹かれているし、私のトンカツ、いや、婚活もそろそろ決着つけたいし……。あ、私もちょっと動揺してるかな……。
 呼吸を整え、和代は口を開いた。
「ポークカツもあるから。ほら、西洋風の……」
 言いかけて、和代は、いけない!これは火に油だ……ほら、そうだろって言われちゃう……と、口に手をやった。

 が、時すでに遅し。

「ほら、そうだろ!ポークカツとトンカツが明確に分かれているだろ!トンカツはトンカツ屋、ポークカツは洋食屋。第一、トンカツ屋とは言うが、チキンカツ屋とか、ビーフカツ屋とは言わない。だからこそ私はトンカツにこだわるんだ。日本の味に。偉大なる日本の文化に。わかるかい?」
「え、……ええ……」
 千手観音の手が、散り際の花束のように、シューと音を立てて萎んでいく。

 そう言えば……。

 和代の中で、頭のレコーダーが逆回転サーチを始める。

 お見合いの日の自己紹介で言ってたっけ……。
“私の名は東克也。ヒガシと書いてアズマ。ヒガシはトン。通称、トンカツヤです”

 その時は場を和ますための、限りなくおやじギャグに近いダジャレかと思っていた。
“私、時任三郎のことをトキジンザブロウって思ってたんですよ。でも、知り合いにもっと変な子がいて、彼女、東邦生命のことを、ずっとアズマクニオ イノチって思ってたんですって。アズマクニオさんってすごいなあ、日本全国に熱狂的な追っかけがいるんだあって。この前、今度、アズマさんて人とお見合いするのって話しをしたら、彼女びっくりしちゃって……”

 確かに場は盛り上がり、お互い、初対面から飾らない話ができる気さくさに親しみを感じて意気投合。その後の交際も順調に続いた。
 今日はそろそろXデーの話でも、と思っていたところだった。

「わかってもらえればそれでいいんだ」
 阿修羅像の怒髪は柳のようにしな垂れ、見る見るくしゃくしゃの笑顔のブーフーウーに変わっていく……。

 和代、ここで引いたらだめよ。ちゃんと言わないと。気持ちがチキンになっちゃダメ!
 和代は自分で自分にそう言い聞かせ、大きな声で、はっきりと言った。
「克也さんのトンカツへの思いは良くわかったわ。でも、チキンカツも美味しい。この店の、桐の家のチキンカツは、特に。だから、私は今日はチキンカツが食べたい……」

 ブーフーウーの笑顔が、一瞬通りすがりの雲に覆われた太陽のように陰ったが、すぐに明るさを取り戻した。
「わかった。貴女がそれほど言うのなら、どうぞ。もともと貴女と喧嘩するつもりは、これっぽっちもないし、私も興奮して言い過ぎた。お互いの好きなものを知るのも大切なことだしね」
「うん!じゃあ、私はチキンカツ定食にする!克也さんは上ひれかつ定食ね!」

 よかった……。めったに表情を変えない千手観音が安堵の表情を浮かべ、店員に注文を告げた。

「2年位前に残念ながら閉店してしまったんだけど、上野に平兵衛というトンカツ屋があってねえ。ここがすごい。表の看板に、他店とは全く違いことを謳っている。味の話じゃあないんだ。地球環境の話。黒く汚染した油を使う殆どの他店は傷害罪だ!とか、肉を叩かないと柔らかくできないのは下手ということだ!とかね。店内にはパンフレットもあって、業界の現状、とんかつとは?、今後の業界等について事細かに記されている。こうなると、もう学問だよ。トンカツ学。……」
それからしばらく、カツが揚がるまで、ふたりはそんな”カツ話”に花を咲かせた。

 本当にトンカツが好きな人なんだなあ……。
 ちょっと熱くなり過ぎることろもあるけれど、東の一途な純真さに、和代は大きな信頼を抱く瞬間でもある。

 やがて、こんがりと揚がったカツがテーブルに運ばれてきた。

「わー、美味しそう!」
 和代がはしゃぐ。
 その笑顔を見て、東も幸せを感じる。
「いっただっきま~す」
そう言いながら、和代は一切れのチキンカツを箸で、すっと、ふたつに割った。

「えっ!」

 処理しきれなくなったパソコンよろしく、東が、かたまった……。
 和代が割ったチキンカツを見たまま……。
 うんともすんとも言わない。矢印ポインターが、動かない……。

 きょとんとした目で、割った半分のチキンカツを口に運ぶ和代。
 その動作を、口を開けたまま追いかける東……。

「ど、どうしたの?」
「……」
「私、何か変かなあ……」

「チキンカツって……」
「チキンカツ?」

「チキンカツって、そんなに柔らかいの?」

「うん、やわらかいよ」
「それに、すごく美味しそうだ……」
「うん、美味しいよ」
 東の問いかけに、平然と応える和代。

 一方。

 東の中で、今まで築き上げてきた価値観が、ガラガラと音を立てて崩れて行く。

「あれ、もしかして、克也さん、チキンカツって……」
 やっぱりね。この人、チキンカツ、知らないんだあ……。カツ博士なのに、本当にトンカツ一筋。
 変化観音の中でも最も変化し、救済力が強いと言われる千手観音。今こそ、迷える子羊に救いの手を差し伸べるべく、力の発揮どころだ。

「チキンカツ、食べてみる?」
 子羊と化した東のプライドが飛んでいく……。
「……いいの?……」
「もちろんよ。はい、どうぞ」
 和代はチキンカツが乗った皿を、満面の笑みと神々しい手で差し出した。

 CookDo回鍋肉のコマーシャルの杉咲花よろしく、東はチキンカツを一口つまむと、ゆっくりと口に運び、パクリと押し込んだ。

 東の表情が、唖然から笑顔、笑顔から涙へと、移り変わっていく……。

「…う…、う…、うまい。……うまい。うますぎるーーーーーーーーー!」

 そうなんだあ。そんな、泣くほど美味しいんだあ……。
 なんか可愛い。よしよし。いい子いい子。
 東の全身で感動する姿を、和代は冷静に見ることができた。

 なぜならば……。

 和代はまた、お見合いの日の会話を思い浮かべていた。

“私は今治和代です。イマバリといっても愛媛とは関係ないんですけどね。あ、そうそう、今治を逆に書くと治今じゃあないですか!東さんがトンカツヤでしたら、私はチキンカズヨ、チキンカツヨですね!なんて、ちょっと苦しいですよね”

 チキンカツヨ。
 そう、チキンが勝つ。

 うふふ。これで夫婦生活は安泰ね……。

 東が、こわれて行く……。

「チキンカツだあ!世の中はチキンカツだあ!明日はチキンカツだあ!愛は、愛は、愛はチキンカツだあーーーーー!!!!」

 そう叫ぶと東は、突然、かつてのヒットソング「愛は勝つ」の替歌「愛はチキンカツ」を唄い出した。

 ♫
 心配ない からあげ(からね)
 君の お餅が(想いが)
 誰かに 豆腐(届く)
 明日が きつねうどん(きっと来る)

 どんなに こんにゃくで(困難で)
 くじけ そうめん(そうでも)
 とん汁(信じる)事を
 けして や明太子(めないで)

 カレーうどん カレーライス
 (Carry on carry out)

 しば漬け 福神漬け(傷つけ 傷ついて)

 愛する せツナサラダ(つなさに)
 少し疲れ 天丼(ても)

 oh・・・・・・

 どんなに こんにゃくで(困難で)
 くじけ そうめん(そうでも)
 とん汁(信じる)事さ
 必ず 最後に チキンカツ(愛は勝つ)

 これで完璧ね。

 結婚に当たり主導権をどちらがとるか、その後の人生にとって、これはとても重要なことだ。
 阿修羅像をブーフーウーに変え、終いには迷える子羊に仕立て上げた千手観音、今治和代。
 大丈夫だ。日本の未来は、まだまだ明るい。
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