2014
01.28

Strawberry Moon 1

Category: ストーリー
どこまでも続く湖面を、どことなく春めいた風が渡る。
やがて風は湖畔に到達し、ふんわりと、並木の横を通り過ぎて行く。

心地よさそうに揺れる木々。
やさしき葉擦れの音色に、ボクは目を閉じ、そっと耳を傾ける。

あの日と同じ音色。

滋賀県大津市への日帰り出張の帰り、岐路につくまでのわずかな時間を利用して訪れた膳所の地。パステル調の思い出が、瞼の裏によみがえる。


「やっぱり50センチアップを釣るなら琵琶湖だよね!」

当時ボクは、仲間たちと、流行のブラックバス釣りに興じていた。
そんな仲間内の誰からともなく出た言葉。

賛成6名。反対ゼロ。
必然的に、ボク達は夏休みを利用した琵琶湖突撃計画を打ち立てた。

「先ずは膳所城址公園を目指そう!」

深夜、ワンボックスカーで都内を出発。ボクの運転で、一路、琵琶湖を目指す。

「じゃあ、シンが寝ないように私が助手席で相手してあげるよ!」

ピンク色のタンクトップ姿で助手席に乗り込むユキ。
無防備な胸元が、運転手にはまぶしすぎる。

そんな彼女との距離が光の速さで縮まったのは、東名高速に乗る10分ほど前のことだった。

「タバコ、吸う?」
マールボロの箱に手をやり、ユキが言った。

どうしようかな。そうだなあ、高速に乗ったら窓開けられないしなあ……。

「ありがとう。じゃあ、ちょうだい」
3秒遅れの返事をしながら、ボクは彼女に向かって左手を差し出した。

「うん。あ、ちょっと待って」

彼女はマールボロを自分の口にくわえて火をつけると、それをボクの口に運んだ。

え?

フィルターのちょっと湿った感覚に、唇がドキドキする。

これってどういうこと?

ボクは、深呼吸をするように、煙を大きく一息吸い込み、ゆっくりとそれをはいた。

「シン、オムライス、好きでしょ?」

「おー」

「それと、いちごも」

「うん、好き」

「なんか、親近感わいちゃってさあ」

唇に感じたドキドキが体中に入り込む。

そして同時に、ドキドキはボクの胸に恋の予感を届けてくれた。

本当は暗くてはっきりとは見えないのだけど、助手席の窓の先をぼんやりと見る彼女の目が、とてもキラキラしているように思える。

「大福も好きだよ」

「あー、私も好き! なんかババくさいって言われるけど和菓子って大好きなんだあ!」

嬉しそうな笑顔がボクの顔をのぞき込む。

ほのかに香るつややかな髪の香りが、やわらかいぬくもりを運んでくれる。

彼女が大福も好きなのことを、ボクは知っていた。

過ぎ去る街灯に映し出される彼女の穏やかな表情(かお)がとても愛おしい。

瞬間、時間がとまった。

こころが、通じている。

「シン、今日、どんなルアー持ってきた?」

マサキのひとことで、ほんのわずかなふたりの時間は終了を告げた。

それでもボクのこころは笑顔にあふれていた。

窓の向こうの月も、ニッコリと笑っている。


つづく

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コメント
 こんにちは。
 あまい感じで良いですなぁ。
 この先の展開を想像してしまいました。でも、下手に書き込むと邪魔になると思うので、やめときます。
 続きを楽しみにしてます。
miss.keydot 2014.01.28 09:12 | 編集
Omunaoさん、今日も感性豊かですね♪
時に、女性?と思えるほど、表現がやさしいです。

ところで、釣りされるんですか?
私は釣りはやったことないんですが、
何せ、釣り軍団の一員になっているので(入らされた^^;)
ブラックバスとかルアーとか聞くと、つい反応してしまいます(笑)

ももこdot 2014.01.28 15:06 | 編集
こんばんわ
ロマンチックなお話だと思いました。
ネリムdot 2014.01.28 22:10 | 編集
miss.keyさん、こんにちは!

ありがとうございます!
あ、もうわかっちゃいました?

えー、逆に聞きたいですよー
気になるなあ。。。

シンとユキがどうなるのか、自分でも楽しみです!!!!!
Omunaodot 2014.01.29 02:56 | 編集
ももこさん、こんにちは!

ありがとうございます!
へええ、釣り軍団、入らされちゃったんですね(笑)
ルアーもやるんですね!
どんな釣りをするんですか???

ボクは、今はやりませんが、以前は富士五湖方面を中心に
結構行ってました

湖での釣りって、空気や景色がとてもきれいで心が落ち着きます!
あ、花粉症の時期は最悪ですけどね……
Omunaodot 2014.01.29 03:03 | 編集
ネリムさん、こんにちは!

ありがとうございます!
ネリムさんは構想を練ってストーリーを書きますか???

ボクは書き始めたら登場人物まかせのところもあって、
この先どうなるのか、自分でもわからないところがあります。。

コンセプトは決めているのですが、どうなることやら……
Omunaodot 2014.01.29 03:07 | 編集
 こんにちは。度々お邪魔します。
 え?言って良い?でもたまたま当たってたらぶち壊しだし、ぜんぜん違ってたら違ってたでとっても邪魔じゃないですか?まあ、クイズじゃないから当たり外れを言うのも何ですけど・・・。

 飽くまでへそが横に付いた人間の言う事ですから笑い流してくださいね。

 ズバリ、彼女の微笑みは「良いお友達」への優しさ。彼女の本命はマサキ君で、主人公は好きであるが故に勘違いしてしまった。そして舞台は湖の畔のペンション。宴会の後、酔いつぶれた主人公を残し、星空の下、湖岸で口付けを交わす二人。目なんか覚まさなきゃ良いのに、起きてそれを目撃してしまう主人公。失意に打ちのめされ、朝霧の中を家路につくのであった。エンディングテーマは大滝詠一「レイクサイドストーリー」。あれ、まんまじゃん・・・。

 ばか者ですみませんm(_ _)m
miss.keydot 2014.01.29 20:17 | 編集
miss.keyさん、おはようございます!

うおーーーー!!!!
なるほど!
そう来ましたか!

うん、miss.keyさん色満載ですね!
お聞かせいただきありがとうございます!!

「ともだちに譲る」ってのはありますね。

さて、シンに聞いてみましょうかね(笑)

続きは執筆中なので今しばらくお待ちください!
Omunaodot 2014.01.30 06:34 | 編集
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