2014
06.27

虫眼とアニ眼

Category: その他
毎朝、会社のそばで5~6人で登校するこどもたちとすれ違う。
とても元気のよい男の子たちの集団なのだが、今朝、その子たちが道路にしゃがんで何やら盛り上がっている姿に出くわした。
何だろう?
「すげーなあ、2列になってる」
「なんで2列なんだろう?」
どうやら蟻の行列を見ているようだ。

目を輝かせて、みんなでじっと食い入るように見ているその姿。
あー、自分もこんなときがあったっけ。そんな思い出がよみがえる。

考えてみると、先日書いた「紫陽花とでんでんむし」ではないけれど、蟻の行列なんて何年見ていないだろうう。
そもそも、蟻の存在なんて頭の片隅にすらない。

砂遊び。
野原でのバッタ採り。

こどもの頃は地面と仲良しだった。
どれだけの時間を地面にしゃがみこんで過ごしたっけ。

体が成長し物理的に地面と自分の目の距離が離れて行くに従って、こころも地面から遠ざかっていった。

「バッタを採りに行く」
これは大人の言葉だ。

子供の頃は違う。
「トノサマバッタを採りに行く」であり、「ショウリョウバッタ(キチキチバッタ)を採りに行く」である。
そして、どこに行けばどんな虫がいるのか、しっかりとマッピングされたいた。
つまり、「自然」が生活の中に溶け込み、より密接に、より詳細にインプットされていたのだ。

やがて時が経ち、簡単に描けていたバッタの絵は描けなくなり、頭の中の知識も「トノサマバッタとショウリョウバッタの違い」から「連立方程式や微分積分」に変わり、「効率的な仕事の仕方」に変わった。
そして、仲間の笑顔に囲まれて通学していた朝の時間は知らない顔で埋め尽くされる満員電車で通勤する時間へと変わり、ともだちに真剣に悩み相談をしていた時間は弱みを見せることなく悩み事を隠して作り笑顔で気丈に振舞う時間へと変わった。

大人になるとは?

ここに一冊の本がある。

140627mushinome1.png


養老孟司さんと宮崎駿さんの対談集、「虫眼とアニ眼」。

新潮文庫の内容紹介にはこう書かれている。

人・自然・こども――たくさん話しました。
小さな虫の動きも逃さず捉えて感動できる「虫眼の人」養老孟司と、日本を代表する「アニメ(眼)の人」宮崎駿が、宮崎作品を通して自然と人間のことを考え、若者や子供への思いを語る。自分を好きになろう、人間を好きになろう、自然と生きるものすべてを好きになろうという前向きで感動的な言葉の数々は、時代に流されがちな私たちの胸に真摯に響く。カラーイラスト多数掲載。

とても面白い対談集である。
ここで内容を紹介するときりがないので興味のある方は是非お読みいただきたいのだが、ひとつだけ宮崎さんの言葉を紹介しておこう。宮崎さんが考える「子供の本質」について。
「千と千尋の神隠し」を作った時の話。宮崎さんの目の前に10歳くらいのこどもたちがいて、「ぼくはこの子たちのために映画を作っていないな」と思って作ったと、宮崎さんは言っている。

子どもたちの心の流れに寄り添って子どもたち自身が気づいていない願いや出口のない苦しさに陽をあてることはできるんじゃないかと思っています。ぼくは、子どもの本質は悲劇性にあると思っています。つまらない大人になるために、あんなに誰もが持っていた素晴らしい可能性を失っていかざるを得ない存在なんです。それでも、子どもたちがつらさや苦しみと面と向かって生きているなら、自分たちの根も葉もない仕事も存在する理由を見出せると思うんです。

子供の本質は、つまらない大人になるために素晴らしい可能性を失っていく悲劇性。

バブル崩壊。
資本主義の限界。
二極化による一億総中流幻想の消失。
大震災。
少子化によるいびつな世代構成。
正義と悪を明確に色わけることで加速するファシズムへの道。
物質的な豊かさ追求による精神的な貧しさの促進。

世の中の現状を踏まえると、正直、未来が明るいとはとても思えない。
生まれた時代、環境には逆らえない。
ひとはみな、生まれたときから「社会の一員」に組み込まれ、死へのカウントダウンを歩んでいく。

それでも「希望」を「明日」を信じて生きて行く。
いや、だからこそ「希望」や「明日」を信じて生きて行く。
だから、明日のために、今日を、今を生きる。
祈りは通じる。
目に見える物質的な行動に比べると、目に見えない精神的な祈りは地味に思えるけど、人々の精神が作り上げる「祈り」のパワーは強烈だ。

大人がこどもにできること。
大人がこどもに残してあげられるもの。
それは大人だからこそ考えられるし、具現化できる。

こどもの頃の濁りのない目で、みんなで祈ろう。素敵な明日が来ることを……。


スポンサーサイト

トラックバックURL
http://omunao1224.blog.fc2.com/tb.php/481-499d1c0d
トラックバック
コメント
管理者にだけ表示を許可する
 
back-to-top