2014
08.16

川越にて その2

Category: その他
ここはどこ?
川越スカラ座の前で立ちすくむ。

小路にあるちっぽけな映画館。
券売機があるわけでもない。
待ち時間が表示されているわけでもない。
簡素なポスターと、狭い入口と、切符売場の窓が、にっこりと微笑んでいる。

幼少の頃、親や友人と行った、地元の映画館のにおいがする。

郷愁。
まるで「ニューシネマパラダイス」の世界に入りこんだような……。

「いらっしゃいませ」
ほどなくして、入口に立っているボクを見て、中から清楚な女性が出て来た。
「一般一枚でいいですか?」
「はい」
「次の上映までもうちょっと時間がありますが、どういたしますか? ロビーで待たれてもよいですし……」
時計の針は13時15分を指している。
「あ、では、ロビーで待ちます」
そういってボクは、ロビーに入り、ソファーに腰かけた。

辺りを眺めまわす。
「二葉亭四迷の『浮雲』は永遠のアナクロニズムである」
高校の国語の授業でそんなことを習った記憶があるが、それになぞらえた言葉が頭を過ぎる。
「『川越スカラ座』は永遠のアナクロニズムである」

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川越スカラ座が出来たのは明治38年のことだ。
「一力亭」(寄席)としてスタートし、その後、明治40年「おいで館」へ、大正10年に「川越演芸館」へと改名を重ねる。
そして昭和15年に映画館としての原点である「川越松竹館」に生まれ変わり、昭和38年には現在の名の「川越スカラ座」に改名された。
平成19年 5月27日に閉館となったが、平成19年8月18日に復活。現在に至っている。

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写真:川越スカラ座ホームページより。

ふと、ソファーの前のテーブルに視線を落とす。
無造作に置かれた「川越スカラ座お客さまノート」が目に飛び込む。
手に取り、何とはなしにパラパラとページをめくる。
大量生産の機械的かつビジネス的な世の中にあって「ぬくもり」として存在する川越スカラ座の「人肌」を詰め込んだノート。確かな息遣いが、ボクのこころに聞こえてくる。

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やがて1回目の上映が終了。
「野のなななのか」の小冊子を購入し、劇場内に足を運ぶ。
席数は120程度。
そこにいる観客は、ボクを入れて全部で13人。
みんな、どんな思いでこの映画を観るのだろう……。

13時50分。
開演のベルが鳴り、照明が落ちる。
劇場が、年輪を重ねた大林ワールドへと変わる。

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つづく

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コメント
こんばんは…、映画カッパです。
実は、ワタシも同じような体感と感覚で、
この映画をお隣、香川県高松市てせ見ました。
シネコンではなく、映画を愛する小さな劇場…。
不思議で、何故か懐かしい空気感。
そして、大林ワールドへと…
映画カッパdot 2014.08.16 22:52 | 編集
映画カッパさん、こんにちは!

この映画をこういった映画館で観ることができたのは、とても有意義なことで、かつ、
偶然ではなく必然のような気がします。
この日の2回目の上映はボクを含めて13人。
これで損益が成り立つのか???
窓口のカウンターに「修復募金」がありましたので、チャリンと……。

大切なものって何だろう……。

改めて、強く思ったひとときでした。
Omunaodot 2014.08.17 07:59 | 編集
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