2015
03.02

【再掲載】 La Plata

いつの間にかブログを始めて2年が経過した。
ある想いで始めたブログ。
ちょっと思い出に浸りながら、今日は一番好きなオムライスのお店とそこで思いついたストーリーの再掲載です……。


古都鎌倉の異次元空間

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今回は江ノ電でのんびりと海を眺めながら古都鎌倉へ。
場所は鎌倉駅から鶴岡八幡宮方面へと続く「小町通り」。
う~ん、さすが鎌倉。正月を過ぎてもすごい観光客。
小町通りはラッシュアワーのターミナル駅のよう。
そんな中、人の流れに乗って1軒目の目的地である「La・Plata(ラ・プラタ)」を目指す。
ん?1軒目?
そうなんです。今日は2軒ハシゴ。
お腹いっぱいで行くのは失礼なので極力1日1軒と思っているのだけれど、すごく近いところに行きたい店が2軒あるので、今日は失礼して……。

さてさて、目的のラ・プラタなんだけど、ちょっとわかりにく場所にある。
小町通りから1本裏の路地に入ったところ。注意しないと曲がり角を通り過ぎてしまう。
勝手知ったる鎌倉。確かこの辺に……。
えーと、えーと、、、

おー、あったあった! 
店の前に「オムライス」と書かれた大きな看板が!!!!!!
こういうの見ちゃうとホントわくわくする。
しかも店の前の通りは、小町通りと打って変わってとても静か。
中も静かだったらいいなあ。でも、女性やカップルに人気らしいので、男1人で行くのはちょっと恥ずかしい。
そんなことを思いつつ、2階にある店に向かう階段をのぼる。
ちなみにこの階段はとても急なので、ヒールとミニスカは要注意。
覚えておいてください。

中はどんなカンジなんだろう。
ちょっとドキドキしながら入口のドアを開ける。

……。

おー!!
なんだここはーーーーーー!!!!!!!

まさに、ここはどこ、私は誰状態??? 
目の前に、突如クリスマスの風景が広がる。

「いらっしゃいませ、お好きな席へどうぞ」
あっけにとられるボクの耳に届いた女性の柔らかい声に誘導され、席へと着く。

昼食時を過ぎたせいか、お客さんはひとりもいない。
壁のディスプレイではクリスマスソングを歌う様子が放映されている。
そう、ここは1年中クリスマス!
何から何まで手作り感満載。各テーブルに置かれたメニューにしてもとても温かみを感じる。
そしてメニューを開くと、1ページ目に……。

Santa’s Favorites
キーンと凍るクリスマスイブの夜空をトナカイの牽くそりに乗って駆け抜け、一晩で世界中の良い子にプレゼントを届けるサンタクロース。
そんなハードスケジュールをこなす彼の大きなお腹を満たし、リラックスさせるサンタの奥さんの癒しの部屋と手作り料理。
素材や調理法にこだわり、優しさのスパイスを効かせたミセス サンタのキッチンです。
ヨーロッパのクリスマスいっぱいの夢あふれるお部屋で、ヘルシーで美味しいお食事と素敵な時間をお過ごしください。

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もう感動!!
食べる前から、ラ・プラタワールドに引き込まれてしまった……。
しばし雰囲気に浸ってからオムライスをオーダー。
オムライスは、天使のオムライス(半熟玉子のふわふわオムライス)900円。
ハッシュドビーフのオムライス1,300円。
メキシカンミートオムライス1,300円。
この3種類。
今回は初回なので天使のオムライスを注文。

ほどなくしてオムライスが到着。
おー、美しい!!
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すごく繊細で、優しい盛り付け。
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一番上に乗ったシュークリーム生地で作った天使の羽が安らぎの世界へといざなってくれる。
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でも、すごいのはこれからだった……。

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ソース、うん美味しい。
マイルドで、生クリームとの相性が抜群。
ご飯、うん美味しい。
ほどよい食感と味付け。
卵、……、玉子、……、タマゴ、……、たまご、……。

もともと卵は大好き。
でも、こんなに深みがあって、ソースとご飯にマッチしている卵は食べたことがない。
なんか、「美味しい」の次元が違う。口の中で感動が広がる。
食べ終わってからもしばらくは、クリスマスソングに耳を傾けながらボーッと余韻に浸ってしまった。


   ☆


ラ・プラタの由来は「真っ白に輝き続ける『プラチナ』のラテン語の語源『Plata』」から。
大町ではじめ、4年前に小町に移ってきたそうだ。
「うちは家庭の味ですね。でも卵料理ってそれぞれの家庭の味があるから難しいですよね」と笑顔で語るミセスサンタ。
鎌倉はお年を召した方が多いので、あまりこってりさせないようにデミグラスソースは肉より野菜、果物重視。卵も生クリームを混ぜないとのこと。私自身あんまりこってりがダメなんですよ、と。
卵はこの店のデミグラスソースに合うものを探したと言う。
「高ければいいってもんじゃないんですよね……」
納得。しみじみと語るその言葉に、深みと重みを感じる。

部屋、料理、接客、何もかもが優しさと癒しに包まれている。
完成されたひとつの世界。そう、この店の中は、外界とは異次元のおとぎの国の世界のようだ。

「今日はこれで、一日中幸せに過ごせます」
帰り際、そんな言葉が、何のてらいもなく自然と口をついた。

2013年1月12日

■ 店舗情報 ■
・住所:奈川県鎌倉市大町2-9-2
・電話:0467-60-5258
・定休日:第1月曜日

La Plata 食べログ情報 

ラ・プラタオムライス / 鎌倉駅和田塚駅


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天使の忘れもの

 小さい頃の記憶は現実なのか夢の中のことなのか境界があいまいで、夢で見たことを本当にあったことと思い込み、大人になってもそれを実際の出来事だと信じ込んでいることがある。
 
 でもそれは、小さい頃に限ったことではないのでは。
 
 夢のような本当の話。本当のような夢の話。
 もしかしたら現実と夢の世界に境界なんてなく、気がつかないうちに人はそこを行き来しながら生きているのかもしれない。


   ☆


「ほら、この店」
 夏の夕方が日の入りを躊躇する頃、慎司は、真っ白いワンピースと麦わら帽子を身にまとった晴香と一緒にラ・プラタに向かう階段の前に立った。
「きっと要望に合うはずだよ」


   ☆


「松橋くん?」
 2週間ほど前の朝、いつもと同じ通勤電車のいつもと同じ席に座った慎司の前に、ミュールを履いた透き通った足が現れた。
 寝ぼけ眼で、ゆっくりと頭を上げ、足の持ち主の顔を見上げる。
 慎司を見ながら微笑む女性。
 ビデオカメラの焦点が合うように、やがて慎司の記憶の焦点が定まった。
「あ、えっ、なんで……」
 微笑みながら黙ってうなずくと、女性は
「隣、座ってもいい?」
 そう言いながら慎司の隣に腰掛けた。

 10年ぶりの再会だった。

「戻って来てたの?」
 中学の途中で日本を離れた晴香に向かって、慎司が言う。
「うん、たまたまね。またすぐ帰るんだけどね」

 初めて付き合った相手との再会。

 偶然というのは突然にやってくる。たまたまわずかしか帰ってきていない晴香に、この時間のこの車輌のこの席で会うなんて。
 再会を喜ぶ黒目がちの大きな目。
 さらさらとした長い髪。
 きちんと両膝に置かれた小さな手。
 品のある落ち着いた声。
 大人になった晴香をちらちらと見やる慎司の中から、美しい思い出が堰を切ったようにあふれ出す。

 あふれ出すのは思い出だけではなかった。
 嫌いで別れたわけではない。物理的な距離は、まだ幼い二人には遠すぎた。
 満員電車の空間が、まるで隣に座る晴香と二人しかいない観覧車の中のような、そんな錯覚に陥る。
 どうしようもなく、思いが、10年前に飛び込んでいく。
「もしよかったら、連絡先とか教えてもらえない?」
 自然と口をつく慎司の言葉に、晴香は戸惑いの表情を浮かべると、
「ごめんなさい。私、携帯持ってないし、連絡先はちょっと……」
 申し訳なさそうにそう答えた。
「そうなんだ。わかった。じゃあ、ボクは毎日この席に座っているから、時間があったらまた会いたいな」
 やがて慎司の降りる駅が近づいてきた。
 しばしの沈黙ののち、晴香がつぶやく。
「私も会いたい……」
 どこか憂いをたたえた声だった。
「ねえ、ひとつお願いがあるの」
 席を立とうとする慎司に向かって、意を決したような表情(かお)で晴香が言う。
「どこかで、あのときのクリスマスの続きがしたいなあ。私、2週間後にまたこの電車に乗る用があるから……そのときに会えたら」


   ☆


 ラ・プラタの前に立った慎司は、優しく晴香の手を取り、階段をのぼった。
「なんかわくわくする」晴香の嬉しそうな声が壁に響く。
「じゃあ、入ろうか」そう言いながらドアを開ける慎司。

 その瞬間、一面クリスマスの世界が飛び込んで来た。

「すごーい」大きな目を更に大きくしつつ、それ以上は声にならない晴香。

 お客さんのいない静かな店内は、優しく暖かい雰囲気に包まれている。
 奥のテーブルに着くと、二人はグラスワインと天使のオムライスを注文した。
「これ、そっちに置いといて」
 甘えた声で麦わら帽子を差し出す晴香。それを受け取りながら思わず笑がこぼれる慎司の前を、晴香のつややかな髪の香りと温もりが通り過ぎる。
「こんなとこあったんだあ……」キラキラと輝く晴香の目は、あたりを見回した。
「探したよ、夏にクリスマスができるところ」
「ごめんね、わがまま言って」
「ううん」慎司はゆっくりと首を横に振って続けた。
「神様はボク達を見捨てなかったね。だって、ボクもあの時の続きがしたかったんだから……」
 

   ☆


 中学2年のクリスマスイブ。この日、慎司と晴香は、近所の教会のクリスマスパーティーにクラスの仲間と参加していた。照明は落とされ、ほのかなキャンドルの踊りでパーティーは進んでいく。キリスト教のことはわからないが、パイプオルガンの音色にあわせてみんなで歌う賛美歌に、二人は厳かなものを感じていた。
 そんな中、キャンドルの向こうから晴香が慎司に耳打ちをする。
「ねえ慎司、結婚式ごっこしない。ほら、汝はこの者を妻としてって言うでしょ。あれやろうよ……」
「いいよ」一瞬とまどったが、慎司は頷いた。
 と、その時
「ではみなさん、席を変えて他の方々とお話しましょう」
 主催者の声が響いた。

 結局そのとき、晴香の要望が実現することはなかった。


   ☆


「では、カンパーイ」
 ワイングラスを重ねる二人。
「あの時はりんごジュースだったね」
 二人の笑顔があふれる。
「そうだったね……。ねえ、続きをしようか」

 ♫ Silent night, holy night! All is calm, all is bright.……

「きよしこの夜」が流れる店内は、静粛な空気に包まれている。

「じゃあ私からね。松橋慎司。汝はこの者を妻とし、健やかなるときも病める時も、生涯変わらぬ愛を誓いますか」

「……はい、誓います……。じゃあ、次はボク。青山晴香。汝はこの者を夫とし、健やかなるときも病める時も、彼を愛し、彼を助け、生涯変わらぬ愛を捧げ続けることを誓いますか」

「……はい、誓います」

 粛々と、二人の時間は流れて行く。

 ♫ I‘m dreaming of a white Christmas ……

「うそでもいいから、慎司には一度言ってほしかったんだ。ずっとそれを思ってたの。それと、ここって、なんかお母さんのお腹の中にいるみたいですごく安心する……」
 曲が「ホワイトクリスマス」に変わった頃、天使のオムライスを口にしながら晴香が言う。
「ありがとう、慎司、私のために。これで思い残すことなく帰れるわ。私、すごく幸せよ……」
「今度はいつ戻って来られるの?また会えるよね」
 黙って首を横に振る晴香。笑をたたえた潤んだ瞳の中で、照明がゆらゆらと揺れている。


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 その夜、眠りについた慎司は、遠くから聞こえる晴香の声を耳にした。

「さよなら、慎司」

 ふと、窓の外を眺める。

 トナカイが牽くそりが、澄み渡る天空に向かって駆け上がって行く。
 そこには、まるでウェディングドレスか羽のついた天使の服のような真っ白いワンピースに包まれ、麦わら帽子が飛ばないように片手で頭をおさえながら、一方の手を大きく振る晴香の姿があった。

 それを優しく見守り、手を振り返す慎司。

 ラ・プラタのときと同じ麦わら帽子からのつややかな髪の香りが、そよ風に乗って慎司の元に届く。

 ありがとう晴香。君は遠いところから、わざわざボクに会いに来てくれたんだね。

 あ、忘れ物……。
 慎司は天使のオムライスを前に二人で撮った写真を取り出した。
 ちょっと待ってて、今渡すから……。
 唇をかみしめながら、写真を、紙飛行機の形にひとつひとつ丁寧におり込んで行く。
 もうちょっと。
 もうちょっと。
 君と僕の。
 ボクとキミの。
 ……。

 さあ、できた。
 ふたりと天使のオムライスを乗せた紙飛行機が慎司の右手に握られる。
 晴香、ちゃんと受け取るんだよ!
 慎司の手を離れた紙飛行機は、スローモーションのようにゆっくりと、でも確実に、晴香の元へと飛んで行く。

 また出会ったら、今度こそ一緒になろうね。

 紙飛行機が到着したそりの上で、天使の羽がキラリと輝く。
 やがて小さくなったそりはひとつの光になり、ベガ、デネブ、アルタイルの夏の大三角形の中に吸い込まれ、静かに消えて行った。


 おわり

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コメント
切なくなりますね。青春のあの頃
あの時間が戻ったら、やり直したいことがたくさんあります。

悲しい別れがあったとすれば
綺麗なままで・・・
また、苦しいままで・・・
時間が止まっている。

あの時、こうしていれば・・・とか。

だから、今があるのだけれど(*^_^*)
Miyudot 2015.03.04 06:30 | 編集
Miyuさん、こんにちは!

時間は一方通行に進んで良く。
でも、自分のこころの中では止まったり戻ったり。
そして、時間を戻せない現実の壁にぶつかる・・・
だから、ぬくもりを求めるのでしょうか
人間って、何なんでしょうね。。
Omunaodot 2015.03.05 06:36 | 編集
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