2015
04.24

青春のリグレット

Category: ストーリー
みなさま、ねこキャラ投票ありがとうございます!
いやあ、すごいことになってます。
まだまだ続きます。
引き続きよろしくお願いしま~す♪

今日は2013年の秋に書いたスト―リーです。

あの時間(とき)
それは大切な、……



青春のリグレット

少しばかり秋色を増した風がカジュアルデーの終わりを告げ、またネクタイを締めて会社に行く季節がやってきた。
ボクは、すでに結び目が作られ首にかけて締めればいいだけの状態になった1本のネクタイを、クローゼットから取り出した。

グレー系のギンガムチェックのネクタイ。


「あ、そのネクタイいい! センスいいね! スーツにも合ってる! でも、その結び方よくないなあ」
春のやさしい陽光を浴びながら、彼女はボクの襟元を見つめ怪訝そうに首をかしげると、
「ねえ、私に結ばせて!」
そう言っておもむろにボクからネクタイを引きはがした。
「私ねえ、高校の3年間ずっとネクタイしてたから、結構うまいんだよ」
自分の首にネクタイをかけ、手際よく見事なウィンザーノットを作り上げていく。
「よし、できた!」
次の瞬間、ネクタイは彼女の体から離れ、その鮮やかな手つきにただただ茫然として固まったボクの体に装着された。
「うん、素敵!」


ボクたちが会える時間は限られていた。
物理的な距離の制約。
「じゃあ、ボクもきれいにウィンザーノットが結べるように練習するけど、今度会ったときにまたネクタイ頼むね。それまでこの結び目をキープしておくから!あ、それとも、これはこれで次は別のネクタイにしようかな」
新幹線のホームでそういうボクに、
「いいよ!次はどんなネクタイなのか楽しみ。練習の成果も見せてね!いい、私の教え通りに結ぶのよ」
とびきりの笑顔が頷く。


ボクはクローゼットから取り出したネクタイを、ゆっくりと首にかけた。
ネクタイ、ありがとう。今でも本当にきれいな結び目だって思うよ。
それと、君のことを恨んだり憎んだりはしていないよ。
想い出は大切にしていたいとは思う。
このネクタイもね。
でも、もう、季節は変わったんだ。
大丈夫、ボクだって上手にネクタイを結べるさ。
あれからすぐに練習もしたんだ。
ネクタイを結ぶのは久しぶりだけど、君に笑われないように結べる自信はある。
だから、想い出ともさよならするよ。


しばらくの間鏡とにらめっこしたボクは、きれいに作られた結び目をほどいた。
さあ、笑顔で明日に向かって行くよ。
そっと目を閉じる。
葉先の朝露のようなひと粒の滴が、ギンガムチェックのネクタイを伝う。

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