2016
01.01

Start each day with a smile! ~ 毎日を笑顔ではじめよう ~ 2016

Category: ストーリー
みなさま、明けましておめでとうございます!
本年もよろしくお願い致します!!


さあ、2016年がスタートしました。
今日は昨年の1月1日に掲載したストーリーの再掲載。
えー!正月早々かよ~!!

「笑顔でありがとう」
そして、
「毎日を笑顔ではじめよう」

2015年、ボクはその大切さを、身をもって教えていただきました。
2015年はとてもよい年であったと思います。
そんな経験ができたのは、もしかしたらこのストーリーを年始に書いたおかげ??
自分で言うのも何ですが、そう思ってしまうほど、この話、優しい気持ちになれて大好きなんです。
だから、2016年も、もしかしたら2017年も2018年も、験担ぎと言うか原点と言うか、2015年と同じスタートをきりたいと思います。
今年も笑顔ではじめましょう!

では、ラゾーナ川崎プラザにある「デリッシュ・ウフ」で思い浮かんだストーリーです!!
よろしかったらお読みくださいませ。


Start each day with a smile!

 午後5時。JR川崎駅から続く通路を抜け、ラゾーナ川崎プラザ2階のデッキに出る。
 無防備な頬をちくりと刺す北風。去りゆく年を名残惜しむように暮れなずむ西の空。高層ビルの上には、太陽からバトンを受け取った月が、「まかせろ」とばかりに輝きはじめている。
 さてと、オムライス専門店かあ……。
 正也は、目的の店の位置を確かめるべく壁に貼られた案内板に目をやった。
 10年ぶりの川崎。西口は工業地帯のイメージしかなく、およそ無縁であった買い物客でごった返す変わり果てた姿に戸惑う。
 ラゾーナ川崎プラザにある各店舗には店番号がつけられている。
 418デリッシュ・ウフ。4階を示す4に連番の18を加えた418が目的の店の番号になっている。
 案内板に従い店へと向かう。途中、通り抜けられるだろうと踏んでいたところが壁であったりしたおかげで、おのぼりさんのごとく迷った挙句、少々遠回りをしながらも、やがて「ふわとろオムライス」と大きく書かれた店の前に正也は到着した。
 通路から続く扉のないオープンスペースの入口に立つ。
「いらっしゃいませ」
 店内から明るい声が響く。
「あ、ちょっと待ち合わせをしてるので」
 そう店員に伝えるやいなや、正也の視界に、奥まった2人掛けの席から大きく手を振るラフウェーブの笑顔が飛び込んできた。
 あ、もう来てたんだ。
 軽く右手をあげ、笑みを返しながら席へと向かう正也。店内に流れるシャンソンの軽快な曲調が、行ったこともない脳内イメージのパリのビストロかブラッスリーを連想させ、自然と足取りを軽くさせる。
「やあ、待った?」
 正也はラフウェーブの中で輝く黒目勝ちの目を覗きこんだ。
「10分くらいかな」
 悪戯っぽく口を曲げながら、祥子が応える。
「まだ約束の10分前だけど。相変わらず早いね」
「待たせるのって嫌いだからね」
「たいていは男が待ってて、『ごめ~ん、待ったあ』なんて笑顔で寄ってくる女の子を迎えるもんだけど、前もそんなことはなかったし、今日もそうなっちゃったね」
 祥子は「あなたが何時くらいに来るか、なんとなくわかっちゃうんだから」と言わんとばかりの笑みを浮かべメニューを手にした。
「どれにする? はやく決めよ!」
 はいはい、年下のお姉さま、わかりましたよ。メニューを受け取った正也はぎっしりと並んだオムライスに目をきょろきょろさせる。
「私はサラダ仕立てのオムライスにするわ」
「そう、オレは……」
 身を乗り出しメニューを指さす祥子の艶やかな髪の香りが、正也に12年前の記憶を呼び戻させる。

   ☆

「さあ、美味しいオムライスはいかがですか。そこのお嬢さん、どう、寄ってかない?」
大学で軽音楽部に所属していた正也たちは、その年の学園祭でオムライス屋を出し物にしていた。正也たちのバンドは学園祭でライブを行う予定だったのだが、ボーカルの女の子が退部してしまい出番は消滅。一時は意気消沈したものの、「せっかくの学園祭なので何かやりたい」との思いで正也の得意料理のオムライスを売り物にすることにしたのだった。
「絶対に美味しい?」
 声をかけられた女性が髪をなびかせ振り返る。と、同時に、正也に衝撃が走った。
 何て素敵な声なんだろう。
 それに、髪の香りが……。
 やばいなあ。
「あ、間違いないよ。オレの自慢の特製ケチャップだし、見た目もオシャレだよ」
 プライドをかけた目と、本物かどうかを見極める目とが交錯する。
「すごい自信。いいわ」
「OK! 驚かせてあげるよ」
 心の中でガッツポーズを作った正也は、全身全霊をひとつのオムライス作りに注いだ。

   ☆

 それが祥子との出会いだった。
「そうだなあ……、うん、決めた」
 メニューを見ながらそう言う正也の言葉に、間髪を入れずに祥子が反応する。
「当ててみようか?」
 正也の目を見つめる祥子。それをじっと見返す正也。まさに12年前と同じ、笑みを浮かべた緊張の瞬間が場を支配する。
「昔ながらのケチャップスタイルでしょ」
「あたり!」
「やっぱりね」
 勝ち誇ったような目が笑う。
「何でわかった?」
「わかるわ。あなたはいつも、オムライスと言ったらケチャップにこだわっていたじゃない。あなたの目は昔とちっとも変っていない。だから今でも結局はケチャップのオムライスを選ぶだろうって」
 美声に加え、類まれなるこの洞察力と観察眼こそが、ラジオパーソナリティ松若祥子がファンを惹きつけてやまない理由であると、正也は思う。
「さすがだね。じゃあ、注文するよ」
 そう言いながら店員に向かって手をあげると、正也はふたり分の注文を済ませた。
「かしこまりました」
 テーブルからメニューが持ち去られる。
 メニューがなくなったテーブルが、なんとなくふたりの距離を縮めてくれるような、そんな気がするのは単なる気のせいなのだろうか。
「しかし、まさか空港で祥子にばったり会うなんて、ホントびっくりだよ」
「私も。すごい偶然。でも、10年ぶりなのによくわかったわね」
「そりゃあわかるよ。透き通った声。風になびくさらさらの髪。ボクは今でも、学園祭の女王、天才歌手松若祥子のファンだからね」
「ありがとう。でも、もう20代とはさよならしちゃったのよ……」
 祥子が、はにかむような笑みを浮かべる。

   ☆

 祥子をボーカルに迎え、正也たちは、リベンジすべく翌年の学園祭に向けて音楽活動を開始した。
 Start each day with a smile!
 毎日を笑顔ではじめよう!
 それが彼らがつけたバンド名だった。
 富士五湖での合宿。知人から知人へと紹介してもらったライブハウス巡り。祥子の詩をのせた正也の曲。ふたりの合作のオリジナル曲の数も次第に増えて行く。
 そして迎えた学園祭でのライブ。伝説は生まれた。
 1曲目のハイテンションになる曲から祥子の声は観客を魅了する。2曲目、3曲目が学園中にこだまする。催眠術にかかったかの如く異次元スポットに人々が吸い寄せられて行く。こうして会場に用意された席はあっという間に埋め尽くされた。
 最後のスローバラードが終わった後、全く無名の彼らに贈られたのは、当然のごとく鳴り止まぬアンコールの拍手だった。アンコールなど全く考えていなかった戸惑いを見せつつも、お礼を言ってレパートリーからノリのいい曲をチョイスする。
 曲に合わせて踊り、絶叫する観客。
 会場が一体化する。
 エンドレス。
 伝説の、トリプルアンコール。

   ☆

「わたし、今でもあなたにすごく感謝してるのよ」
 目の前に運ばれたサラダ仕立てのオムライスに目をやりながら祥子がつぶやく。
「バンド活動が就職に役立ったってこと?」
 ううん。首を横に振る祥子。
「このケチャップのかけかた、思い出すなあ……」
「はじめて会ったときのこと?」
「そう。『オレはギタリストだから結構器用なんだぜ』なんて言って、目の前でシュシュってオムライスにケヂャップかけてくれたでしょ。あれがすごくカッコよかった。手つきもそうだけど、集中した男の目ってカンジで」
「そうなんだ。はじめて聞いたなあ。『すごく美味しかった』とは言ってくれたけどね」
「だって、あのときは、瞬間『あ、この人!』ってピンときちゃったけど、軽い女って思われたくないし、恥ずかしくて言えなかったんだもん」
「だからボーカルの誘いにOKしてくれたんだ」
「そうよ。誘われたときから一緒にやりたいって思った」
「じゃあ、最初はわざと渋ってたってこと?」
 祥子は頭に両手を乗せながら首をすくめ、ペロッと舌を出し上目づかいに正也の目を見やった。
「あの手この手をつくして熱心に誘ってくれるあなたの姿を見ていたかったの。あなたの真剣でうそのない目が好きで。私ね、小さい頃からいろいろあって人を信じることができなかったの。でも、あなたはそんな私を変えてくれたわ。あなたのあのときのオムライス、本当に美味しかった。なんだろう、食べてもらいたいっていう気持ちがこもっているというか、真剣な思いがこもっているというか」

   ☆

 Start each day with a smile! は、祥子が大学に在学している間だけ活動を続けた。プロへの誘いもあったのだが、「私、中学生の頃、行き詰りそうな自分を深夜ラジオに助けてもらったの。だから、今度は私が深夜ラジオに恩返しをしたい」という祥子の意志は固く、結局、彼女のラジオ局への就職とともに結成2年で解散した。
「私ね、3月でラジオ局をやめようと思うの」
 オムライスをひとくち口にすると、祥子が言った。
 え?
 どういうこと?
 オムライスにケチャップをまぜ合わせていた正也の手がとまる。
「なんか、もういいかなって……」
「でも、祥子の声や言葉がどれほどの人に勇気を与え、癒していることか」
「うん……」
 あれほど輝き、自分の生き方を主張する自信に満ちていた祥子の目が、戸惑い、沈んでいる。
「まあ、世の中、いろいろあるからなあ。ラジオだと、聴取率とかスポンサーとのつきあいとかかな。オレも悩み多いよ」
天井の方を見やりながら、独り言のように正也がつぶやく。
「私も癒されたいなあ……。おうちに帰りたい……」
 思い描いていた世界と現実とのギャップ。ピュアな世界を思い描いていればいるほど、決して埋まることのないそのギャップは、永遠に続くボディーブローのようにじわじわとダメージを与えて行く。
「そうだ。ねえ、オムライス、ちょっと交換しない?」
 正也は自分が食べていたケチャップスタイルのオムライスを祥子の方に寄せた。
「あ、そうしよっ」
 祥子は笑顔でサラダ仕立てのオムライスを正也の前に置いた。
「どう?」
 正也が祥子の目を覗きこむ。
「美味しい! なんか懐かしい味。でも、あなたが作ってくれたオムライスの方が美味しい……」

   ☆

 食事を終えたふたりは外に出ると、4階のデッキの手すりに並んで身を寄せた。
 眼下に見える、思い思いに買い物を楽しむ人々の姿。寒空の下、ドーナツ型に真ん中が広場になり周りを店の明りが囲むその空間は、周囲とは遮断され、どことなくそこだけが独立して存在するお伽の国のようにも思える。
 ひと組のカップルが、腕を組みながらふたりの横を通り過ぎる。クリスマスにはどんなプレゼントを交換したのかな。ふと、そんなことを思ってしまう。
「ねえねえ、私プレゼント買ってきたんだよ!」
 祥子が正也の腕をとってゆする。
「おっ、なに?」
「はいこれ!」
 DIESELと書かれた袋をバッグから取り出しながら祥子が言う。
「イタリア好きのあなたにピッタリの腕時計」
「ありがとう! そうそう、DIESELの時計、欲しかったんだあ!」
「よかった!」
「実はさあ、オレも祥子に買ってきた」
「え、何だろう?」
「先ずはこれ」
「サンリオ?」
「そう」
「あ、キティちゃん!」
「気丈だけど少女のこころを決して忘れない松若祥子のお気に入り。ボクの中では10年前も今も、祥子は祥子だからね」
「ブレスレットだあ。うれしい!」
「うん、キティちゃんのパワーストーンブレスレット。それからこれも」
「まだあるの?」
「おまけみたいなものかもしれないけど、これもキティちゃん」
「何だろう?」
 祥子は包みの中にある四角い品を取り出した。
 HELLO KITTY 2015DIARY
「かわいい!まだ2015年のを買ってなかったからちょうどいいわ」
「表紙に書いてある文を読んでごらん」
 え?
 祥子はダイアリーの表紙の下に書いてある文に目をやった。

 Start each day with a smile!

「あっ!」
「びっくりだろ。これも偶然かなあ」
 月明りの中、目を大きく見開き祥子の表情を読み取ろうとする正也。
 祥子の瞳が、かすかに潤んで輝いているように見える。
「ありがとう……」
 そうつぶやくと、祥子は、
「毎日を笑顔ではじめよう!」
 右手を高く突き上げ、空に向かって叫んだ。
「そうだ。毎日を笑顔ではじめよう!」
 正也の声が、祥子の声をバックアップするこだまのように追いかける。
 一陣の風がそんなふたりを急襲する。
「寒い!」
 祥子の身体がかすかに震える。
 正也のぬくもりが、その身体を抱き寄せる。
「さあ、美味しいオムライスはいかがですか。そこのお嬢さん、どう、寄ってかない?」
「食べたい」
 祥子が正也の肩にしなだれかかる。
「もう一度やろうか、バンド」
「うん」
「Start each day with a smile2015だね」
「うん」
「10年前の最後のライブが川崎。で、新たなスタートも」
「うん」
「あれ、いつの間にブレスレットはめてたの」
「……」

 風は意地悪なのかやさしいのか。 
 容赦なく寒風がふたりに襲いかかる。
 そのたびに、ふたりの距離が縮まって行く。
 私は邪魔かな?
 月が雲間に隠れる。

 Start each day with a smile!

 ふたりの笑顔の日々が、今、はじまる。


 おわり
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© 2015 SANRIO CO., LTD


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コメント
あけましておめでとうございます!
いつもたのしいコンテンツをありがとうございます。
今年もどうぞよろしくおつきあいくださいませ。
つかりこdot 2016.01.01 15:25 | 編集
Omunaoさん、あけましておめでとうございます!
もうすっかりオムライスを見ると
まず最初にOmunaoさんを思い出すようになってしまいました。
今年も素晴らしいOmunaoワールドを繰り広げてくださいね。
楽しみにしております。
今年もヨロシク☆
さとちんdot 2016.01.01 18:38 | 編集
こんにちは。
新年からウシジマくんを見てオムライスが食べたくて仕方なくなってしまったタカハシです。
今年もよろしくお願いします。
ケフコタカハシdot 2016.01.01 22:29 | 編集
つかりこさん、こんにちは!

明けましておめでとうございます!
早速のご来訪ありがとうございます。。
こちらこそ、本年もどうぞよろしくお願いいたします。
面白年賀状とか・・・
しつこ~い!!
Omunaodot 2016.01.02 00:27 | 編集
さとちんさん、こんにちは!

明けましておめでとうございます!
早速のご来訪ありがとうございます。。
こちらこそ、本年もどうぞよろしくお願いいたします

いやあ、オムライスを見て思い出してもらえるなんて、ホント嬉しいですよ~
男冥利、ん?、違うなあ、何だろう、オムライス好き冥利??
いやいや、
う~む
ま、いっか。。

>今年もヨロシク☆

さとちんさんにそう言われるとうきうきにがんばっちゃいますね♪

「今年も四六死苦☆」だったらこわそー

Omunaodot 2016.01.02 00:36 | 編集
ケフコタカハシさん、こんにちは!

明けましておめでとうございます!
早速のご来訪ありがとうございます。。
こちらこそ、本年もどうぞよろしくお願いいたします

うおおおおおおお!!!!!!!
正月から早くもウシジマくんモード全開ですね!
がまんは体によくありません。。
はい、オムライスを食べちゃいましょう♪

何ならお餅にたまごを巻いて・・・
オム餅!!
本当にあるんですよ~!
Omunaodot 2016.01.02 00:44 | 編集
明けましておめでとうございます。

昔から文才のある方にあこがれました。
何か書く時少ない語彙を駆使して表現するのが精いっぱい、
若い頃は少しのヨーロッパ文学以外は推理小説ばかり読んでいたし、大学では国文学(古典)を専攻したけれどほとんど忘れたし、今この年になってもまともな文が書けません。
これからもいろいろ学ばせてくださいね。
ReikoJanvierdot 2016.01.02 13:49 | 編集
ReikoJanvierさん、こんにちは!

あけましておめでとうございます!!
専攻は古典だったんですね。。
英語やフランス語の印象が強いもので、それはそれはってカンジです
でも、古典は軸を縦(歴史)にしたものであり、外国語は軸を横(場所)にしたものなので、言葉を学ぶことは共通してますよね!
こちらこそいろいろと学ばせてください
よろしくお願い致します♪
Omunaodot 2016.01.02 15:54 | 編集
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