2016
02.01

冬の夜、バーボンを傾けながら

Category: ストーリー
寒さがつのる冬の夜。
暖を求めたこころの旅がはじまる。
今日は、そんな旅の途中に書いたふたつのストーリーの再掲載。
思い出は、未来へと旅立つこころの滑走路……。


雨待ち風


いやあ、まいったよ。
君とふたりで一本のマイクに笑顔を寄せ合い歌っていた歌。
まさかその世界が現実になるなんて。

何となく嫌な予感はしてたんだ。
君と会っている時間があまりにも楽しすぎて、本当に夢のようだったから。
未来を恐れて、決して止まることのない時間を必死で止めようとする自分がいた。

君がくれた宝物。
それはそよ風の声。
それは夕なぎの瞳。
それはシルクの手。
そしてそれは、決して色あせることのない、キラキラと輝く思い出。

永遠なんてありえない。
そうつぶやく君の笑顔はどことなく儚げだった。
近くて遠い、手に入れてはいけないもの。
そんな簡単なことに今さら気がついた。

ふたりで通ったオムライスの店。
あの席に座るのが、まだちょっとだけつらいから、今日は持ち帰りで買って帰る。

なんだか雲行きが怪しくなってきた。
ほかほかのオムライスがさめないうちに、
雨がほほを濡らさないうちに、
早く帰って食べるよ。

君がため……。
「ありがとう」を乗せた書きかけの夢が、音もなく散って行く。

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● 雨待ち風 スキマスイッチ





真冬の帰り道


漆黒の夜空から舞い降りた風が商店街を吹き抜ける。
所用の帰り道、北風に誘われ足を踏み入れたイセザキモール。昼間の喧騒はどこへやら、人影はまばらだ。

あと数時間で成人の日が終わる。
暗やみに負けじと気丈に煌めくイルミネーション。
" 人通りがなくなると淋しいけど、最後まで頑張るよ "
イルミネーションのそんな声が聞こえてきそうだ。
成人の日かあ……。

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「ねえ、成人式の後、同窓会しない?」
20歳(はたち)の正月の初詣で、ボクは初恋の彼女に偶然会った。
6年振り。
中学2年のときに仲間内で海に行って以来だ。
「平常心を保てない」の意味を理解した瞬間だった。
「いいねえ! やろうやろう」
返事もどこか上の空。大人になった天使の瞳に釘付けの、ボク。
「じゃあさあ、ミクに言っとくから、ショウタに言っといて」
「おう、わかった」

ドキドキが時を支配する。
それからのことは、良く覚えていない。
間違いないのは、同窓会をやろうと約束したこと。彼女は栄養学を学んでいて、栄養士を目指していること。初詣客の人ごみの中、別れ際に笑顔で手を振る彼女の目がキラキラと輝いていたこと。
そして、同窓会は伊勢佐木町でやりたいって言ってたこと。

結局、何の因果か同窓会は開催にいたらなかった。
彼女とは、その日以来、一度も会っていない。

神様は何をしたかったのだろうか。
あのとき同窓会を開いていたら、もしかしたら……。
何でもっと積極的にならなかったんだろう。
あの日は、もう、戻らない。

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ひとり肩をすぼめ、幻の同窓会で彼女とおしゃべりをしながら歩くイセザキモール。
彼女は今ごろどうしてるんだろう。
いいおかあさんになったのかな?
" 私は元気でいるよ。おたがいガンバろ "
ボクの中では永遠の20歳(はたち)の彼女が、やさしく微笑む。


● 真冬の帰り道 ザ・ランチャーズ 




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