2016
04.04

かし和

「カシワ」の名に込められた絶えることなき洋食のこころ 


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4月3日、午後1時10分。
京浜急行追浜駅の改札を抜け駅前に出る。
正面には、いまだ昭和の香り漂う商店街のアーケードが広がっている。

空を見上げる。
グレーがかった厚い雲に覆われているが、幸い雨は降っていない。

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今日の目的地はここから徒歩で7~8分のところにある。
京浜急行と並行して走っている国道16号線を金沢八景駅方面へと進む。
駅前の商店街に限らず、16号線沿いもところどころに昭和の名残が見て取れる。
場末のスナックが軒を連ねる一角を過ぎ、

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やがて、「塩」の看板の向こうに「中華 洋食」の看板がお目見えした。

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その店の名は、かし和


歴史を感じさせるショーケースでオムライスの存在を確認。
暖簾をくぐり、ドアを開け店内へと足を運ぶ。

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「いらっしゃいませ」
腰の曲がった女将のやさしい声が出迎えてくれた。

店内を見回す。
瞬間、こころが店に同化する。
なんだか、懐かしい故郷のようなぬくもりが部屋中を覆っている。
客は誰もいない。
「お好きな席へどうぞ」
しばしきょとんと立ち尽くしていると、水を入れたコップを片手にした笑顔が着席を促してくれた。

カウンター9席。
それと、4人掛けのテーブル席がふたつ。
カウンター席にしようか迷ったが、お言葉に甘えてゆったりと座れるテーブル席に腰を落ち着ける。

「オムライスください」
席に着くなり注文し、
「オムライスの写真を撮ってもいいですか?」
ボクは女将(親しみを込めて「智ちゃん」と呼ぼう)に問いかけた。

「いいですよ」
ボクにそう応えると、智ちゃんは
「写真を撮るから丁寧に作ってね!」
厨房のコックさんに向かってそう叫んだ。

「よかったら新聞がありますから。今日はまだ誰も見てなくてねえ。ハハ」
テーブルの下には、「黒田完封」の文字が躍る真っ新なスポーツ新聞が。
そう言えば、食堂って言えば新聞や週刊誌がおいてあったよなあ。
今でもそういう店は多いのだろうが、その手の店から足が遠のいていたせいか、すっかり忘れていた。
それに、今は、待ってる間はスマホや携帯をいじっているのが主流だし……。

ほどなくして、中華スープとともにオムライスが到着!

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うおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!
美味しそう!
これぞ完璧な定番系オムライス。

お皿に書かれた「RESTAURANT カシワ」の文字とブルドッグのコックさんがレトロでいいカンジ。
それに、このタマゴの焼き具合が……。

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「うちは最初は洋食屋だったんですよ」
美しいオムライスに見入っているボクに向かって智ちゃんが言う。
「そうなんですね! どれくらいやってるんですか?」
「56年。私が23の時に始めて」

開店した時の店名はお皿にある「カシワ」で、その後ファミレスなどの多種多様なレストランができはじめ、それに対抗すべく中華も取り入れて店名も「かし和」に変えたという。
ちなみに、「カシワ」の名は、端午の節句の柏餅のお供えよろしく、縁起をかついでつけたそうだ。
「カシワの葉は新芽が育つまでは古い葉が落ちない」ことから、「カシワ」には「子孫繁栄=家系が途切れない=永く続く」の意が込められている。

さて、オムライスをいただきましょう!!

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うわあ、いいにおい!
スプーンを入れたとたん、ケチャップのいい香りが飛び込んできた。
それに、ハムと玉ねぎのシンプルなケチャップライスだけど、美しいオレンジにそまっている。

ではひとくち。

……。

う、うまいーーーーーーーーーー!!!!!!
な、なんだ、この味は!

酸味の少ないケチャップが、焼かれてやさしく甘く、そしてまろやかな味を演出している。
それに、タマゴにかける量も最適。
いやあ、これは美味しい。
こんなオムライス、今まで食べたことがない。

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「美味しいですねえ。初めて食べる味ですよ。いやあ、おいしい」
智ちゃんとコックさんに向かって、興奮気味のボク。

「ケチャップは愛知県から取り寄せてるんですよ。この辺で使ってるところはあまりないです」と笑顔の智ちゃん。
「ハムと玉ねぎってのもいいですね」
「うちはナポリタンもおすすめですよ。横浜のグランドホテルでナポリタンが生まれたときの流れを汲んでるんです」
「あ、わかりますわかります。オムライスとナポリタンはつながってますもんね!」

オムライスとナポリタンはつながっている。

このとき、自分で言っててはたと気がついた。
あ!ナポリタンもオムライスも原点は同じ「ハム」なんだと……。
「鶏肉はチキンライスで、オムライスはハム」
そうかあ、そういうことかあ!

「かし和」のオムライスは今まで食べた定番系の中では最高においしい。
そこには、高度経済成長時代から今に続く日本を支えて来た確かな歴史が刻まれている。

食べ終わり、最高のオムライスの余韻にひたる。
壁には内海桂子師匠のサインが……。

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「直筆なんですよ」
嬉しそうに話す智ちゃん。

つながり
ぬくもり
まごころ

そのすべてがこの店に、そしてこの店のオムライスに宿っている。

「こんな美味しいオムライスに巡り合えて幸せです。今度はナポリタンを食べに来ますね!」
智ちゃんとコックさんにそう言って、ボクは店を出た。


「昭和39年の東京オリンピックのときは、店の前を聖火ランナーが走ったんですよ。今度の東京オリンピックまであと4年。ちゃんと見られるようにガンバらないと」

智ちゃんの言葉がこころの深いところでこだまする。

ナポリタン発祥の地である横浜。その流れを汲む「かし和」。
つかりこさんに頂いたコメントにもあるように、今やこういった老舗は絶滅危惧種になっている。
店主や料理人の思いが詰まったこの素晴らしい味を、ひとくちひとくち、しっかりとかみしめたい。

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かし和

電話 : 045-701-9851
住所 : 神奈川県横浜市金沢区六浦東3-1-15
営業時間 : 11:00~19:00 ※ランチ営業、日曜営業
定休日 : 月曜日

京浜急行金沢八景駅下車 徒歩15分
京浜急行六浦駅下車 徒歩12分
京浜急行バス 瀬ヶ崎バス停(横浜南共済病院前)下車 徒歩1分
追浜駅から508m

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コメント
おはようございます
かし和のオムライス食べたくなりました
ネリムdot 2016.04.04 08:32 | 編集

ネリムさん、こんにちは!

オムライスは最高に美味しいですし、人情味あふれる素敵なお店です。。
ホント、おすすめです
ぜひ、食べてみてください!!

Omunaodot 2016.04.05 06:07 | 編集
いつものファンタジーなオムナオワールドじゃないですが、
なんだか涙が出てきました。
とてもいいハナシですねー!
今度の東京五輪といわずに、
いつまでも長生きしてほしいものですよね。

そうそう、この手のお店のオムライスって、
中身の味に、大きな個性の差があって楽しいんですよね。
ケチャップの味が違ったり、ウスターソースがきいていたり、
バターの風味が強かったり、ラードが使われていたり・・・
飯能の「好美」もケチャップライスの味が妙に旨かったです。

当シリーズ、楽しみです!
つかりこdot 2016.04.05 08:23 | 編集
つかりこさん、こんにちは!

ありがとうございます!!
原点に帰り、気持ちも新たにいろいろなお店の紹介をしたいと思います。
時間の積み重ねの中に刻まれた確かな命。
この大切さとあたたかさをしみじみと感じます。
これからも、すてきな出会いを求めてオムライスの旅を続けます。

それと、時間ができましたら、ぜひ「かし和」を訪問してください。
ボクも何れ好美に行ってみたいと思います♪
Omunaodot 2016.04.06 05:24 | 編集
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