2016
07.02

ミカサ、再訪 (リニューアル再掲載)

数々の物語を見届けてきた洋食屋劇場

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横浜のセンターグリルとともに思い入れの深い店。
それは、ボクが生まれ育った街である大船の老舗、ミカサ

ミカサは数年前、建物が老朽化したため、かつてあった場所の向かいに新装オープンした。
先日訪問したので、今日は以前の記事を交えてミカサの記事の再掲載!

場所は大船駅から徒歩5分くらい。北側の改札を大船観音の反対側に出て、西友の横を通る道を真直ぐイトーヨーカドー方面に向かえばよい。

しばらく歩き、ミカサに到着。

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以前の老舗の風格に満ちた建物とは打って変わり、ネオクラシックのオシャレな洋食屋の雰囲気が漂っている。
江ノ電が昔の車両のイメージを残しつつ新型車両に切り替わるようなイメージかな。

こちらが旧店舗。
王道というか、映画の舞台になりそうというか、存在が「これぞ洋食屋」を思い切り主張している。

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外観を写真に収め、店内に。

うん!
静かで、落ち着いた雰囲気は以前と変わっていない。
ミカサのドアをたたいてみれば文明開化の音がする。

テーブル席に通され、さっそくオムライスと、せっかくなのでここは贅沢をして他の2品を併せて注文。

しばらくして、先ずは前菜とオードブルが到着!!

こちらはオードブル取り合わせミカサ風。

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そしてこちらはノルウェイサーモンマリネスモークタルタル。

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どちらも絶品!
めっちゃ美味しい!!

そうこうしているうちに、オムライスが登場した。
相変わらず「ポワン」とした玉子のオムライスが、ドンと目の前に置かれる。

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ソースは2種類。ブラウンソースとケチャップ。これを好みで自分でかけるスタイル。
チキンライスの具材は、鶏肉、玉ねぎ、マッシュルーム、グリーンピース。

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味つけはあっさり目で、ソースをかけてちょうどいい作り。
ソースがチキンライスとタマゴをまとめてくれる。
とてもバランスがよく、まさに三位一体。1+1+1=3ではなく、1+1+1=∞。
当然、2種類のソースをたっぷりと堪能♪
いやあ、何という素敵な時間なんだろう。。


ミカサの創業は1936年。てことは、今年で77年、喜寿か???

とにかく居るだけでも歴史を感じる。
名物はオリジナルメニューのカツメシらしい。
かつてすぐ近くに松竹撮影所があり、多くの映画人に愛された料理。
きっと、忙しい撮影の合間に、短時間でバーッて食べてたんだろうね。
実は自分もちょっと大船撮影所で仕事をしていたことがある。
映画の表舞台は華やかだけど、裏は大変。映画は撮影期間が長いのでまだいいのだけど、ドラマは特に(今は知らないけど)。
限られた予算、限られた期間で製作する。
寝る時間もないし、道具も少ない。

一度は、「明日の撮影で女の子の部屋を作る必要がある。お前、今から知り合いの女の子から部屋を飾るもの借りてこい!」って……。
えー!それはムリでしょ。
そんな、知り合いいないし、お願いしても「変態!」って断られそうだし……。
でも、そんなので驚いていてはダメ。これが当たり前の世界。そういうのを乗り越えて、いっぱしの映画屋になっていく……。

安い給料で、将来を夢見る世界。
ミカサは、そんな楽しくも厳しい映画の世界を見守ってきたんですねえ……。

ごちそうさまでした!


■ 店舗情報 ■
・住所:神奈川県鎌倉市大船2-21-11
・電話:0467-46-2737
・営業時間:[月~土] 11:30~14:30 17:00~21:00LO
        [日・祝] 11:30~15:00 16:30~21:00LO
・定休日:無休

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真白き紅(くれない)


 この冬一番の寒気団が、関東地方を冷蔵庫に押し込んだ。
 一通の手紙を読み終えた晃は、ガタガタと震えるサッシの窓からぼんやりと外に目をやった。灰色の空からヒューと唸りをあげて襲いかかる突風に、木々が必死の形相で踏ん張っている。

 もう、20年か……。
 あの日も、今日と同じような真冬の風が強い日だったっけ。

 20年前の、あの日。

「じゃあ、10:00に大船駅の改札ね!」
 電話だとより一層強調される鼻にかかった美紅の声が、受話器の向こうで弾んでいる。
「あ、うん、よろしく!あ、それと明日はめちゃめちゃ寒そうだから、暖かい服でね!」
 浮ついた声を抑えきれない晃が、どぎまぎした声で呼応する。

 都内の大学を卒業し地元に帰った、同級生の美紅からの突然の電話だった。

 大学時代、心惹かれていた美紅からの……。

 好きだ――簡単なひと言が言えないまま、散りゆく桜をまとった卒業式が、特急電車に乗って目の前を過ぎ去って行った。

 明日、空いてる?夕方新宿に行く用事があるから。
 そんな理由で天から舞い降りた電話。
 一方的に想いを寄せていたと思っていただけに、美紅からの誘いの電話に諦めていた炎が再燃する。

 そうだよ。何勝手に諦めてるんだよ。断られるのが恐いだけで、告白も何もしていないじゃないか。彼女から電話がかかって来るなんて、これはもしかして……。
 卒業以来、9か月ぶりに会えると思うと、色に出るほどにあふれる想いはおさえきれない。
 それから晃は、食事もそこそこに、服とデートコース選びの試行錯誤に身を投じた。

 9:54。
 大船駅の東海道線ホームから階段をあがる足音の響きが、色とりどりの人影へと変わり、改札に向かってくる。
 きっとこの電車だ。もうすぐ。もうすぐ会える……。
 高鳴る胸の横を、足早に人々が通り過ぎて行く。

 それからしばらくして、人影はまばらになり、改札は9:54分以前の閑散に逆戻りした。

 結局、美紅はその電車には乗っていなかった。
 いや、次の電車にも、その次の電車にも、美紅は乗っていなかった。

 なぜ?

 真っ白な頭に、機械的に過ぎて行く氷点下の時間が追い打ちをかける。

「どこで待ち合わせする?」
「そうねえ……、あ、大船がいいな。お昼はミカサで食べたい!」
「おっ、カツメシだね!」
「ブー、はずれー。今はねえ、オムライスが食べたい気分かな」
「オムライスかあ!そう言えば、みんなでよく食べたよね!」
「うん、すごく懐かしいし、食べていてほっとする。なんか、すごく楽しみ。早く明日にならないかなあ」

 時間の経過と正比例して荒くなる呼吸。それを落ち着かせようと、自然と昨日の電話での会話がリフレインする。

 一体、どれだけの影が横を通り過ぎていったのだろう。
 やがて時計の針が12:00を告げた。

 あの日。

 晃は手紙を枕元置き、ベッドに横たわった。

 もし時計の針を戻すことができるのなら……。

 記憶を白く塗ろうとしても、散った花びらを元に戻すことはできない。

 化粧っ気のない素顔と、オフホワイトのダッフルコートにブルージーンズ。
 決してオシャレとは言えないかもしれない。
 素朴で、純真な、そばかすと鼻にかかった声。

 そして、笑みを絶やさない、誰よりもきれいな瞳。

 目を閉じた晃の中で、鮮明に、自分を目がけて駆けてくる美紅の姿が見える。

「ミカサのオムライスって、タマゴがふわふわしてて、割ったときの香りがたまらないの。なんだかわからないけど、すごく幸せな気持ちになれるわ」

 あの日美紅は、何を話したかったのだろう。

 行き場のなくなった「好きだ」の言葉。108回の練習は、スピーチバルーンに乗って、もう決して手が届くことのないはるか遠い世界に飛び去った。

「パパ!片づけ終わった?おばあちゃんが、お茶が入ったってさ!」
 階下から叫ぶ、娘の声が響く。

「おー、今行く」

 実家の母に頼まれた大掃除。かつて自分のものであった部屋の片隅に佇んでいた、20年前の手紙。会う約束の6か月ほど前に届いた、美紅からの手紙。

 アッ君 こんばんは!

 返事が遅くなってごめんなさい。
 昔から、本当に筆不精で、書かなくてはまずいと思うと余計に遅くなってしまうという悪いくせです。

 ひとまず最初のあいさつは終わりにして。

 へー、コバルトに出すんだ。
 私、小学校の時から読んでたよ(ませガキです)。
 今は気が向いたら例のハーレクインロマンスなるものを読んだりします。
 なんとなく、コバルト→ハーレクインというパターンわかるでしょ!

 で、本題。

 私、アッ君の作風って、コメディはコメディで面白いけど、ロマンチックなの好きです。

「純愛物語’92」かなり良かった。
 かなりというのは、私、シナリオは読まない。だからよくわからなくって。
 発想としてはSFチックでおもしろいよ。
 次はもう書けたのかな?
 私は打てば響くように感想を言わないのろまだけど、読むのは楽しみにしています。

 今って、アッ君が書いていたように、割とみんな冷めているでしょ。何かにつけて。
 だから、「ある愛の詩」みたいなのってうけるんじゃないかなあ。

 とりあえず、7月頑張って素晴らしい作品書きあげてね。

 さてさて、OL生活も3か月が経過。
「何かいいことないかなあー」なんて毎日思う今日この頃です。
 現実は仕事が忙しくて、同僚との人間関係に心を痛めたり、自分の能力の限界に行き詰ったりで、心はいつもここにあらず。ムダなことだと知りつつ現実逃避を求めてワープしてます。
 こんなOL症候群の女の子って多いと思うよ。
 で、ハーレクイーンロマンスなんか読んじゃう訳。ちょっと淋しいけど。

 愚痴っぽくなっちゃってごめんね。

 また書いたら見せてね!

 とても嬉しいから。

 じゃあ、またね。

 未来の文豪殿
                        夢見る夢子より


 返事は次回作と共に送ろう。そう決めてから、早く送りたいという気持ちの高ぶりが空回りするだけで、一作も書けなかった。

 もし、どんなものでも、一作でも書いて美紅に送っていたならば。

 もし。

 もし……。

 今日は家族を連れてミカサに行こうかな。

 晃は、美紅からの手紙を、ゆっくりと、丁寧に、もとあった場所へとしまった。

 突風にあおられたバケツがアスファルトを転がる音がサッシを突き抜ける。

 美紅……。

 紅(くれない)に染まった美しき思い出は、永遠(とわ)の海原へと溶け込んでゆく。


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